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魔女と使い魔のバタバタな日々  作者: ルナ
逃走する魔女
27/39

使い魔は友と共に行動する

 スピカ=ルーンが森に逃げ込んでいる頃。

使い魔、アルト=ハルメリアと、その友、

メリッサ=ウォーカーはあたりを警戒

しながら歩いていた。

 誰もいないのを確認し、歩き出す。

メリッサはだんだん明るさを取り戻していた。

 そのことがアルトには安心を与えている。

「スピカ、見つからないわね」

「うん……」

 アルトたちは声を待ちながらスピカの

探索を続けていたが、いまだ見つけられずにいた。

 スピカの師匠を名乗る者の連絡は途絶えている。

こちらから連絡する方法は分からないので、

どうしようもないのだった。

 メリッサにも聞いてみたが、まったく分からないらしい。

「アルト!!」

 と、メリッサが悲鳴のような声を上げた。

草むらに何かがいる。ガサガサと草をかき分ける

ような音がその場に響いていた。

「誰だ!! 出てこい!!」

 誰何すいかの声を上げるアルト。

一瞬、草むらの中が静まったが、

やがて一人の少女と少年が姿を現した。

「アルト、ひさしぶり~」

「また会いましたね……」

 レティーシャ・エルト・モランと、

イリオス=ウォーカーだった。

 レティは事情を知っているのか知らないのか、

にこにこと緊迫感もない笑顔である。

 一方、イリオスは無愛想な感じだった。

無理やり子守りを押し付けられたのかもしれない。

「レティー様、イリオスさん!!」

「イリオスじゃないの!!」

 嬉しそうに駆け寄るメリッサに、イリオスは苦虫を

かみつぶしたような顔になっていた。

 彼はメリッサを、義理の母親を避けている。

「久しぶりね、本当に!! ぜんぜん会いに来ないんだもの!!」

「あなたにあいさつしたんじゃありません」

「何よ。相変わらず無愛想ね」

 頬をふくらませるメリッサ。その様子は、母親というより

友達に対するもののように思えた。

 幼馴染だった頃の名残だろう。

誰のせいだと思ってる、思わずそう呟いたイリオスは、

睨むような目で見る彼女に詰問にあった。

 彼女はイリオスの恋心も、父親に対する思いも、

全然知らないのだった。イリオスの目がさらにきつくなる。

 事情を知っているアルトが、慌てて止めに入った。

「あの、二人はどうしてここにいるんですか?」

「あ、忘れてた!! 魔女狩りが始まったんだよね!?

 スピカは!? あの子はどこにいるの!?」

 レティの顔がかなり真剣なものとなった。

揺さぶられ、アルトは言葉に困って立ち尽くす。

「何があったの!? ねえ、答えてよ、アルトッ!!」

「スピカはいなくなったんです。探しているんですが、

どこにもいません」

「そんなっ!!」

 レティの顔がしだいに青ざめていく。

イリオスの顔も心配そうにしかめられた。

 とーー。

「いたぞ、魔女だ!!」

「あれ? でも、あいつスピカ=ルーンじゃないよな?」

「こうなったら魔女なら何でもいい、連れていくぞ!!」

 三人もの男たちがその場から現れた。レティは怯えて

後ずさり、イリオスが構えていた剣を抜く。

 メリッサたちも青ざめて下がった。

「逃げてください、母さん、アルト、レティ様!!

 ここは俺が食い止める!!」

「で、でもイリオス!!」

 メリッサが泣きそうな顔になった。

彼は彼女の血のつながらない息子である。

 置いていけるはずがなかった。

「メリッサ早く!! イリオスは魔導師とかじゃないから

大丈夫!! ここは逃げるよっ!!」

「イリオス!! イリオスーーーー!!」

 メリッサは両側からアルトとレティに連れて行かれた。

アルトは逃げながらも、スピカは危険な目にあっていないだろうかと

心配になっていた。彼女が本気を出せば逃げ切れるだろう。

 だけど、彼女は力をまともに出せるかどうかが分からなかった。

「レティ様、巻き込まれないうちに城にお帰りください。

あなたは魔女ではないんですよ!?」

「嫌!! あたしここに残る!! 一人だけ温かい場所で

ぬくぬくしてるなんて耐えられない!!

 エトワールだって協力してるんだよ!?」

「エトワール!?」

 アルトが驚いたような顔になった。彼が動いているなんて

初耳だった。彼は貴族であり、アルトたちの友人だが、

魔導師でも何でもない。

「どうしてエトワールが!? 彼はどこにいるんですか!?」

「『カッサンドラ』に行った!!」

 『占い喫茶・カッサンドラ』には、今、リイラ=コルラッジがいた。

彼女は無事だろうか。殺されないことは彼女の発言から分かっている。

 だけど、本当に手を出されないのかが心配だった。

そしてーー。

「あっ!!」

 アルトは額を手で打ってうめき声をあげた。

不審そうに二人が走りながら見てくる。

「どうしたの、アルト!?」

「オリオンを忘れてきた!!」

 オリオンのことを知らないレティは首をかしげていたが、

今にいたるまでアルトと同じように忘れていた

メリッサは、血の気の引いた顔になっていた。

 魔女狩りは魔女だけを狩るのではない。

魔導師・魔法生物・使い魔をも狩るのだ。

「オリオン、無事でいて!!」

「ごめんね、オリオン……!!」

 アルトたちは店に一旦戻ることにし、

方向を変えてオリオン救出のために乗り出したのだったーー。

 

エトワール、リイラ、オリオンが

再登場します。次回の主人公は、

珍しくリイラになります。

次回もよろしくお願いします。

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