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公爵家の養女  作者: 透明
第二章 新たな始まり
35/42

変化



 エーデルたちがバートン当主、マテオ司祭ら含めパラディースと取引を行なっていた件を取り締まったことにより、エーデルたちは皇帝陛下から褒美を与えられた。


 その活躍により、巷ではまだ若くで活躍したエーデルとリヒトを称える声で溢れているとかで、同年代の騎士を志す者たちに大きく影響を与えていた。




 「……どこに行っても兄貴とリヒト兄の話ばっか。」




 そんな中、シュタインだけはどこか不満気な表情を浮かべていた。




 「なんで取引のこと俺たちに教えてくれなかったんだよ」




 そう言ってエーデルとリヒトを睨みつけるシュタイン。


 そんなシュタインにエーデルは「……話せば心配するだろ」と言うとシュタインは「そりゃもちろん! けど、号外で兄貴たちが関わっていたって知るよりかはマシだよ」と睨みつける。



 今回の件を翌日の号外で知ったリーナとシュタイン。


 下手をすれば命を落としていたかもしれないと言うのに、教えてもらえずシュタインが怒るのも当然だ。




 「エーデルは二人に心配をかけたくなかったんだよ。」と言うリヒトに「リヒト兄にも怒ってんだけど?」と睨むシュタイン。


 シュタインは「号外で知ってどれだけ驚いたか分かる!?」と言うと「ねぇ? リーナ!」とずっと黙って話を聞いていたリーナに同意を求める。




 号外が出た時には、エーデルはまだ屋敷には戻っておらず、リーナもシュタインも気が気ではなかった。


 シュタインの言葉に、リーナは珍しく怒った表情をエーデルとリヒトに向けたかと思えば「……本当心配したんだからね」と言う。



 怒った様子のリーナにエーデルとリヒトは、戸惑った表情を浮かべ「ごめん……」と謝る。


 シュタインの時とは違い、素直に謝る二人を見て「……ほんっと、リーナには弱いよな二人とも」と呆れた表情を浮かべる。







 取引を取り締まった日から数日経ち、エーデルとリヒトは無事叙任式を迎えることができたのだったが、エーデルは複数の騎士団から誘いを受けたにも関わらず、全て断りどこの騎士団にも入団はしなかった。




 「……本当に良かったの? 皇室騎士団に入るのが夢だったんでしょ?」




 談話室で向かい合って座るエーデルにそう問うリーナ。


 だがエーデルは「まぁ……でも今は、この家を守るのが俺の役目だから」と答える。




 「それに、俺の忠誠はすでにリーナに誓ったしな。主人は何人もいらない」




 そう言って笑うエーデル。


 回帰前、エーデルは皇室騎士団に入隊しており、その剣の腕を認められ入隊して間もなく騎士団内で上の立場に上り詰めていた。


 皇室騎士団に入ることは、エーデルの幼い頃からの夢でもあったので、二度目の人生もエーデルは皇室騎士団に入るもんだと思っていた。



 けれどエーデルは、皇室騎士団に入ることはなかった。



 リーナは「でも……」と視線を下げる。


 当主の仕事と騎士団の仕事を掛け持ちするのは大変そうだったが、騎士団の人たちと話すエーデルはとても楽しそうだった。


 いつも、自分より何歳も離れている大人の相手をするエーデルとは違い、騎士団でのエーデルは年相応でいられているようで。



 エーデルが決めたのならもう何も言うことはないけれど、リーナは自分が回帰してきたことによって、エーデルの未来を一つ潰してしまったのではと、申し訳なくなる。


 そんなリーナの知って知らずか、エーデルはゆっくりと言う。




 「守りたいと思う対象が変わっただけだ。幼い頃は、帝国の剣と呼ばれるヴァンディリアの人間として、帝国を守ると思っていたし、それは今でも変わらない」


 「けれど今は、同じくらい……それ以上にリーナの事を守りたいと思っているし、俺が忠誠を誓う相手だと思っている」


 「だから俺はこの剣に、お前を守るって誓ったんだ」




 そう言って、椅子に立てかけていた剣を撫でるエーデル。


 エーデルの言葉に驚くリーナに、エーデルはふっと笑みを浮かべ「そんなに重く考えないで。俺たちは兄妹だろ? 妹を守るのは兄の役目だから」と言う。



 一瞬、ほんの一瞬だが、エーデルの守という言葉に、声や視線に兄妹とはまた違った思いが隠されているように思えた。


 そして、そのことに気付いたリーナに気を使い、エーデルは兄妹と言う言葉を口にしたのだと。


 だが、それは無いとリーナは直ぐに考えるのをやめる。




 私は公爵家の娘と言っても、所詮は養女。


 元々はこうしてエーデルのような身分の高い人と、向かい合って話せる人間じゃ無い。



 幼い頃から公爵邸で過ごしてきたリーナだったが、まだ、と言うか年々自分が元は一般の出だと言う思いがあるようで、彼女が多くの男性に好意を寄せられても、誰にも靡かなかったのもそれが根本にあったからだった。


 

