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魔女と使い魔のバタバタな日々  作者: ルナ
戻ってきた日常
38/39

幼き王女はお茶会を開こうとする

 「お茶会……? ですか……?」

 城に呼び出されたエトワール・クロウ・リルアラは

怪訝そうな顔でまだ幼い王女を見つめていた。

「そうだよ!!」

 胸を張るレティーシャ・エルト・モラン。

何故自分を読んだのだろうとエトワールは首をかしげていた。

 以前より仲良くなったとはいえ、エトワールと彼女はそんなに

仲がいいと言う訳ではない。

 呼ぶとしたらスピカ=ルーンやリイラ=コルラッジやアルト=

ハルメリアだろう。と、エトワールは仲良くなった少女と少年の

姿を脳裏に思い浮かべる。

「それで、何で俺なんですか?」

「あなたに、協力してほしいから!!」

 目をきらきらさせる少女を放っておくことはエトワールには

出来なかった。以前の強がっていた自分なら迷わず逃げかえる

とは思うが、いろいろ素に戻った今ならそれは無理だ。

「……で、俺は帰ってもいいですか?」

「駄目――ッ!!」

「ふざけんなよ、イリアス!! てめえ一人だけ逃げる気かよ!!」

 レティと同時にエトワールが叫び、イリオス=ウォーカーはわずらわしそうに

額に手を当てて小さく呻いた――。


 東洋人メイドのアカネに熱いお茶を用意してもらって飲み、ようやく

エトワールとイリオスは落ち着いたようだった。

 エトワールは静かに紅茶を飲んでいる王女を見つめている。

お団子に結った亜麻色の髪とくりくりした黒い瞳。まだ幼いが、少し

大人びた部分もある将来のエトワール達の指導者だ。

「レティ様、それで、俺達に協力とは?」

「あたし、お茶会を開きたいの!! いつもとは違う、特別な

お茶会よ!? そして、スピカ達を呼ぶの!!」

 エトワールはああ~、と合点がいった。

イリオスは彼女の気持ちが分かっていないのだろうボソリと呟く。

「あんな事があったばかりだというのにそれはどうかと思いますが。

茶会を開いてスピカ達を楽しませるのは後日にしたらいいでしょう」

 遠慮のないイリオスの言葉にレティはムッとなった。

エトワールは頭を抱えたくなる気持ちになりながらイリオスの後頭部を

強かにひっぱたく。

「……何すんですか」

「……ちょっと来い、お前。いっぺん腹割って話そうか。――レティ様、ちょっと

失礼します」

 大人びて見えても子供っぽいイリオスをずるずる引きずりながらエトワールは

一時退場した。レティは首をかしげながらも冷めた紅茶をすする。

 誰もいない場所に来ると、エトワールはようやくイリオスを解放した。

「お前……何かあったのか? 今日様子変だぞ? あんな年下の子に八つ当たり

するなんて大人げないぜ?」

「何もありませんよ! 久々に家に帰ってゆっくりしていたら、メリッサに

『今日、ダーリンと二人っきりになりたいから帰ってこないで』って言われた事

とか全然ありませんから!!」

「……あったんじゃん」

 エトワールは拳を握りしめて力説するイリオスと、義理の息子の恋心に一切

気がつかないメリッサにあきれ顔になっていた。

 メリッサも酷な事をするものだ。一切悪気がないだけにタチが悪い。

イリオスは専門の工房を持つ、ガラル=ウォーカーの息子だ。

 彼の作り出す作品はかなり貴族の間でも人気で、実はモラン王家の御用達でもある。

無骨な外見や太い腕とは裏腹に彼の作品は繊細でとても美しいのだ。

 妻を亡くした後男で一つでイリオスを育て上げた彼だが、息子が大人になって来た時に

一人の女性と恋に落ちた。それがメリッサである。

 イリオスとエトワールは同じ学園の生徒で、幼馴染でもあった。

エトワール達はメリッサの事が好きだったのだけれど、結局彼女はその想いを全く

気づくことなくウォーカー夫人に――人妻になってしまった。

 かつて愛した女性を父に取られ、しかもその女性を母と呼ばなければならない。

こんなに過酷な事はないだろう。

「お前も大変だよな」

「あなたもでしょう? スピカという見た目十歳の十六歳に彼氏持ちに横恋慕し、

さらに今は職業婦人の強気な女性にアプローチしているそうではないですか。

いつからあなたはロリコンになり下がったんです?」

「ろ、ロリコンじゃねえよ!! スピカもリイラも十六歳だし、ってかリイラに

アプローチなんてしてねえから!!」

「難儀な人ですね。手ごわい女性ばかり好きになるなんて」

「お前だって鈍いメリッサを好きになったろうが!!」

「それはあなたもでしょうが!!」

 ぎゃんぎゃんと低レベルな争いを続ける二人。

と、そこに幼い可愛らしい声が割り込んだ。

「お兄ちゃん達、大変なんだね。お酒とお料理用意したから食べてってね」

「「レティ様、いたんですか!?」」

「姫の好意を無になさらないでくださいね、お二方?」

 いつの間にか背後にレティとアカネが立っていた。

アカネは一見丁寧な口調だが、直訳すると「食べて行かないとどうなるか

分かってんだろうな!?」と言う意味になるのではないかと二人は思った。

 その証拠にアカネの口元は笑っているのに目は笑っていない。

「た、食べますよ! こうなったらどんどん食べて飲んでやります!!」

「まあ、俺もストレス解消したいし食べて飲むか」

 肉料理、魚料理、野菜料理、スイーツの数々が並ぶテーブルに案内された

二人は料理に手を伸ばした。アカネとレティも席に着き、その場は「無礼講」的な

雰囲気を醸し出し始める。アカネにお酌をされた二人はちょっと照れたような態度だ。

「エトワール様、イリオス様、たくさんありますので、たくさん飲んでくださいね」

「アカネ、あたしもお酒ちょうだい!!」

「……姫様はジュースです」

「ちぇ~」

 それなりに楽しんだエトワール達だったという。

後にすっかり出来あがったイリオスがレティに好きな男性がいるのかとか聞いたり、

大人になっても結婚相手がいなかったら「俺がもらいましょう」とか言い始めた

ので、アカネが無言でキレてモップを振りあげたため、エトワールが必死で

羽交い絞めにするのは余談だったりする。

 ちなみに姫の返事はOKだったらしく、「てめえもロリコンじゃねえか」と

エトワールは思ったという。まあ彼は酔っているからそんな発言をしただけ

かもしれないが――。


 久々の「魔女と使い魔」です。タイトルに魔女と

入っているのに今回スピカとアルトは出せませでした。

 あ、でも次回はちゃんと出すので。

今回は出番が結構少なめなエトワールとイリオスと姫様と

アカネのための回です。

 お茶会を開こうとするというサブタイトルなのに最初しか

お茶会の事を話してなかったり(笑)。

 イリオスの事情を詳しく書いてなかったので、今回ここで

名前だけの登場のイリオスパパを出してみました。

 次の投稿は「代理伯爵~」です。


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