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【完結済】伝説の「龍覚者」に覚醒した俺、大切な居場所を守るためなら手段を選ばない 〜始原の森から始まる、現代知識チートによる最強建国記〜  作者: シェルフィールド
2章:星脈の鍛冶師と亡国の姫君 〜始原の森に集う新たな絆〜

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第48話:星涙の泉

重力が崩壊した谷を越えた先、古の道の入り口に、それは静かに、しかし絶対的な存在感を放って佇んでいた。


「グルルルル……」


大地そのものが唸りを上げているかのような、低く重い振動。目の前で、地面からゆっくりとせり上がってくる巨大な影。それは、この谷に満ちる濃密なマナを、幾星霜もの時をかけて吸い続け、巨大化したクリスタルのゴーレムだった。


その体は、磨き上げられた水晶のように半透明で、内部にはまるで銀河のように無数の光の粒子が明滅している。決まった顔のパーツはない。だが、その巨体の中心部から放たれる圧倒的なプレッシャーは、これが意思を持たぬただの番人ではないことを、俺たちに雄弁に物語っていた。


「……最後の門番、ってわけか。そう簡単には通してくれねえらしいな」


カイルが、ゴードンによって補強された鋼鉄の盾を構え直し、吐き捨てるように言った。


「ええ……。これほどのマナの凝集体……。もはや、ただのゴーレムではありません。この聖域そのものが、我々を試しているかのようです」


オリヴィアも、愛用の剣を抜き放ち、その紫色の瞳に強い警戒の色を浮かべた。


俺は、剣を構えながら、冷静に敵を分析する。


(意思はない、と言ったな。だが、動きは違う。このマナの流れ……まるで、生きているかのように俺たちの動きを予測し、最適な迎撃パターンを構築しようとしている……!)


これは、知性ではなく、本能。この聖域を守るという、ただ一つの目的に特化した、古代の防衛システムそのものなのだ。


「皆、聞け!」


俺は、仲間たちの背後から指示を飛ばす。


「こいつは、ただの魔物じゃない! この空間全体が、俺たちを排除しようとしていると思え! アリシアは回復に専念! 俺とオリヴィアが魔法で牽制し、動きを鈍らせる! その隙に、カイルとイリスが懐に飛び込み、本体を叩く!」


「「「「応っ!!」」」」


四つの力強い返事が、静かな聖域に響き渡った。


「グルオオオオオオオオッ!!」


俺たちの覚悟を感じ取ったかのように、クリスタル・ゴーレムが咆哮を上げた。その巨体から、無数の水晶の破片が、弾丸のように射出される!


「させん!」


「はあっ!」


カイルとイリスが、同時に前に飛び出す! カイルの盾が、イリスの剣が、降り注ぐ水晶の雨を弾き返し、火花を散らす! 二人の鉄壁の防御がなければ、後衛の俺たちは一瞬で蜂の巣にされていただろう。


「オリヴィア!」

「ええ! 天よ、雷の檻を! 【ライトニング・ジェイル】!」


オリヴィアが詠唱と共に杖を振り下ろすと、ゴーレムの周囲に雷の柱が何本も立ち上り、その動きを封じ込める檻を形成した! ゴーレムは檻を破壊しようと暴れるが、雷の檻はしぶとくその巨体を拘束し続ける!


「ナイスだ、オリヴィア! アリシア、二人の援護を!」


「うん! 【プロテクション】!」


アリシアの光魔法が、カイルとイリスの体を包み込み、防御力をさらに高める。


「今だ! 行けっ!」


俺の号令と共に、カイルとイリスが、雷の檻の隙間を縫ってゴーレムの懐へと突撃する!

「うおおおおっ! 【シールドバッシュ】!」


カイルの盾が、ゴーレムの脚部に叩きつけられ、その巨体を大きくよろめかせる!


「そこです! 【ソニックブレード】!」


イリスの剣が、音速を超えた斬撃となって、バランスを崩したゴーレムの胴体を切り裂く!