 根っから高貴な方達が自分に好意を寄せるわけがないと。


 そんな思いがリーナの中であったため、恋愛感情がお互いになく、都合の良かったノアと婚約をしたのだった。



 エーデルがどこの騎士団にも入らないと決めた中、リヒトがヴァンディリアにやって来ると、騎士団に入ることを決めたと話してくれた。




 「シャッテンヴェヒターに?」




 リヒトの入団先を聞き、リーナは驚いた表情を浮かべる。


 リヒトは皇帝付き騎士団である、シャッテンヴェヒターへ入る事にしたそうで、明日、早速皇宮へと向かうらしい。



 シャッテンヴェヒターに入団した事にも驚いたが、リヒトが騎士団に入った事に驚いたリーナ。


 回帰前、彼はどこの騎士団にも入ることはなかったからだ。



 剣の腕がエーデルに負けず劣らず高く、数多の騎士団から誘いを受けていたのにも関わらず、全てを断っていたリヒト。


 そんな彼が今回は騎士団、それもシャッテンヴェヒターに入るなど、一体どういう風の吹き回しなのだろうかと不思議に思うと同時に、エーデルもリヒトもしっかりと、先のことを考えているのだと思う。



 シュタインも、18になり直ぐに叙任式を受けられるように、毎日剣の稽古は欠かさず行い、合宿にも参加している。


 シュタインも皇室騎士団に入団することを目標にし、家のために頑張っている。



 皆んな少しずつだが変わっていっている。


 回帰前、そのことに焦り、自分だけお荷物になるような気がして、エーデルの役に立ちたくてリーナは結婚を急いだ。



 今回は好きな相手と結婚すると決めたけど……このまままた、お荷物になるのなら結婚するしか無いと、リーナは思うのだった。




 「――まさか本当に、お前がシャッテンヴェヒターに入るとはな」




 剣の手合わせをしながら、エーデルはリヒトにそう話を振る。


 リヒトは木剣(もっけん)をエーデルに向かい振り下ろすも、エーデルはそれをかわす。




 「フォルトモントの事を調べるだけじゃ、別に騎士団に入らなくても調べれるのに」




 リヒトはフォルトモントの事を調べるために、シャッテンヴェヒターへ入ることを決めたのだった。


 神聖国とフォルトモントの関わりを調べるため、フォルトモントの血を引いていると言うリーナに危害が加わらないために、全てはリーナを守るために。


 それだけのためにリヒトは、フォルトモントの事を聞いた時から、シャッテンヴェヒターへと入ることを目指していたのだった。



 だが、別にシャッテンヴェヒターに入らずとも、フォルモントについては調べることはできる。




 「シャッテンヴェヒターに入れば、皇命にも従わないといけなくなる。フォルトモントの事を調べるだけなら、わざわざ入る必要はなかったんじゃないか?」




 そう言うエーデルの攻撃をかわし、リヒトは動きを止め、その場に立ち何かを考えている表情を浮かべる。


 そんなリヒトを見て、エーデルも動きを止める。




 「……調べれると言っても、俺はまだ爵位を受け継いでいない。好きに動けたとしても、調べられる範囲は限られて来る」


 「シャッテンヴェヒターは、他の騎士団とは違い許可なく捜査をしたり、捕らえたりすることができる。何かと都合がいいと思ったんだ」


 「それに、お前やリーナに何かあった時に、シャッテンヴェヒターが動くことができればいいだろ?」




 リヒトの言葉にエーデルは、少し黙ると「……ずっと聞こうと思っていた事を聞いていいか」と問う。


 リヒトは「何……」と聞き返すと、エーデルは真っ直ぐリヒトを見て言う。




 「リーナの事、どう思っているんだ?」




 エーデルの問いに、さほど驚いた様子もなく、ただ静かにエーデルを見ては何も言わないリヒト。


 かと思えば、ゆっくりと口を開き「……もし、リーナに特別な感情を抱いているって言ったら?」と問いかける。



 その言葉にエーデルは一瞬、驚いた表情を浮かべるも「別に……俺はお前を応援するし、リーナもお前と同じ気持ちなら、それを叶えるために俺は行動するだけだよ」と言う。


 そんなエーデルに、リヒトは「……エーデル。お前こそ、リーナのことをどう思っているんだ?」と問う。



 リヒトは薄々エーデルのリーナに対しての想いには気づいている。


 そして、その事をエーデルに問う気はなかった。


 けれど、エーデルから話を振られたのなら、また別だ。



 リヒトの問いに、エーデルは少し視線を逸らしたかと思えば、もう一度視線をリヒトに戻し「……特別な感情を抱いているよ」とゆっくりと、だがはっきりと言う。


 はぐらかされると思っていたリヒトは、エーデルの返事に驚く。



 そんなリヒトにエーデルは「でも」と話を続ける。




 「リーナと、どうこうなりたいとか考えているわけじゃない。ただ、リーナが幸せに暮らせるように、そばでリーナのことを守りたいんだ」


 「そのためなら俺はなんだってする」




 そう力強く言うエーデル。


 きっとその考えになるまで、色々と葛藤があったのだろう。


 エーデルの目は覚悟を決めているようで。



 だからこそ、リヒトはエーデルに何も言えなかった。


 本当にそれでいいのかと、後悔はしないのかと色々と言いたいことはあったが、言いわけがないと言うことも、後悔しないはずないということもわかっていながら、軽々しく口に出すことはできない。




 それから、リヒトはシャッテンヴェヒターの騎士として、忙しくする日々を過ごし、前のように頻繁にヴァンディリアに遊びに来ることは無くなった。


 そして、エーデルも当主の仕事に追われ、シュタインも頻繁に合宿に参加するようになり、屋敷を開ける日が続き、リーナが一人で過ごす日々が続いていたある日、リーナの元に一通の手紙が届いたのだ。



 その差出人は、エーヴィッヒの実の姉である皇女で、リーナをお茶会に誘いたいという内容が綴られていた。

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