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公爵家の養女  作者: 透明
第二章 新たな始まり
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お茶会



 「そう言えば、アンデルの両陛下、特に皇后陛下が随分とカレンと言うお店を気に入られたみたいだそうで、食事会がうまくいったと陛下が喜ばれていたよ」




 貴族院会議の最中、思い出したかのようにエーデルにそう話すグランベセル公爵は「カレンと言う店は君の提案だったんだろ? 流石、ヴァンディリア当主だな」と褒める。


 そんなグランベセル公爵の言葉に、ヴィルスキン辺境伯が「ヴァンディリア公爵の提案だったんですね。」と頷くと、エーデルは首を横に振り「私は陛下に場所を伝えただけで、私が提案したのではないです」と言う。



 「それじゃあ誰が?」と尋ねて来るエズワルド侯爵に、エーデルは答える。




 「リーナ……私の妹の提案なんです」




 エーデルの言葉に「ヴァンディリア令嬢が?」「通りで、女性が好みそうな店なわけだ」とヴィルスキン辺境伯とグランベル公爵は驚いたように言う。




 「前に一度、アサーナトスに皇后陛下が来られた時にお出ししたカレンのお茶菓子を、皇后陛下が気に入られお店に行ってみたいと話されていたのを覚えていたみたいで」


 「そのおかげで、食事会がうまくいったようで妹も喜んでいました」




 そう何故か得意気に話すエーデル。


 グランベセル公爵は「流石、ヴァンディリアの子だ。」と頷いている。



 そのやり取りを聞いていたエズワルド侯爵は「たかが、食事会の場所を提案したくらいで……」と不満気な表情を浮かべる。




 「たかが、食事会の場所をですか。仮にも貴族院の人間である者が、食事会についてそのような認識では困りますね」


 「もしかして、ただ食事をするだけだと思っているのですか?」




 ヴィルスキン辺境伯の問いに、エズワルド侯爵は「そ、そんなわけないだろ……」と返すも、エズワルド侯爵へのヴィルスキン辺境伯の説教は止まらない。




 「なら尚更。アルデン国の両陛下との食事会は政治的な意味も含まれています。本来、食事というものはリラックスをした状態で行うもの。仲を深め、深い話をするのに食事というものはとても大切なものです」

 

 「ですが、食事を行えればどこでもいいわけではありません。選ぶ場所、物によって誠意が見えてくるものです」


 「なので場所や物も慎重に選ばなければならない。ただただ高級な場所や物を提供するのではなく、何故その場所にその人たちを連れてきたのか。それが重要になってきます」


 「そして、その誠意が伝わったからこそ、今回、アルデンの両陛下は実に満足され、食事会もうまくいったのです。」


 「全ては、皇后様が行ってみたいと仰られていた店を、ヴァンディリア令嬢が覚えていたからです。口に出したことを覚えていてもらえていたら、誰だって嬉しいものですから」




 ヴィルスキン辺境伯の説教に、終始気まずそうに顔を顰めるエズワルド侯爵。


 側でグランベル公爵が「こんな長々と話すヴィルスキン辺境伯は珍しいな」と小声でエーデルに言い、エーデルは苦笑いを浮かべる。



 そんな彼らのやり取りを、黙って聞いていたナハトは何か思うところがあるような表情を浮かべ見ていた。







 「たたた、大変です……!!」




 自室で本を読んでいたリーナの元に、そう慌てた様子でやって来たのは、メイドのハンナで、リーナの部屋で刺繍をしていたメイド長のエマに「ハンナ。お嬢様の部屋に入る時はノックをしなさい」と注意される。


 

 エマに注意されたハンナは「も、申し訳ありません……」と口では謝るも、まだ慌てた様子で「お、お嬢様! たった今、お嬢様宛に手紙が届いたのですが……!」とリーナに手紙を渡す。


 そんなハンナに、エマは呆れた表情を浮かべる中、ハンナから受け取った手紙を見るリーナ。



 手紙には封蝋(ふうろう)がされており、その模様を見てリーナは「この封蝋……!」と驚いた表情を浮かべる。




 「皇室からだわ……」




 リーナの言葉に「まぁ……!」と驚きつつも、嬉しそうなエマ。


 リーナは封から手紙を取り出すと、書かれてある内容を読む。




 「な、なんて書かれてあるんですか! お嬢様!」


 「ハンナ、手紙の内容を聞くなんて失礼よ」




 そう話す二人を横に、手紙を読み進めるリーナは「皇女様から、お茶会のお誘いを受けたわ……」と言い、エマとハンナは顔を見合わせると頬を赤らめ嬉しそうにする。


 手紙には短い挨拶の言葉とともに、リーナの話を聞き、一度会ってみたいのでお茶会に招待する旨が書かれてあったのだ。




 「もちろん、お茶会には参加されますよね!」




 やたらとテンションが高いハンナの言葉に、リーナは「皇女様からの誘いだからね……断るわけにはいかないわ」と返すと、ハンナは「ドレスを用意しなければ!」と顔の前で手を合わせる。


