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魔女と使い魔のバタバタな日々  作者: ルナ
逃走する魔女
25/39

魔女は教会の使者に襲われる

 スピカ=ルーンは、上空を箒で滑走していた。

ぐんぐんとスピードを上げて走っている。

 何も考えなくてすむように、彼女はただ

箒を走らせていた。

 そうしていないと、泣いてしまいそうだった。

あまりにも彼と、使い魔であり、恋人のアルト

と別れるのは辛かった。

「アルト……」

 と、その時だった。

「いたぞ、魔女だ!!」

「魔女スピカ=ルーン!! 降りてこい!!」

 下の方で男たちが集まり始めていた。

スピカはあきれたようにため息をつく。

 どこの世界に、殺されると分かって

自ら命令にしたがって降りる者が

いるのだ。いる訳がない。

「本当にしつこい……!!」

 スピカは体内で魔力を練り始めた。

詠唱の輝きがスピカを包む。

 スピカは男たちを殺すつもりだった。

殺らなければこっちが殺られる。

ここで死にたくはなかった。

 詠唱が終わった。雷の塊が

スピカの手にはある。

 男たちはギョッとなったように後退し始めた。

「逃げたって無駄!!」

 スピカは雷の塊をかがけて男たちを

睨みつけた。今、ここでこれを落とせば

こいつらは死ぬ。スピカは助かるのだ。

 だがーー。

スピカはそれを落とすことができなかった。

 アルトの悲しげな顔が浮かんだのだ。

もし、スピカが身を守るためとはいえ、

人を殺したと分かったら、アルトは

悲しむかもしれない。

 そう思ったらとてもできなかった。

「できない……」

 手の中の雷はしだいに色を失い、

そのまま消滅した。スピカは悲しい

思いを抱えてそのまま移動する。

「くらえ、魔女っ!!」

「きゃあっ!!」

 しかし、敵は身の危険を感じたのか

攻撃に転じてきた。聖水入りの水鉄砲である。

 大量の聖水が彼女を襲った。

肌が焼ける匂いがスピカの鼻をつく。

 そのまま彼女は箒から転落し、

その場に叩きつけられた。

 なんとか受け身を取り、威力を殺す。

完全には殺しきれずに、彼女は怪我を負ってしまった。

「姑息な手を……!!」

 スピカは唇をかみしめながら、

男たちが水鉄砲を構えるのを見ていた。


 一方、その頃。

ディオナ=コーラルは悩んでいた。

 目の前に広がるのは、憎いかたきである

スピカ=ルーンが二人もの男たちに

囲まれている光景である。

 彼女は怪我をしているらしく、

悔しげに睨みつけながら動かない。

 今、動けばディオナは彼女を助けられる位置にいた。

反対に、動かなければ敵は死ぬ。

 聖水が魔女や使い魔や魔法生物に劇薬に

近いのは、もちろん彼女だって調べ済みだった。

 もしここで死ななくても、彼女は連れていかれて

火あぶりになるだろう。そうしたら、間接的に

ディオナは兄レヴァンの敵を討ったことになる。

 だが、どうしても釈然としない想いがあった。

ここでスピカを見殺しにしたくない何かが。

「どうして? どうしてあたしがこんな

ひどいやつを、魔女を助けなきゃいけないのよ」

 言い聞かせてみても、心はざわつくばかり。

ここで見殺しにしたら一生後悔するような気もした。

 ディオナはその気持ちを、「敵を奪われたくない

からだ」と勝手に結論づけ、彼女に向かって

ずんずんと大股で歩いて行った。


 魔女は男たちを憎々しげに睨みつけていた。

動こうと努力はして見るものの、体が

上手く動いてくれない。

 やっぱり体には相当のダメージが

加わっていたらしい。

聖水は魔女にはかなりの劇薬。それを

大量に浴びたのだ。

 と、ここでスピカはあることに

気付いた。男たちの手が震えている。

 彼らも必死なのだろう。

一歩間違えば、死の危険さえある魔女狩り。

 それに挑んだのは、

きっと魔女と捕えて連れて行けば、

報奨金がもらえるからだろう。

 彼らはプロではないのだ。

(あれを落とせれば、逃げられる?)

 スピカは男たちに見られないように

魔力を練り始めた。ごくごく少量の魔力だ。

 これならば、相手が怪我をすることなく

撃ち落とすことができる。

(お願い……!! 気がつかないで!!)

 だが、小粒の火球を放とうとしたスピカの

もくろみは外れた。こちらに攻撃して

殺そうとしていると勘違いした男たちが、

一斉に聖水を噴射してきたのだ。

 スピカは悲鳴を上げ、その場に倒れ込んだ。

「う……くうう……」

 うめき声が響き渡る。スピカはよろよろと

手を出して立ち上がろうとしたけれど、

もうその力さえ残っていないようだった。

「おい、殺すなよ? 報奨金が減るぞ」

「分かってるって。でも、あと一回

なら大丈夫だろ? まだ意識を保っているようだしな」

「いいかげに……」

 いい加減にしなさい、そう言うつもりだった声は、

口がうまく動かずに相手には伝わらなかった。

 後一度それをくらえば、スピカは気を失って

連れていかれてしまうだろう。

 こんな年で、こんなところで、死ぬのだろうか。

どうせ死ぬなら、アルトのそばがいい。

 彼にもう一度会ってから死にたい。

スピカの目から涙があふれだした。

 迫りくる聖水が、彼女には毒のように

思えてきた。何故か時間がゆっくりしている

気がする。スピカの目には、それがやけに

スローに感じていた。

 と、その時間がついに終わった。

一つの影がスピカの前に飛び出して来たのだ。

 その人物が聖水をかぶったので、

スピカに一粒さえもあたらなかった。

「あ、あなたは……!?」

 驚きに見開かれる紅い目を、睨むように

少女の瞳が見つめていたーー。



突然魔女が襲われる。

死にかける彼女を、

助ける少女。

彼女はどうなるのか!?

次回もよろしくお願いします。

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