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公爵家の養女  作者: 透明
第三章 おとぎ話のような
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想い



 「リヒトくん。ここに居たのですか」




 皇宮の図書室で調べ物をしていたリヒトの元に、手に資料のような物を持ちやって来たのは、シャッテンヴェヒター副団長のマティアス。


 手元の本からマティアスに視線を向けては「マティアス副団長、お疲れ様です」とリヒトは挨拶する。




 「最近、よくここにいますね。例の件を調べるためですか?」




 リヒトはここ最近、暇を見つけては皇宮内にある今は出入りする者が少なくなった旧図書室へとやって来ては、フォルトモントについて調べていたのだ。


 マティアスは机に手をついては、リヒトが読んでいる本を覗く。




 「ここの図書室は、帝国で二番目に古い場所ですので、手がかりがあるかと通っているんですけど……今のところ知っている内容ばかりで」




 どうやら、これと言った手がかりは見つからないようで、眉を下げ参ったと言わんばかりの表情を浮かべるリヒト。


 そんな彼にマティアスは「……ありがとうございます。シャッテンヴェヒターに入ったのも、リーナのためですよね」と言う。



 「まぁ……」と曖昧に返すリヒトに、マティアスは「騎士団なんてあなたの柄じゃないでしょう。そこまでしてリーナのために探す理由は?」と問う。


 

 マティアスは問いかけているが、きっと、リヒトがここまでしてフォルトモントのことを調べる理由について気づいているはず。


 今、リヒトに問いかけたのも、マティアスの考えとリヒトの思いが合っているかどうか、答え合わせをするためだろう。



 そのことに、リヒトも気づいている。




 「……副団長の考えている通りです。例え柄じゃなくても、リーナのためなら俺は何だってやりますよ」


 「俺にとってリーナはそう言った存在です」




 そうはっきりと言うリヒトに、マティアスは少し驚きながら「……その想いが届かなかったとしても?」と更に問う。


 だがリヒトは躊躇う事なく、真っ直ぐはっきりと答える。




 「もちろんです。例え、リーナの未来に俺がいなくても、リーナが笑って暮らせるなら俺はその未来を守るだけです」




 リヒトの姿に、エーデルの姿が被るマティアス。

 

 一瞬、驚いた表情を浮かべるも、すぐに眉を下げては「……野暮な質問でしたね。」と笑みを浮かべる。




 マティアスと別れ、練武場へと向かうリヒトの元に、声が聞こえて来たかと思えば、何やら話をするエーヴィッヒと、そんなエーヴィッヒに話しかけられ困った様子のリーナがいた。


 

 リヒトは「リーナ」と近づき声をかけると、リーナは「リヒト……!」と笑みを浮かべ、リヒトに駆け寄って来る。




 「久しぶりね、リヒト! 今から稽古?」




 そう嬉しそうに自分のことを見上げ話すリーナに、リヒトは「久しぶりだね」と柔らかく笑う。




 「今から稽古だよ。リーナはどうして皇宮に?」


 「フレイヤ様に誘われて遊びに来ていたの」




 そう話すリーナの後ろからやって来たエーヴィッヒが「やぁ、リヒト」とリヒトに声をかける。


 リヒトは視線をエーヴィッヒに移し「殿下も。外出されたと聞いていましたが、戻っておられたのですね」と声をかける。




 「つい今しがたね。宮内に戻る途中でリーナに会ったから声をかけたんだ」




 そう話すエーヴィッヒに「そうだったんですね」と頷くと、リーナの事を見て「呼び止めてごめんね。帰る途中だったんだよね」と言う。


 リーナは「あ……」と呟くと「うん。またね、リヒト。エーヴィッヒ殿下もまた」と歩いて行く。



 そんなリーナの後ろ姿を見送るリヒトに、エーヴィッヒが「……わざと僕からリーナを離したでしょ?」と言う。


 リヒトは視線をエーヴィッヒに向けると「えぇ。」と頷く。




 「皇宮では誰が見ているかわかりませんから。婚約者がおられるのに、他の女性と二人きりで話しているところを見られてはまずいでしょう?」




 そう笑みを浮かべるリヒトに、エーヴィッヒは「……僕のことを思っている風な口ぶりだね」と眉をひそめる。


 そんなエーヴィッヒに「もちろん」と更に笑みを浮かべるリヒト。


 