ガキィィィィィン! という甲高い金属音と共に、ゴーレムの水晶の体に、深い亀裂が走った!


「効いてるぞ!」


手応えを感じたカイルが叫ぶ!


だが、ゴーレムは怯まなかった。亀裂の入った体から、周囲のマナを吸収し、瞬く間にその傷を修復してしまう!


「なっ……! 再生能力まであるのかよ!?」


「くっ……! これではキリがありません!」


イリスも、悔しそうに歯噛みする。


「再生の源は、おそらく内部のコアだ! それを破壊しない限り、無限に再生を続けるぞ!」


俺は魔力感知で、ゴーレムの体内でひときわ強く輝く、コアの存在を捉えていた。


「だが、あの硬い装甲をどうやって……!」


俺たちが攻めあぐねていると、ゴーレムが反撃に転じた。その巨大な両腕を天に掲げると、周囲の空間からマナを吸収し、巨大なエネルギー球を形成し始めた!


「まずい! あれを食らったら、ただじゃ済まないぞ!」


「全員、防御態勢!」


オリヴィアが叫ぶ!


だが、あれほどのエネルギーを防ぎきれるか……!?


絶望的な状況。だが、その時だった。


これまで回復と支援に徹していたアリシアが、一歩前に出た。


「……させない……!」


彼女の瞳には、恐怖を乗り越えた、強い意志の光が宿っていた。


「レン、カイルお兄ちゃん、オリヴィアさん、イリスさん! 皆が、ティアーナさんを助けるために、必死で戦ってる! 私だけ、守られてるわけにはいかない!」


彼女は弓を構えると、左手甲の龍の紋章を輝かせ、自身の最大級の魔力を矢に込め始めた。

「聖なる光よ、我が祈りに応え、邪を浄化し、仲間を守る盾となれ! 【ホーリー・フィールド】!」


アリシアから放たれた矢は、ゴーレムに向かうのではなく、俺たちの目の前の空間で炸裂し、眩いばかりの光のドームを形成した!


ゴーレムから放たれた巨大なエネルギー球が、光のドームに激突する!


ドゴオオオオオオオオオオオオオオッ!!!


天地を揺るがすほどの轟音と衝撃波! 俺たちは思わず身を伏せる!


だが、衝撃が収まった後、俺たちの体は無傷だった。アリシアが作り出した聖なる結界が、あの破壊の光を完全に防ぎきってくれたのだ!


「はぁ……はぁ……。やった……!」


アリシアは、その場に膝をつき、荒い息をついている。魔力を使い果たし、立っているのもやっとの状態だ。


「アリシア! すごいじゃないか!」


「よくやった、アリシアさん!」


仲間たちから、称賛の声が上がる。


アリシアの決死の防御が、俺たちに勝利への道筋を示してくれた。


「皆、聞いたか! アリシアが、俺たちにチャンスをくれたんだ! もう一度、総攻撃を仕掛ける! 今度こそ、コアを破壊するぞ!」


俺の言葉に、仲間たちが力強く頷く。


カイルとイリスが再び前に出て、ゴーレムの注意を引きつける。オリヴィアが雷の魔法で動きを封じ、アリシアが最後の力を振り絞って、光の矢でゴーレムの再生を阻害する。

そして、俺は剣を構え、龍の力を解放した。


「喰らええええええっ!! 【龍牙炎滅】!!」


俺の剣から放たれた、龍の顎を模した灼熱の奔流が、クリスタル・ゴーレムの胸部を直撃した!


