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転生龍覚者と導きの紋章 〜始原の森から始まる英雄譚〜  作者: シェルフィールド
2章:星脈の鍛冶師と亡国の姫君 〜始原の森に集う新たな絆〜

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第43話:激流の果ての誓いと星涙の囁き

第42話:激流の果ての誓いと星涙の囁き


月長石の淡い光が揺らめく洞窟の奥は、まるで世界の深淵へと誘うかのように、暗く、そして静かに続いていた。俺たちエルム村山岳調査隊――レン、カイル、アリシア、ティアーナ、そしてゴードンさんは、未知なる鉱脈への期待を胸に、一歩一歩、慎重に足を進めていた。


「この洞窟、予想以上に奥が深いですね。レンさん、【鉱脈探査結晶】の反応が、さらに強くなっています」


ティアーナが、手に持つ水晶の輝きを確かめながら俺に報告する。その表情には、学究的な好奇心と、微かな緊張が浮かんでいた。


「ああ、そうだな。これだけの規模なら、何かいい鉱石が見つかるかもしれない」


俺は周囲の岩壁に注意を払いながら答えた。空気は次第に湿り気を増し、どこからか微かに、しかし絶え間なく続く水の流れるような音が、俺たちの耳に届き始めていた。


「レン、この音……大きくなってきているような気がするよ」


アリシアが、少し不安げな表情で俺の隣に寄り添うようにして言った。彼女の繊細な感覚は、俺たちの中でも特に優れている。


ゴードンさんは、ドワーフならではの鋭敏な感覚で、岩盤の感触や空気の流れを確かめている。


「うむ。この湿気と風の流れ……そして、この地鳴りのような微振動。おそらく、この先に大規模な地下水脈、あるいは滝のようなものがあるやもしれん。皆、足元にはくれぐれも注意するんじゃぞ。この道の隣も崖になっておるしの。」


「はい!」


とカイルが力強く返事をする。


「はい、分かってます。アリシア、俺からあまり離れるなよ。ティアーナも、何か異変を感じたらすぐに知らせてくれ」

と俺も声をかける。


一行は、より一層警戒を強めながら、ぬかるみ始めた岩場へと足を踏み入れた。その時だった。


アリシアが、新たな通路の先を覗き込もうと、少し突き出た岩に足をかけた瞬間、その岩盤が予期せぬ音を立てて大きく傾いだ。


「きゃああああっ!?」


アリシアは咄嗟に体勢を立て直そうとしたが、足元の不安定さは想像以上だった。彼女の体は抗いようもなく裂け目の方へと引きずられていく。


「「「アリシア(さん)っ!」」」


皆が、同時に声を上げた。


俺は、ほとんど反射的にアリシアの手を掴もうと手を伸ばす。その力が、彼女の細い腕をしっかりと捉えた。しかし、それが俺の運命をも変えてしまう。


「レン、危ない!」


カイルが叫んだが、遅かった。俺はアリシアの体を支えようと踏ん張るが、俺の体重と崩れる足場の勢いは、彼女の華奢な体だけでなく、俺自身の体をも簡単に巻き込んでしまう。彼女が俺の手を掴んだ瞬間、俺自身の足元もまた、もろくも崩れ落ちたのだ。


「うわあっ!」


「レンっ!」


俺は、落下する覚悟を決め、そしてアリシアと落下しながら、アリシアを離さぬように強く抱きしめた。


「レンさん! アリシアさん!」


ティアーナの悲痛な叫びと、カイルの「くそっ!」という怒声、そしてゴードンさんの「いかん!」という焦りの声が、まるで遠くから聞こえるように俺の耳に届いた。


次の瞬間、俺とアリシアの体は、なすすべもなく暗い裂け目へと吸い込まれていった。落下する間際のほんの一瞬、俺はアリシアの恐怖に歪んだ顔と、俺の手を必死に握りしめる彼女の力の強さを感じていた。