 「君に、皇族(僕たち)に対して忠誠があるとは思わなかったよ」


 「僕はてっきり、リーナに僕が近づいてほしくないからだと」




 そう、リヒトの心の中を見透かしたような笑みを浮かべ話すエーヴィッヒ。


 リヒトは「流石ですね。何でもお見通しだ」と返す。




 「何年の付き合いだと思っているんだい? 君に、皇宮(僕たち)に忠誠がないことくらい分かっているよ。まぁ、シャッテンヴェヒターに入団したのを見ると、忠誠がないのは僕だけにみたいだけど」




 リヒト、エーデル、エーヴィッヒの三人は幼い頃からよく一緒にいたいわゆる幼馴染。


 だが昔から、エーデルとリヒトは気が合ったのだが、エーヴィッヒだけはどこか合わなかった。


 彼が皇族だからだからか、他に理由があるのか分からない。


 

 別に嫌っていたわけでもない。ただ、特別好いていたわけでもない。


 エーデル、リヒトとエーヴィッヒの関係はそんな感じだった。



 リヒトは「そんなことはどうだっていい」と言うと「もう少し、自分の立場を理解したらどうだ?」とエーヴィッヒを睨みつける。




 「立場?」


 「ただでさえお前は第一皇子殿下という立場で、注目が集まりやすい。その上、お前の婚約者は何かとリーナの事を目の敵にしているエズワルド嬢ということで、さらに注目が集まりやすくなっている。」


 「そんな中で、お前がリーナと二人皇宮で話をしているところを誰かに見られれば、瞬く間にありもしない噂を広められる」




 「そうなった時、真っ先に非難されるのはリーナだ。それでリーナが傷つくことになれば、俺はお前を許さない」そう更に眉をひそめ、低い声で話すリヒト。


 エーヴィッヒは「……何を勘違いしているか知らないけど、リーナは僕の友人だ。友人と話して何が悪い?」と眉をひそめる。




 「それに、僕がリーナに話しかけようが君には関係ないよね? 君はリーナの婚約者でも何でもない、ただの友人にすぎないんだもの」


 「それとも、自分は彼女にとって特別だとでも思っているのかい?」




 そうリヒトに近づき、自分より少し背の高いリヒトを見上げるように話すエーヴィッヒ。


 数秒、視線を交わした後、リヒトは視線を逸らす。




 「……俺がリーナの特別だと微塵も思っていない。ただ、相手が誰であれ、リーナの平穏を脅かすような奴は許さないと言っているんだ」




 そう話すリヒトに、エーヴィッヒは眉を下げると「……まるでリーナの騎士だね。その程度で満足しているの?」と問う。




 「リーナが幸せなら俺はどうでもいい」


 「あっそう。父上に忠誠を誓った事は間違いだったんじゃない?」




 エーヴィッヒはそう言うと、リヒトの肩に手を置き「騎士のままでいるつもりなら、僕がリーナとどういようが黙っててくれる?」と言うと歩いて行く。


 そんなエーヴィッヒの後ろ姿を黙って見送るリヒト。



 シャッテンヴェヒターに入団したからには、皇帝に忠誠は絶対。


 それでも、リヒトが命をかけて守りたいのは、この世でただ一人。



 彼女の幸せを守るために、リヒトは皇帝に忠誠を誓ったのだ。







 「……どうした? 何か用か?」




 朝食の時間、向かい側の席に座るエーデルにそう問われ、リーナは「う、ううん……!」と眉を下げ笑みを浮かべる。


 その様子はどこか慌てているようで、エーデルは不思議に思うも「ちゃんと食べろよ」と気にせず食事を続ける。



 「う、うん……」とリーナは頷くとスプーンでスープをすくい、口に持っていく。




 自分がフォルトモントと言う血を継いでいると言う事を知った日から数日、リーナはエーデルにフォルトモントについて色々と聞きたいことがあった。


 のだが、今までリーナがフォルトモントの血を引く事をリーナに黙っていたところを見ると、その事を聞かない方がいいのか? とか、そもそもリーナがフォルトモントの血を引く事を知らないんじゃ……? などと色々と考えてしまい、聞けないでいた。



