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魔女と使い魔のバタバタな日々  作者: ルナ
愛を告げる魔女
16/39

使い魔は男と密談する

 アルト=ハルメリアは、

エトワール・クロウ・リルアラと

話しあっていた。

 つまんない、とわめくレティ姫

やせっかく面白そうな話をしてるのに、

とぶつぶつ言うメリッサ=ウォーカーを

一時排除して、二人になっている。

 ちなみに、イリアスは早々に姿を消していた。

彼はここにはいつかない。その代わりのように、

エトワールはちょくちょくここに来ていた。

メリッサもこころよく迎えて嫌がらないし、

居心地がいいからよく居座ってしまうのだ。

「ボクは何をすればいいんですか?」

 キッ、と顔を上げてアルトが聞いてきた。

かなり真剣な顔だ。エトワールはつい吹き出して

しまい、真っ赤になった彼から怒鳴られた。

「何で笑うんですかっ!!」

「いや、そんな顔しなくてもと思ってな。

マジメだよな、お前」

「悪いですか!!」

「いちいちケンカ腰になるなよ、からかった

だけだろう」

 アルトは渋々口をつぐんだ。

頭から湯気が出そうなほど顔が赤い。

 エトワールは苦笑しながら口を開いた。

「お前は基本何もしなくていい」

「え?」

「実行するのは、メリッサとスピカだけだ」

「どういうこと……ですか?」

「お前はただ隠れてればいいから。

 後は、スピカにバレて怒りだした時、

謝り倒してもう一度告白しろ」

「……ボク、完全にカッコ悪くないですか?」

 泣きそうになるアルトに、エトワールは

耐えろ、とだけ言ったという。


 砂糖を入れたストレートティーを

運んできたメリッサに、エトワールは

作戦の概要を話すことにした。

「メリッサ」

「なになになになに、早く教えてよ~」

 きらきらと目を輝かせながら

二人を見ている。

 とりあえずカップはテーブルに置き、

メリッサは空いている椅子に座った。

 早く早くと明らかに目がそう言っていた。

 エトワールが笑いながら言う。

「お前は、スピカを挑発しろ。

スピカは上手く言いくるめてあるから、

徹底的に悪女を演じろ」

 メリッサはにっこりと笑った。

ビクッ、とアルトが身をすくめる。

 背中に夜叉が見えたのは、アルトの

勘違いではないだろう。

「どういうこと、かなあ?」

「だからーー」

 さらに説明しようとしたエトワールは、

メリッサの顔を見てギョッとなった。

愛想笑いをするが、もう遅い。

「そんなことしたら、人形の魔女に

嫌われちゃうじゃないの、

ばかあああああああああっ!!」

「ぎゃああああああっ!!」

 ボコボコに殴られるエトワール。

アルトは耳をふさぎながら、

現実逃避してスピカの笑顔を思い出していた。



 一時間後、ようやく自分を取り戻したメリッサは、

自分が殴りつけたエトワールに治療の術を施していた。

「魔術が使えるんですね」

 初めて見る魔術に、アルトは目をキラキラさせていた。

前に一度、スピカが壊れた物を直す術をかけたのを見ていた

が、その後で彼女が倒れたので、それどころじゃなくて

あまりよく覚えてはいなかった。

「私は、人形の魔女と姉妹弟子なんだよ。スピカが姉弟子。

だから、私も魔術くらい使えるよ」

「そうなんですか!!」

 意外な関係に、アルトは目を丸くした。

メリッサは得意げにいろいろと話してくれる。

「私と彼女は、属性は違うけどね。

スピカ=ルーンは闇、私は光。

回復系がかなり得意だよう」

「みんなたのしそうでずるい!!」

 話している最中に、レティーシャ・

エルト・モランが飛び込んできた。

 眉を吊り上げて怒っている。

 ずるいずるいずるいと地団太を踏み

ながらわめく姿は、とてもかわいらしかった。

「あたしにも何か任務ちょうだいよおおおおっ。

スピカにためにあたしもなんかしたいいいいいっ」

 メリッサとエトワールは目くばせしあった。

 ややあって、エトワールが彼女に近づく。

「レティ姫。あなたにもちゃんとした任務

がございますよ」

「ほんとう!?」

 エトワールがそう言うと、瞬時に

彼女の顔が輝いた。メリッサが部屋を

出て行き、少しして戻ってくる。

 ケーキをいくつか詰め込んだ箱が、

レティに差し出された。

「レティ様、これをお父様たちに届けて

くださいませんか? 代金はいりません。

メリッサ=ウォーカーからの気持ちですわ」

「おいしそう、あたしもたべていいの?」

「もちろんです。任務を果たしたら、

いくらでもいただいてください」

「やったあっ!!」

 上機嫌になったレティは、エトワールを

伴って城に戻って行った。

 体よくあしらわれたことに、まだ幼い姫

はまったく気づいていなかったという。




「さあっ、おいしいケーキを焼かなくちゃ。

アルト、手伝ってね!!」

「あ、はいっ!!」

 とりあえず、二人はスピカが来るまでに

大量のケーキを量産することにした。

 昨日アルトが焼いた分だけでは、

甘党の彼女には足りないからだ。

 部屋にはすっかりチョコレートの

甘い香りがたちこめ、帰ってきた

エトワールが閉口した。

「レティ様はどうだったの?」

「おいしいケーキを食べてご満悦ですよ」

「それはよかったわ」

「ところでさあ、お前ら、こんな香り

ばっかのところにいて、よく気持ち悪く

ならないな」

「当たり前でしょ。ケーキ屋だもの」

「食べるのも作るのも大好きですから」

 エトワールが口元をひきつらせた時、

コンコンと戸を叩く音が響いて、

全員の顔が引き締まった。

 戸の前にいたのは、白い髪を

二つに結って星の髪飾りを

つけた少女だったーー。


次回はメリッサとスピカの

対決シーンを設けています。

殴りあったりはしませんが。

次回もよろしくお願いします。

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