そして、裂け目の底から響き渡る、轟々という激しく荒れ狂う水流の音。それが、俺たちの意識を飲み込む最後の音となった。



◇◇◇



「レンさんッ! アリシアさんッ!」


ティアーナの絶叫が、洞窟内に木霊した。目の前で、リーダーと、大切な友人が、一瞬にして奈落へと消えてしまったのだ。


カイルは、崩れ落ちた裂け目の縁に駆け寄り、怒りと絶望に顔を歪ませながら、暗い底を睨みつけた。


「レン! アリシア! 返事をしろ! 聞こえるか!」


だが、彼の声は、地下から響き渡る激しい水音に虚しくかき消されるだけだった。


ゴードンさんは、厳しい顔つきで裂け目の周囲を調べていたが、やがて重々しく首を振った。


「……ダメじゃ。この崩れ方、そして下の水流の勢い……まともに落ちれば、ただでは済まん。それに、この深さでは、我々がすぐに助けに行くことも困難じゃ」


その言葉は、非情な現実を三人に突きつけた。


「そんな……嘘よ……レンさんが……アリシアさんが……」


ティアーナの肩が、小刻みに震える。いつも冷静沈着な彼女が、これほど取り乱すのは初めてのことだった。彼女にとって、レンはただのリーダーではない。特別な感情にティアーナ自身も自覚し始めていた相手なのだ。そしてアリシアは、かけがえのない親友だった。


「諦めるな、ティアーナ! レンとアリシアが、こんなところで簡単にくたばるタマかよ!それにレンがいる。生きてりゃ、レンの転移魔法で帰還できるはずだ。」


カイルが、ティアーナの肩を掴んで叫んだ。その声は怒鳴るように大きかったが、彼自身の動揺と恐怖を隠しきれていない。


「カイルの言う通りじゃ」


ゴードンさんが静かに、しかし力強く言った。


「あの二人のことじゃ。そう簡単には諦めんはず。我々がすべきことは、ただ一つ。二人を捜し出し、合流することじゃ!」


ゴードンさんの言葉に、カイルとティアーナはハッとしたように顔を上げた。そうだ、絶望している暇などない。


「ゴードンさんの言う通りだ……俺がしっかりしねえと……!」


カイルは拳を握りしめる。


「ティアーナ、お前の【魔力感知】で、二人が流された方向が分からないか? ゴードンさん、この裂け目の下に降りる方法はあるか?」


カイルの言葉に、ティアーナも決意を新たにしたように頷いた。


「はい! やってみます! レンさんの莫大な魔力を辿れば……!」


ティアーナは瞳を閉じ、全神経を集中させて魔力を練り上げる。彼女の持つ魔力感知の魔法が、今は仲間の生命を探すための道標となろうとしていた。


ゴードンさんも、周囲の岩壁を調べ、ロープをかけられそうな場所や、比較的安全に降りられるルートを探し始めた。


「この裂け目はかなり深いが、幸い、途中にいくつか足場になりそうな岩棚がある。儂の道具とカイルの力があれば、降りることは可能じゃろう。問題は、その先の地下水脈じゃが……」


残された三人の救出作戦が、静かに始まろうとしていた。



◇◇◇



一方、激流に飲み込まれた俺とアリシアは、もはや自分たちがどこにいるのかも分からないまま、ただただ水の力に翻弄されていた。


「……ん……う……」


最初に意識を取り戻したのは、俺だった。全身を打つ激しい痛みと、肺に入り込んだ水を吐き出す苦しさで、すぐには状況を把握できなかった。


かろうじて顔を水面に出し、周囲を見回すと、そこは真っ暗な地下水路のようだった。唯一の救いは、流れが先程よりはいくらか緩やかになっていることと、すぐ近くの岩壁に、かろうじてしがみつける程度の突起があったことだ。


「アリシア! アリシア、しっかりしろ!」


俺は、腕の中にぐったりとしているアリシアの体を抱きしめながら叫んだ。彼女の顔は蒼白で、呼吸も浅い。


(まずい、このままでは……!)


