モノローグ ~主になった訳~
スピカ=ルーンは、村の近くの森で一人、暮らしていた。
親友であるリイラ=コルラッジしか来るものはおらず、
彼女は孤独な人生を生きてきた。依頼で薬や毒薬・惚れ薬を
作ったり、研究したり、人を殺す場合もあった。
スピカは親友の言葉以外に耳を傾けることはなかった。
村人が何を言おうと、また依頼先で中傷を
なげられようとも、無視を決め込んでいた。
そんな彼女が、使い魔を欲したのは、あいにくさみしかった
からではない。リイラと、もう一人、仲良くしてくれる少女、
レティーシャ・エルト・モランの忠告を受け入れたからだ。
愛称をレティという、このモラン王家の姫君は、スピカを
擁護し続けるせいで、悪魔つきなどという悪評を
流されても、なかよくしてくれるのだった。
使い魔の話が出されたのは、三日前、リイラと共に城のお茶会
に招かれた時のことだった。
「ねえ、スピカ。スピカって、使い魔とか弟子とかいないの?」
亜麻色の髪に黒い瞳、美人というよりはかわいいタイプのレティは、
くりくりとした目でスピカを見ていた。
「物語とかじゃね~。いつも何か手下とかがいるんだよ」
「手下、ねえ」
好物のチョコレートケーキを頬ぼりながら、スピカは肩をすくめた。
「興味がないよ。私は一人でいい。リイラもいるし」
「かわいいこと行ってくれるわねー!!」
そう言った後、スピカはリイラにぎゅうっ、と抱きしめられていた。
不快ではないので、抵抗はしないでおく。
リイラは大人びた少女だった。ブルネットの髪を最新流行の形に編み上げ、
オシャレなリボンをいつもつけている。
スピカのツインテールに飾ってある、綺麗な星の髪飾りは、彼女が選んで
贈ってくれたものだった。趣味ではないが、彼女がくれたのでつけていた。
「でも、手下がいないと、悪魔的な魔女じゃないよ!!」
ぷうっと頬をふくらませ、幼い姫は反論した。変わり者でもある彼女は、
スピカ同様、悪魔的な魔女に憧れている。
「あのねえ、別に悪魔的にこだわらなくても」
あきれ顔のリイラ。キッと二人が睨みつけた。
「「リイラには分からないんだ!! 私たちの気持ちが!!」」
「ごめん……私が悪かったわ」
リイラは思わず謝った。彼女たちが必要以上に悪魔的にこだわるのは、
見た目も影響しているのだ。レティはまだ八歳なのでこれから見た目も
変わるかもしれないが、スピカはこれ以上成長できない。
十五歳なのだが、十歳ぐらいの見た目と背をしているのだ。
それは、リイラのせいでもある。リイラが呼び出してしまった悪魔と
取引をし、魔女になったせいで、成長が止まったのだ。
「とにかく、私はやっぱり使い魔をつくる! それも人間の」
「それこそ悪魔的だよ!! スピカ~!!」
レティが抱きついてくる。きらきらと紅い目をきらめかせるスピカに、
リイラはあきらめたようにため息をついた。
前の話では何故使い魔を持とうとしたのかわからないので、ここで理由を書いてみました。スピカの親友の二人組も出ます。初登場です。