表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女と使い魔のバタバタな日々  作者: ルナ
愛を告げる魔女
14/39

使い魔は協力者を得る

 アルト=ハルメリアは、ケーキ作りを手伝っていた。

手元など一度も見ていないのに、ちゃんとそれらしい

ものができているのは、才能だろう。

 アルトは何も考えたくない一心で料理をしていた。

考えたら泣きたくなる。もう、恥も外聞も捨てて

泣きわめくのは嫌だった。

 とーー。

「アルト、もうそのくらいでいいんじゃないの?」

 『占いカフェ・カッサンドラ』の店主、

メリッサ=ウォーカーの冷たい声が飛んだ。

「え!?」

「チョコケーキばかりそんなにいらない」

「あ、ご、ごめんなさい!!」

 アルトは赤くなって下を向いた。アルトが作っていたのは、

すべてがチョコレートケーキだったのである。

 これでは、誰の事を考えているのかバレバレだった。

 チョコレートは、スピカの好物だった。

「はっきり言って迷惑なんだけど」

 厳しく言われ、さらにアルトは落ち込んだ。けれど、

いいよいいよ、と言われるよりはいたたまれなくない。

「一度帰りなよ。ごちゃごちゃ悩むから、こんなことに

なってるんでしょう?」

「嫌です!! 帰りたくない!!」

「いつまでも、ここにいる訳にはいかないんだよ!!」

 正論を言われ、アルトは黙りこんだ。

彼女に迷惑をかけているのは事実であり、わがままを

言っているのは、自分の方だった。

メリッサは間違っていない。

「逃げてばかりじゃ、何も変わらないよ!!」

「っうううううっ!!」

 その時、客が来たのでメリッサはすぐに出て行ってしまった。

「あら、あんた、久しぶりじゃない!! うちの子はいないの?」

 弾んだような声が聞こえて来て、アルトは首をかしげた。

 親しそうな口調は、よほど近しいものだと思わせる。

「あんたにも紹介したい人がいるのよ、さ、入ってちょうだい。

ほら、イリオスも早く!! あ、いらっしゃいませ、レティ様」

 レティ様!? イリオス!? アルトはギョッとなり、慌てて隠れようとしたが、

時すでに遅し、だった。メリッサはすでに扉を開けている。

 笑顔を浮かべているエトワール・クロウ・リルアラと、俺はいいです、

と彼に手を引かれて抵抗をしているイリオスと、きらきらと目を輝かせた

レティーシャ・エルト・モランが入ってきた。

 アルトとエトワールの目が合い、あっ、と二人の声がかぶる。

「なんであなたがここにいるんですか!?」

「それはこっちのセリフだ!! 何でメリッサの店にお前がいるんだよっ!!」

「あんたたち、知り合いなの?」

 きょとん、としたようにメリッサが聞いてきた。二人が知り合いだと知らなかった

らしい。レティがしたり顔で、説明を始めた。

「あのね、エトワールはスピカが好きなんだよ!! 

そしてね、アルトとはこいのライバルなの!!」

「れ、レティ様!!」

 慌ててエトワールが叫んだ。彼女は意味が分かっているのか、いないのか、

くりくりとした目をパチパチさせていた。

「ふう~ん、あんた好きな人いたのね」

「う、うるせえな、余計なお世話だ!!」

「あら、かわいくないこと!! あんただって私の息子みたいなものなのに」

 その時、エトワールの顔が一瞬だけ悲しみを染まったのを、アルトは見た。

イリオスがとがった声で彼女に言う。

「母さん、用ってなんですか、私は忙しいんですが」

「か、母さん!?」

 アルトがびっくりして聞き返し、イリオスに冷たい目で睨まれた。

かなりの違和感があったのだ。イリオスとメリッサは、そう変わらない

年に見えた。年は聞いていないので、本当のところは分からないが。

「本当の母ではありませんよ。父が再婚したんです」

「そうなんですか、すみません」

 ちょっと来い、とエトワールに引っ張られ、アルトは別室に連れ込まれた。

何度も来ているらしく、彼は勝手知ったる他人の家、といった感じだった。

「あんまり、あいつにメリッサの話させるなよ」

「どうしてですか?」

「あいつは、元々メリッサが好きだったんだよ。俺もだけどさ」

「結婚する前、ですよね」

「そうだ。だから、あいつはここにいつかないんだよ。俺は

いつでも来てるけどな」

「……そうですか」

 うつむいたアルトに、エトワールはここからが本題だ、と言った。

「お前、スピカが好きなんだろ?」

「な、なななななんで知ってるんですか?」

「落ちつけよ。お前の態度見りゃ、誰でもわかるっての」

「それがどうしたんですか」

 アルトはひどい暴行をされたことを思い出し、臨戦態勢を取った。

苦笑しながらエトワールは言葉を返す。

「協力してやろうって言ってんだ、ひとまず座れ」

「協力!? あなたが!?」

「ああ」

「それで、あなたにメリットがあるんですか?」

 すっかり警戒しているアルトに、さらにエトワールは苦い

笑みを浮かべた。何もしないということを示すために、

少し後ろに下がる。

「メリットっていうか、俺は好きな女には幸せになってほしい

ものだからな」

「……わかりました」

 彼の悲しみが見えた気がして、アルトは彼の提案に乗ること

にしたのだった。


もうすぐ恋愛編もクライマックスです。

がんばりますので、ぜひ見てください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