 前に叔父様たちと話していたのを聞いた時は、フォルトモントと言う言葉が聞こえただけで、内容までは分からなかった。


 ……でも、どちらにせよエーデルとは一度、話をしとくべきよね?



 そう思いながら、食事をとるエーデルに視線を向ける。


 するとまたエーデルと視線が合い、エーデルは首を傾げるので、リーナは慌てて「お、美味しね、このスープ。なんて言うスープかな……」と笑みを浮かべる。



 そんなリーナの隣で食事をとっているシュタインが「いつも出てるスープだけど?」眉をひそめる。




 「あ……そう、だったっけ?」




 そう笑うリーナをシュタインは不思議そうに、エーデルは何か思う事があるように見る。

 



 朝食を終え、しばらく執務室でエーデルが作業を行っていた時、コンコンッと扉を叩く音がする。


 「はい」と返事をすると、扉の向こうから「エーデル、私。リーナなんだけど……」と声がする。



 エーデルは「リーナ?」と呟くと、すぐに「入って」と返す。


 扉が開き、リーナがゆっくりと部屋に入って来る。

 その表情はどこか気まずそうで。



 エーデルは「どうした? ここに来るなんて珍しいね」と声をかけると「そこに座りな。すぐにお茶を用意させるよ」と椅子から立ち上がる。


 だがリーナは「だ、大丈夫……! それより……話があるんだけど……」と言う。



 いつもと様子が違うリーナに、エーデルは「とりあえず座って」とソファーに座るよう言う。


 リーナが座ったソファーの向かい側に腰を下ろすと、エーデルは「話って?」と問いかけて来る。



 エーデルは至って普通に、というか優しく問いかけてくれているのだが、リーナは妙に緊張してしまう。


 スカートをギュッと掴むと「……フォルトモント」とリーナは言う。



 その言葉を聞いた瞬間、エーデルは「え……」と呟く。




 「フォルトモントについて、教えてほしいの……」




 そう真っ直ぐエーデルを見て言うリーナ。

 エーデルの瞳に一瞬、動揺が伺える。


 だがすぐに、エーデルは「いつ、知ったの?」と問う。




 「……この前、エーデルと叔父様たちが話していたのを聞いて、それと、狩猟祭の時、ナハト司祭が私の目を見てフォルトモントって呟いたの」




 流石に、夢で見たとは言えない。と考えるリーナに、エーデルは「ナハト司祭が……? 他に何か言われなかったか?」と眉を顰める。


 そんなエーデルに「ううん……何も」と不思議そうにするリーナ。



 エーデルは「そう、か……」と頷く。


 その様子に違和感を覚えたリーナは「……何かあるの?」と問う。



 エーデルは数秒、黙ると「フォルトモントについてそろそろリーナには話をしようと思っていたんだ」と言う。




 「その話をするのに、俺からだけじゃなくヴィルスキン辺境伯や叔父上からも話してもらったほうがいい。だから少し待ってくれ」




 そう話すエーデルに、リーナは「わかった」と頷く。


 はぐらかされると思っていたので、エーデルの返答は予想外だったのだ。




 「ちゃんと話すから。心配しないで」


 「うん」




 それから数日後、エーデルは約束通りフォルトモントについて話をしてくれると、屋敷にはマティアス、ヴィルスキン辺境伯がやってき、リーナだけではなく、シュタインも集められた。

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