俺は必死に岸を探した。幸い、数メートル先に、わずかな砂地が見えた。最後の力を振り絞り、アリシアを抱えたまま、その砂地へと泳ぎ着いた。


「ゲホッ、ゴホッ……アリシア! 目を覚ますんだ!」


砂浜にアリシアを横たえ、必死に呼びかける。彼女の体を温めようと、自分の体で覆いかぶさるようにした。


「……レン……?」


しばらくして、アリシアがうっすらと目を開けた。その瞳は虚ろで、焦点が合っていない。


「アリシア! 良かった……気がついたか!」


俺は、心の底から安堵した。


「ここは……? 私たち……助かったの……?」


アリシアは、か細い声で尋ねる。


「ああ、なんとか……な。地下水脈に流されたみたいだ。見ての通り、ずぶ濡れで、かなりの距離を流されちまったが……」


俺は苦笑いを浮かべながら周囲を見回した。


「レン……私……怖かった……もう、ダメかと……」


アリシアの瞳から、大粒の涙が溢れ出した。


「ああ、俺もだ。アリシアまで巻き込んじまって……本当にすまなかった」


俺は、彼女の背中を優しく撫でながら、心から詫びた。


しばらくの間、アリシアは泣き続けた。俺は、何も言わず、ただ彼女を抱きしめていた。この暗く冷たい洞窟の中で、お互いの温もりだけが頼りだった。


やがて、彼女は、顔を上げ、涙に濡れた瞳でじっと俺を見つめた。


「レン……」


「なんだ、アリシア?」


「私……ずっと……ずっと、レンのことが……好きでした」


その言葉は、まるで囁くように小さかったが、俺の心にはっきりと届いた。

俺は、息をのんだ。アリシアが俺に好意を寄せてくれていることには、薄々気づいていた。だが、これほどはっきりと、そして切羽詰まった状況で告げられるとは思っていなかった。


「アリシア……」


「ゴブリンを一緒に倒した時から……ううん、もっと前から……レンが、初めて森で私を助けてくれた時から……ずっと、私の心の中には、レンがいたよ」


アリシアは、頬を赤らめながらも、真っ直ぐに俺の目を見て続ける。


「レンは、いつも強くて、優しくて……みんなを導いてくれて……。私、そんなレンの隣にいるだけで、幸せだったんだ。でも……もし、このまま死んじゃうなら……この気持ちだけは、伝えたかった……」


彼女の声は、震えていた。それは、恐怖からではなく、長年秘めてきた想いを打ち明ける純粋な感情の表れだった。


俺は、アリシアの言葉を、一つ一つ噛みしめるように聞いていた。

こんな極限状況で、命からがら助かった直後に、彼女は勇気を振り絞って想いを伝えてくれたのだ。その健気さと、純粋な愛情に、俺の胸は締め付けられるように熱くなった。


「アリシア……ありがとう。そんな風に思っていてくれたなんて……俺は……」


俺は、言葉を選びながら、ゆっくりと口を開いた。


「俺も……アリシアのことが、大切だ。初めて会った時から、アリシアの優しさ、強さ、そして何よりも、その笑顔に、何度も救われてきた。お前が隣にいてくれるだけで、俺はどんな困難も乗り越えられる気がするんだ」


俺の言葉に、アリシアの瞳が、驚きと喜で見開かれる。


「レン……それって……」


「ああ。俺も、アリシアのことが好きだ。仲間としてだけじゃない。一人の女性として、お前を愛おしく思っている」


俺は、彼女の濡れた頬にそっと手を添え、真っ直ぐにその瞳を見つめて言った。


「……ほんと……? 夢じゃ……ない……?」


アリシアの瞳から、再び涙が溢れ出す。だが、それは先程までの恐怖や悲しみの涙ではなく、喜びと安堵の涙だった。


「ああ、夢じゃない」


俺は、そっと彼女を抱き寄せた。アリシアも、力強く俺の背中に腕を回す。

暗く冷たい洞窟の中で、二つの心は確かに重なり合い、温かい光を放ち始めたようだった。


しばらくの間、俺たちは言葉もなく抱きしめ合っていた。どれほどの時間が過ぎたのか分からない。ただ、お互いの存在を確かめ合うように。


やがて、アリシアが少しだけ体を離し、何かを思い詰めたような表情で俺を見上げた。


「レン……あの……お願いがあるの」


「なんだ? 俺にできることならいいが。」


「ティアーナさんのことなんだけど……」


アリシアの口から、意外な名前が出た。


「ティアーナさんも……きっと、レンのことを、私と同じように……大切に想っていると思うんだ」


「え……ティアーナが……?」


俺は、少し驚いた。ティアーナは、いつも冷静で、あまり感情を表に出さないタイプだ。確かに、俺に対して特別な信頼を寄せてくれているのは感じていたが、それが恋愛感情だとは、正直なところ、あまり深く考えていなかった。


「うん……。ティアーナさんは、あまり口には出さないけど……レンのこと、本当に尊敬していて……そして、きっと……恋い慕っていると思う。私、ティアーナさんとは親友だから……なんとなく、分かるんだ」


アリシアは、少し寂しそうな、それでいて優しい笑顔を浮かべて続ける。


「だから……レン。もし……もし、レンがティアーナさんの気持ちにも応えられるのなら……ティアーナさんのことも、ちゃんと見てあげてほしいの。私だけじゃなくて……ティアーナさんも、レンに幸せにしてもらえたら……それが、私の……ううん、私たちの願い」