 そんなハンナを微笑ましそうに見ては、手に持つ手紙に再び視線を戻すリーナ。



 皇女様は幼い頃から体が弱く、滅多に人前に顔をお出しする人じゃなかったから、回帰前はお会いすることはなかった。


 そして、回帰後もまだ会ったことはない。


 噂では、とても可憐でお淑やかな人だと聞くけれど、実際に会ったことはないから分からない。



 私以外にもお茶会には招待をしたと書かれていたし、恐らくブリューテも招待を受けているはず。


 第一皇子殿下の婚約者だからね。



 ブリューテと皇女様の仲が良ければ、回帰前、ブリューテが私にやっていたように嫌がらせをするためだけに、お茶会に誘って来た可能性もあるけど……。


 皇族の方の招待を断るわけにはいかないし、それに、一度皇女様にはお会いしときたい。



 あまり良いお茶会にはならなさそうだけれど。




 直ぐに、エーデルに招待状のことを話すと、心配そうにしながらも、許可をしてくれリーナはお茶会に参加するため、回帰後では二度目の皇宮へとやって来たのだった。




 「――ブリューテ様。もしかしてそのネックレス、エーヴィッヒ殿下の贈り物ですか?」




 ブリューテの隣に座る一人の令嬢が、ブリューテが身につけるネックレスを見ては、そう頬を赤らめ問いかける。


 するとブリューテは待ってましたと言わんばかりの得意気に「お気づきになられました? この間のデビュタントのお祝いとして頂いたの」と話す。



 ブリューテの話を聞いた他の令嬢たちは「まぁ……!」「素敵……!」と褒める。




 皇女様の招待を受け、皇宮へとお茶会をしにやって来ていたリーナは、目の前で繰り広げられるやり取りを、この感じ久しぶりだわ……と遠い目をしながら見ては、紅茶を飲む。


 リーナが思った通り、お茶会にはブリューテも誘われており、何故かリーナの向い側の席に座っている。



 まぁ、席の順番は、主催者である皇女様が座る先から最も近い場所に、招待客の中で一番位の高い家の者が座ることになっているので、ヴァンディリアの娘であるリーナと、第一皇子の婚約者であるブリューテが向かい合って座ることは必然的なことなのだが。


 回帰前も、こうしてリーナの向かい側に座っては、まるでリーナに見せびらかすように、第一皇子殿下からのプレゼントをブリューテは見せびらかしていたのだ。



 そのことに慣れっ子なので、リーナは我関せずと言った表情を浮かべ、ひたすら優雅にお茶を楽しむと、チラリと参加者の顔を見渡す。




 今回、お茶会に招待された令嬢たちは、政治や立場は関係ないというように見える。


 その中でもブリューテの派閥の子たちは三人いる。


 

 そして、ブリューテを恐れ愛想笑いを浮かべる子が二人、こういったお茶会の場には慣れておらず落ち着かない様子の子が一人。


 どちらにせよ、この場にいる令嬢たちは皆、ブリューテと何かしら交流がある者たちばかりだ。



 第一皇子殿下の婚約者なため、皇女様と親しくしている相手が同じなのは当然だが、リーナは完全に輪の中に入れておらず、私を蚊帳の外にするために、ブリューテと皇女様がわざとそうしたのか。と考える。


 その招待をした張本人であられる皇女様が、この場にまだ来られていないのはよく分からないけれど……。




 リーナは一つため息をつくと、エマに胃薬を用意しとくよう頼んで正解だったわね。と思う。


 その時「あ、あの……」と言うか弱く、可愛らしい声が左隣から聞こえてき、リーナはハッとそちらに顔を向ける。



 リーナの左隣には、ふわふわとした薄紅色の髪をし、小柄でなんとも可憐と言う言葉が似合う令嬢がおり、リーナは思わず、可愛い……と口に出してしまいそうになるのを堪える。


 するとその令嬢は「い、いきなり話しかけてしまいすみません。この前のデビュタントの時、ヴァンディリア公女様にご挨拶をしたかったのですが、機会がなくて……」と頬を赤くし、恥ずかしそうに話す。



 なんとも可愛らしい様子に、リーナは、私が男性だったら今ここで口説いていたわ。と思う。




 「叔母から話を聞いていて、親しくなれたらと思っていたので、こうして再びお会いできて光栄です」




 そう嬉しそうに話す彼女の話を聞き、リーナは「叔母……?」と首を傾げる。


 すると彼女は「あ、私ったら名乗りもしないで……申し訳ありません」と更に頬を赤くし、恥ずかしそうにする。




 「申し遅れました。エンゲル・ファルバーニです」




 エンゲル・ファルバーニ……ヨハンナの!!


 ファルバーニと言う名前を聞き、リーナは驚く。



 ファルバーニと言う名前がつき、彼女の叔母から話を聞いていたと言うことは、彼女の叔母はリーナのシャペロンを務めたヨハンナだ。


 

 そういえば、私と同い年の姪がいるって言っていたっけ……よく、私のシャペロンを引き受けてくれたなって思ったんだった。




 そんな事を考えながらも、リーナも「リーナ・フォン・ヴァンディリアです。私もヨハンナからお話は伺っていました」と返す。


 エンゲルは嬉しそうに「叔母から聞いていた通り、とても綺麗で素敵なお方で……今日のお茶会、お会いしたことがない方ばかりで不安だったんですけど、公女様がいて安心しました」と言う。



 話すたびに、周りに小花が咲いて見える彼女は、話し方もおっとりとし、動くたびに甘い香りがし、なんとも可愛らしく、先ほどまで気を張っていたリーナを溶かしていく。




 「私も……親しい人がいなくて、ファルバーニ令嬢が話しかけてくださり、とてもありがたいです」




 リーナがそう言うと、エンゲルは「公女様……! あ、あの……是非、私のことはエンゲルとお呼びください!」と言ってくれる。


 そんな彼女にリーナも「なら私のことも、リーナとお呼びください」と返すと、エンゲルは「い、良いのですか……?」と顔のパーツを全て丸くし言う。




 「もちろんです。」


 「で、では……り、リーナ。よろしくお願いします……!」




 恥ずかしそうにそうリーナの名前を呼ぶエンゲルに、リーナも「こちらこそよろしくお願いします、エンゲル」と名前を呼ぶと、エンゲルは何とも甘く、可愛らしい顔で笑うのだった。

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