魔女は真っ白な宝物を見つける
魔女・スピカ=ルーンは、本人曰く、悪魔的な魔女である。
本当は心優しく繊細だというのは、彼女の親友、
リイラ=コルラッジだけが知っている。
スピカは急に使い魔を持ちたくなり、人身売買を行っている、
オークション会場へとやってきた。
壇上には、痩せた中年の男と、売り物らしき美しい少年がいた。
背丈は小柄で、透き通った青い瞳と、鮮やかな金髪が印象的だった。
不安そうにキョロキョロとあたりを見回し、金持ちらしき人々を見やっている。
スピカはじいっ、と少年を見た。きれいだ。見た目はもちろん、中身、魂さえも。
この子に決めた。スピカは本人曰くニヤリと、他の人曰くにこりと、笑った。
スピカは雪のような髪をツインテールにし、
宝石のごとくきれいな紅い瞳をした、
とてもかわいらしい魔女だった。
が、本人がイメージする魔女との相違のため、
彼女は悪魔的というのを多少無理にでもつらぬこうとする。
本来動物などを主流とする使い魔に、人間を選択したのもそのせいだ。
スピカがぼうっとしている間に、オークションはすでに始まっていた。
「五千ヌフが出ました! 他に入札の方はおられませんか!?」
「一万ヌフ」
まさに銀の鈴のような声がスピカの口からこぼれ出た。一瞬、会場がしん、となる。
少年がスピカの方を見た。スピカの紅い目と、少年の青い目がかちあった。
彼の顔が、助けを求めるようにスピカを見つめる。
彼女はにっこりと笑うと、彼にだけ分かるように頷いて見せた。
と、さっき五千で入札した男が二万、と言った。
スピカが五万と言い、二人の小競り合いが始まる。
最終的に、スピカが百万オンズでその少年を落札した。
ギョッとしたように、競り合っていた男が静かになる。
この世界には、お金は四種類あり、銅貨がカトル、銀貨がサンク、金貨が
ヌフで、さらに上級金貨というものがあり、それがオンズだった。
かなりの金持ちでも、そうそう持っているものではない。
これは彼女が幼いころから使わずためていた、全財産だった。
が、彼女にとって、お金にさほどの価値はない。
それよりも、本当に真っ白な清らかな魂の持主、この少年こそ、彼女には、
かなりの価値のあるものだった。そのためならば、いくらだろうと構わなかった。
見た目は綺麗でも、中身が真っ黒、もしくは少し汚れている、
という人間はかなり多い。
私は運がよかった、とスピカは思った。
ホッとしたように、少年がこちらに笑顔を向ける。
彼女は笑顔で少年に手を差し伸べ、少年は赤くなって彼女の手を取った。
なにぶん初めてなので、なにか不備がありましたら、
ぜひご忠告をお願いします。