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公爵家の養女  作者: 透明
第三章 おとぎ話のような
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午前0時



 自分の部屋で本を読んでいたリーナ。だが、さっきから考え事をしているのか、集中できていない様子。




 エミリアはいつも私の前で明るく笑っていたけど、まさかあんな事があったなんて……。



 先日のパーティーで、エミリアから聞いた話を思い出すリーナ。


 エミリアはいつも明るく笑顔で、友人も多い。


 そんなエミリアが心の中で孤独を感じていた事を知り、何か力になってあげられる事はないかと悩む。




 名家の出身となれば、それだけで皆の注目の的となり、その莫大な力を目的に近づいてくる人もいれば、有る事無い事を得意げに話す人もいる。


 リーナも何度もそういった人たちに傷つけられ、頭を悩まされてきたことか。



 リーナは一つため息をつくと、今度、エミリアを買い物に誘おうと思う。


 その時、扉をノックする音がし、扉の向こうから「お嬢様、夕食のご用意ができました」と声がする。




 「――あれ? シュタインは?」




 ダイニングルームに行くと、食事の時間になればいつも一番に席についているシュタインの姿がなく、エーデルが席についていた。


 リーナはエーデルにシュタインのことを聞きながら席に着くと、エーデルが「今日は友人の屋敷に泊まるって」と教えてくれる。



 シュタインは友人が多く、友人の屋敷へと遊びに行っては、数日泊まるということはよくあった。


 最近は比較的少なくなっていたが、いつもの事なのでリーナもエーデルもあまり気にしていないようだ。




 「今回は何日泊まる気だろうな」


 「一月も泊まっていたことあったよね」




 そうシュタインの話をしながら、リーナとエーデルは食事を摂り始める。


 そんな事も知らず、先ほどから眉を下げどこか不安げな表情を浮かべては、隣に自分と同じようにしゃがみ込むエミリアを見るシュタイン。


 


 「ねぇ、本当に行くの?」




 もう、何度目かわからないその言葉をエミリアに言っては、エミリアも何度目か分からない「当たり前でしょ!」という言葉をシュタインに返す。


 妙に気合いが入っているエミリアに「えぇ……」と更に眉を下げるシュタイン。




 「兄貴たちにバレない?」


 「エーデル兄様になんて言って家を出て来たの?」




 エミリアの問いに数秒間を空け「……友人の家に泊まりに行くって」と答えるシュタイン。


 エミリアは「なら大丈夫ね。今頃エーデル兄様はリーナと楽しく食事しているわ」と笑みを浮かべる。



 だがシュタインはまだ不安が拭えない様子で「もし、パーティーに知り合いがいたらどうする?」と更に問う。


 そんなシュタインにエミリアは呆れたようにため息をつくと「あんたはいつも、人前に出る時仮面をつけてるの?」と問う。




 「そんなわけないだろ」


 「だったら大丈夫よ。いつまでもウジウジしていないで、さっさと行くわよ」




 そう言って立ち上がるエミリア。


 そんなエミリアにシュタインは「あーもう!」とやけくそに立ち上がると「いい? 今日だけだからね! 今日パーティーに参加したらもう俺は付き合わないし、エミリアも行くなよ?」と強く言う。