再生を阻害され、仲間たちによって動きを封じられたゴーレムは、もはや避けることも、防ぐこともできない。


パリン……! という澄んだ音と共に、内部のコアが砕け散るのが見えた。

そして、クリスタル・ゴーレムは、その巨体を維持できなくなり、光の粒子となって静かに消滅していった。


後に残されたのは、静寂と、疲労困憊でその場にへたり込む俺たち五人の姿だけだった。


俺たちは、互いの顔を見合わせ、静かに、しかし確かな勝利の喜びを分かち合った。

最後の試練は、終わったのだ。



◇◇◇



聖域の守護者を打ち破り、俺たちの目の前には、ついに目的地である『星涙の泉』と思われる場所が姿を現した。


それは、周りを大きな岩に覆われた、静かに水を湛える湖だった。天井の巨大な水晶の結晶から、星の光のような柔らかな光が降り注ぎ、湖面をキラキラと照らし出している。水は、信じられないほどに澄み渡り、そこからは清浄で、優しいマナが満ち溢れていた。


「……これが……星涙の泉……」


オリヴィアが、うっとりと呟く。


「綺麗……。まるで、天の川が地上に降りてきたみたい……」


アリシアも、その幻想的な光景に言葉を失っている。


俺は、この聖なる場所の空気を吸い込みながら、すぐに気持ちを切り替えた。


「よし、俺は転移の準備に入る。皆は、周囲の警戒を頼む」


俺は、泉のほとりに座り込み、精神を集中させ村へと転移魔法で飛んだ。村で眠るティアーナを迎えに行くために。



◇◇◇



数分後。俺は村から転移魔法でティアーナを連れ戻ってきた。

静かに眠るティアーナと、彼女を心配そうに見守る老エルフのリオンの姿があった。


「おお……! ここが……星涙の泉……!」


リオンが、感涙にむせぶ。


「レン殿……! よくぞ……!」


だが、感傷に浸っている時間はない。


「リオン殿、すぐにティアーナを泉の水に運びます!」


俺の言葉に、リオンが頷き、俺はティアーナの体をゆっくりと泉の浅瀬へと運んでいく。

そして彼女の体が、聖なる水に浸された。


だが、それだけでは、彼女の耳に浮かんだ黒い紋様が消える気配はない。


「なぜじゃ……!? 泉の力をもってしても、癒せぬと申すのか!?いや、これは、ティアーナの魂と霊気の繋がりが弱りすぎていて、力が届いていない…」


リオンが絶望の声を上げる。


俺は、泉にティアーナと浸かりながら、ティアーナの手を握った。リオン殿の言葉を聞き、俺は、覚悟を決めた。


「リオン殿、少し離れていてください」


俺は、静かに、しかし有無を言わせぬ響きで言った。


「泉の聖なる力……。俺の中で調和させ、ティアーナに流し込む。それしか、彼女を救う方法はない」


俺は、ティアーナの手を包み込むように握りしめ、目を閉じた。


そして、自らの中に泉に満ちる聖なる力を、慎重に、自分の中へと引き込み始めた。


俺の脳裏に、仲間たちの笑顔が浮かぶ。そして……ティアーナの知的な輝きと、時折見せる無邪気な笑顔。


その全てが、俺の力となる!


俺の中に流れ込んできた泉の力が、徐々に、しかし確実に、一つの穏やかで、温かい流れへと融合していく。それは、破壊でも再生でもない、全てを包み込み、調和させる、新たな力の奔流だった。


俺は、その調和の力を、握りしめたティアーナの手を通じて、彼女の魂へと、ゆっくりと、そして優しく注ぎ込んでいった。


温かい光が、ティアーナの体を包み込む。彼女の耳に浮かんでいた黒い紋様が、光に溶けるように、ゆっくりと消えていく。失われた生命力が、霊気との繋がりが、再び彼女の魂に満ちていくのが、手に取るように分かった。


やがて、光が収まった時。


ティアーナは、ゆっくりと、その長い睫毛を震わせ、静かに目を開けた。


その深い青色の瞳が、最初に映したのは、自分の手を固く握りしめ、汗だくで、しかし安堵の表情を浮かべている、俺の姿だった。


「……レン……さん……?」


か細い、しかし確かな声。


その声を聞いた瞬間、俺の体から全ての力が抜け、彼女の上に倒れ込むように、意識を失った。


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