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魔女と使い魔のバタバタな日々  作者: ルナ
陰謀をたくらむ者
31/39

魔女は弟弟子のたくらむを阻止する

アルトたちが部屋に駆け込んだ時、

チッと舌打ちをしたシュイアが彼女から身を離した。

 リイラがせき込み、慌ててエトワールが駆け寄る。

リイラは背中に手をあてられて一瞬抵抗したけれど、

彼はさっきの男とは違うと思い直して大人しくなった。

 アルトはキッとシュイアを睨みつけている。

メリッサは驚きを隠せない様子だった。

 スピカと同じように、彼女にとっても

シュイアは弟弟子だ。

 その彼が、こんなことをするなんて、と。

「あんた、何でこんなことをしているの!?

 人を殺そうとするなんて、師匠がどんなに

悲しむと思うの!?」

「うるせえよ」

「きゃあっ!!」

「「メリッサ!!」」

 男がキッとメリッサを睨みつけると、

衝撃波が発生して彼女は吹き飛ばされた。

 壁に叩きつけられ、そのまま手を伸ばした

状態で気を失う。

「なんてことを!! あんたたち、兄弟弟子なんでしょっ!?」

 リイラはメリッサを抱き上げながらシュイアを睨みつけた。

しかし、彼はおかしそうに笑うばかりだ。

 狂っている……。

彼女はその言葉をあえて言わなかった。

 そう考えたのは、彼女だけではないだろう。

アルトも、エトワールもそう思っているのが明らかだった。

「兄弟弟子だよ。それがどうかしたか?」

「あんたねえっ!!」

「リイラ!! 馬鹿に何を言って無駄だよ」

 なおも言い返そうとしたリイラに、アルトが彼にしては

きつい口調と言葉でいさめた。

 シュイアの表情が変わり、今度はアルトを睨むように見た。

「なん……だと……?」

「だって馬鹿でしょう? スピカを倒すためだけに、

こんな大掛かりなことをやったって言ったよね?

 そんなの馬鹿がやることだよ」

「てめええええええっ!!」

 彼がアルトに飛びかかった。

アルトはそれを読んでいたので飛び退ってよける。

 だが、アルトは彼の能力をすっかり忘れていた。

ぎろりと睨んだシュイアに反応するように、

扉から何者かが侵入してきた。

 憎むような目をした者たちがぞろぞろとやってくる。

「あんまり俺を怒らせるんじゃねえよ」

「アルト!! 傷つけちゃ駄目よ!!

 この人達、皆こいつに操られてるの!!」

「そ、そんなこと言われても……!!」

 奇声をあげて手にした武器で飛びかかってくる男を、

とっさに近くにあった麺棒で止めるアルト。

 その際に、少し回復したリイラが鋭い声を

上げたので、歯を食いしばりながら手のしびれに耐えていた。

 このどさくさで、いつの間にかシュイアは消えていた。

「こうなったら、戦うしかないわよ!!

 あまり怪我はさせないように、だけどね!!」

 メリッサもエトワールも武器を取り始めた。

とはいっても、ケーキ屋であるので、ホイッパーや

フライパン、などしかないのだが。

 包丁は危険なので使えない。

「私も、戦う!!」

 リイラも箒を手にして戦い始めた。

操られているとはいえ、そんなに強くないらしく、

教会の使者たちは四人に押されていた。

 しかし、あまり傷は付けないようにという

制限のある戦いだ。

 やりにくいことはこの上ないだろう。

「このまま、気絶させちまった方がいいんじゃないか!?」

「それがいい、わね!!」

「ごめんなさい!!」

 リイラが持てるすべての力を箒に込め、

男の一人の頭を叩きつけた。

 予想以上の力が入ったのか、男が気を失う。

アルトたちもそれぞれの武器を使って教会の使者たちを倒す。

「早く、あいつを追わなくちゃ!!」

 そのまま四人は外に出ようとしたが、さらにかなりの人数が

店に入り込んできたためにできなかった。

「あいつ、なんてことをしてくれたのよ!!」

「こんなに、倒しきれないよ……」

「そんな……」

「皆、弱気になるな!!」

 リイラたちがへたり込み始めてしまった。

手は痛いし、彼らをむやみに傷つけてはいけないから、

戦う気力はだんだんそがれていった。

 エトワールが叫ぶが、彼もまた気力が

そがれているのは確かな事実である。

「ちくしょう……どうしたら……!!」

「皆、目を覚まして!!」

 少女の声が響き渡ったのはそのすぐ後だった。

奇妙な生き物を抱いた少女が店に飛び込んできたのである。

 その少女は、紅い目に白い髪をしていた。

彼らが探していた人、スピカ=ルーンその人である。

 奇妙な生き物ーー、リリアがぴょんぴょんと

男たちの周囲を飛び回る。

 しだいに、憎しみの顔が消え、

彼らは穏やかな顔に戻って行った。

「目を、覚まして!!」

 さらにスピカはリリアを抱きながら祈り始める。

まばゆい虹色の光が両者の体からあふれ出し、

世界を包むかのような強い強いものとなった。

 アルトたちは訳が分からないと言ったような

顔でそれを見守る。

 世界で、異変が起きていた。

魔女を狙っていた者たちが、しだいに穏やかな顔を取り戻す。

 戦っていた者たちが、動きを止める。

ディオナが、エリオスが、レティーが、

今にも泣きそうな顔になって動きを止めていた。

 温かき光が世界中にあふれていく。

いつの間にか、アルトたちの目にも涙が浮かんでいた。

 こうして、スピカの弟弟子、シュイアのたくらみは、

とりあえずは阻止されたのだったーー。



ついにスピカがアルトたちと

再開します。次回は

もう一話の後、日常編に戻ります。

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