 エミリアは数秒間を空け「……もちろんよ」と頷く。




 「なんで今間があったんだよ? 約束だぞ!」


 「分かってるわよ! ほら、早く行くわよ!」




 そう歩き出すエミリアの後を「待ってよ!」と慌ててついて行くシュタイン。


 時刻はもうすぐ十二時を回ろうとしていた。




 「――エミリアは?」




 グランベセル公爵邸にて、久しぶりに家に帰って来たリヒトは、姿が見えないエミリアの事を執事長に尋ねる。


 執事長は「お嬢様でしたら、ご友人のお屋敷にお泊まりに行かれました」と説明する。


 リヒトは「そう、なんだ」と頷くと「珍しいね」と言う。




 エミリアは友人は多いほうだが、誰かの家に泊まりに行くということはなかった。


 リヒトは「友人ってリーナ?」と問うと、執事長は「いえ……どなたかは私は伺っておりません」と首を横に振る。




 リーナ以外の友人? と不思議に思うリヒト。


 エミリアは友人が多いほうだが、リーナと親しくなってからは、リーナとよく遊ぶようになり、他の友人たちとはあまり遊ばなくなった。



 その理由は何となくリヒトには分かっている。




 「父上と母上は知っているのか?」


 「はい。ご存知でいらっしゃいます」




 なら問題ないかとそれ以上は何も聞かないリヒト。


 そんなリヒトに執事長は「ですが、残念ですね。せっかく坊ちゃまが帰ってこられたのに……お嬢様はいつも坊ちゃまの話をされていたので」と話す。




 「お忙しいとは思いますが、また時間がある時、お嬢様とお話ししてあげてください」


 「そうだね。最近あまり帰ってこられなかったからね」




 そう頷くリヒトに、執事長は笑みを浮かべると「お夜食をご用意しておりますがいかがですか?」と問う。







 「こ、ここで合ってんだよな?」




 厳重な扉がついた少し寂れた建物の前、シュタインとエミリアは隣に並んで扉を見上げる。


 とてもじゃないが、パーティーが行われているような見た目をしていないため、シュタインは本当にこんな所でパーティーが行われているのかと不安になる。




 「見張りもいないし、どうやって中に入るんだ?」




 そう辺りを見渡すシュタイン。隣でエミリアが「この扉を開ければいいのかしら?」と扉に手をかけようとする。


 だがそれをすかさずシュタインが「そんな勝手に開けちゃだめだろ!」と慌てて阻止する。



 そんなシュタインにエミリアは呆れた表情を向けると「あんた、さっきからビビりすぎ」と言う。




 「なっ……! しょうがないじゃん! 兄貴が行くなって言ってた場所だし、仮面つけて身分を隠したパーティーなんて見るからに怪しいしさ!」


 「仮面つけてなくても怪しいパーティーはいくらでもあるでしょ!」


 「ねぇよ!!」




 そう二人が建物の前で言い合いをしていた時だった。


 「こんばんは~」と低い声が背後からしたかと思えば、シュタインとエミリアの肩に手が置かれ、二人は「きゃー!!」「でたぁー!!」と叫び声を上げ、二、三歩歩いた先で振り返る。



 振り返った先には、ウサギの仮面を被った長身の男がおり、シュタインとエミリアは「誰!?」「ウサギ!?」と驚いている。


 そんな二人を見て、口元に笑みを浮かべ「これはこれは、随分と元気なお客様だね」とウサギの面の男は言う。



 「お客様? あなたは誰なの?」エミリアの問いに、ウサギの面の男は「これはこれは、私としたことが。申し遅れました、私は迷えるお客様の案内人ウサギと申します」と名乗ると、胸に手を当てお辞儀をする。



 そんな彼に「案内人?」と口を揃えるシュタインとエミリア。




 「えぇ。仮面パーティーに初めてやって来たお客様……そう君たちみたいな子を、楽しくパーティーに参加できるようにするのが僕の役目さ」




 そう弾むような声で話す男に、シュタインが「えぇ……! 何で俺たちが初めて来たって分かったの!?」と驚く。


 そんなシュタインにため息をつくと「会場の前で挙動不審になってる人を見たら、誰だって初めてだってわかるわよ」と睨むエミリア。




 「あぁ……そっか」


 「お嬢さんの言うとおり、君たちを見て案内をしてあげなければとやって来たのさ!」




 そう腕を広げ得意げに話す男に「へぇ……」と頷くシュタイン。


 男は「それじゃあここでのルールを説明するよ! ルール一つ目!」と声高らかにルールを説明しようとするも、それをエミリアに止められてしまう。




 「ルールならわかっているから説明しなくていいわ。早く会場内に案内して」


 「……あぁ、そう? なら、仮面をつけてくれるかい? 仮面をつけるのがルールだからね」




 そう話す男にエミリアが「仮面は会場で貰えるって聞いたけど?」と返す。


 男は「……これはこれは、仮面を要求してくるお客様は初めてだ」と可笑しそうに口元に笑みを浮かべると、胸ポケットから仮面を取り出しては、シュタインとエミリアに渡す。




 「仮面をつけ終えたら、扉の中へとどうぞ。もう、パーティーは始まっているからね。」




 男がそう言うと、扉がゆっくりと開く。


 シュタインとエミリアは顔を見合わせると、ゆっくりと中へ入って行く。



 そんな二人の後ろ姿を「どうぞごゆっくり」と男は胸に手を当て、お辞儀をし見送る。




 「……わぁ。本当に仮面をつけた人たちばかりだ」




 会場内はどこか薄暗く、パーティーの名前とだけあり、見渡す限り仮面をつけた人たちで溢れかえっている。


 会場内にいる人たちは、話をしたり、食事を楽しんだりと、思い思いに過ごしている。




 「仮面をつけているから、皆んなどんな人なのかわからないね」




 そう話すシュタインの隣で、エミリアは目を輝かせながら会場内を見渡しては「シュタイン、行こう!」とシュタインの手を引っ張る。


 シュタインは「きゅ、急に引っ張らないでよ!」と転びそうになりながら後に続く。




 「見て、シュタイン! 料理がどれも美味しそうよ!」




 会場内の奥にあるテーブルに置かれるのは、豪華絢爛な食事たち。


 エミリアが「美味しそう~」と食事を見る隣で、シュタインはソワソワと落ち着かない様子。




 「どうしたの? シュタイン。あんたが好きな食べ物よ? 食いつきが悪いわね」




 そう言うエミリアに、シュタインは「当たり前でしょ!」と小声で怒る。




 「こんな得体の知れないパーティーで呑気に食事なんか摂れるわけないじゃん!」


 「まだそんなこと言ってるの? もう会場の中に入ったんだから、諦めなさいよ!」




 そう二人で小声で言い合っていた時。

 「こんばんは」という声が二人の背後からする。



 突然の声にシュタインとエミリアは肩を震わせ、同時に振り返る。


 そこには同じく仮面をつけた、恐らく若い男性が飲み物片手に立っていた。




 驚く二人にその男性は「お二人も向こうで一ゲームどうです?」と顔を向ける。


 そこにはビリヤード台が置かれており、人が何人か集まっていた。



 「楽しいですよ」そう笑う男性。


 シュタインとエミリアは顔を見合わせると「俺は……いいかなぁ……やったことないし」とシュタインは言う。


 だが男は「初めての人も何人もいるから問題ないよ」と言う。



 「えぇ……」と口元を歪ませるシュタイン。


 そんなシュタインとは違い、エミリアは「私はやるわ!」と乗り気のよう。




 男性とエミリアがビリヤード台へと向かう後ろ姿に、シュタインは「待ってよ! 俺もやるよ!」と言うと慌てて後を追う。

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