アリシアの言葉に、俺は戸惑いを隠せなかった。アリシアの想いに応えたばかりのこの状況で、ティアーナのことも考えろと言うのか? それは、あまりにも……。


「アリシア……お前は、それでいいのか……?」


「うん!」


アリシアは、はっきりと頷いた。


「レンが、私たち二人を大切に想ってくれるなら……私は、それだけで幸せだよ。ティアーナさんも、きっと同じ気持ちだと思う。私たちは、レンが苦しむ姿を見るのが、一番辛いから」


その言葉には、アリシアの深い優しさと、ティアーナへの友情、そして何よりも俺への深い愛情が込められているように感じられた。


俺は、すぐには返事ができなかった。アリシアの想い、そしてティアーナの想い。そのどちらも、俺にとってはかけがえのないものだ。どうすれば、皆が幸せになれるのだろうか……。


「……アリシアの気持ちは、分かった。ティアーナのことも……俺なりに、ちゃんと考えてみる。だが、今は……まず、ここから脱出して、カイルたちと合流することが先決だ」


俺は、そう言って、アリシアの肩を優しく抱いた。


「そうだね……! ごめんなさい、レン。こんな時に、私ったら……」


「いや、いいんだ。伝えてくれて、ありがとう」


俺たちは、お互いに微笑み合った。この絶望的な状況の中で、俺たちの間には、新たな、そしてより深い絆が生まれたのを感じていた。


「よし、少し休んだら、周囲を探索してみよう。ここがどこなのか、そして、何か脱出の手がかりがないか……」


俺は立ち上がり、アリシアに手を差し伸べた。アリシアも、力強く俺の手を握り返す。


そして、俺たちが周囲を見回した瞬間、言葉を失った。


そこは、先程までいた薄暗い場所とはまるで別世界の、幻想的な光に満ちた巨大な地下空洞だったのだ。


洞窟の壁一面、そして遥か高い天井までもが、まるで夜空に散りばめられた無数の星々のように、青白い光や、七色に輝く光を放つ鉱石で埋め尽くされていた。その輝きは、洞窟全体を神秘的な光で満たし、まるで神々の住まう聖域に迷い込んだかのようだった。


「こ……これは……!」


「なんて……綺麗……!」


俺とアリシアは、目の前に広がるあまりにも美しい光景に、ただただ圧倒されていた。

ゴードンさんが追い求めていた「星脈鋼」が、伝説の鉱床が、今、俺たちの目の前に広がっていたのだ。


それは、まるで俺たちの新たな誓いを祝福するかのような、奇跡的な光景だった。



◇◇◇



一方、カイル、ティアーナ、ゴードンの三人は、レンとアリシアを追って、困難な救助活動を続けていた。


ゴードンさんが用意したロープを使い、カイルが先陣を切って裂け目の下へと降りていく。ティアーナは、魔力で周囲の状況を感知し、安全なルートを指示する。


「カイルさん、その先の岩棚、比較的安定しています! そこを中継地点に!」


「おう、分かった! ティアーナ、ゴードンさんも気を付けて降りてこいよ!」


カイルの力強い声が、暗い裂け目に響く。


数時間に及ぶ困難な降下と、その後の地下水路沿いの危険な探索の末、ティアーナの【魔力感知】が、ついにレンとアリシアの魔力反応を捉えた。


「この先です! 間違いありません! レンさんとアリシアさんの魔力です!」

ティアーナの声が、喜びと安堵で震える。


三人は、最後の力を振り絞り、岩壁の向こうから漏れ聞こえてくる話し声と、そして、信じられないほど強く美しい魔力の輝きが満ちる場所へとたどり着いた。


「レン! アリシア!」


カイルが、岩陰から飛び出すようにして叫んだ。

そこにいたのは、ずぶ濡れになりながらも、互いに寄り添い、そして目の前の幻想的な光景に目を見開いているレンとアリシアの姿だった。


「カイル! ティアーナ! ゴードンさんも!」


レンが、俺たちの姿に気づき、驚きと喜びの表情を浮かべる。アリシアも、涙を浮かべながら駆け寄ってきた。


「みんな……! よかった……無事だったのね!」


「アリシアさんこそ! 本当に……心配しました!」


ティアーナが、アリシアの手を強く握りしめる。その目にも、安堵の涙が光っていた。


「レン、本当に無茶しやがって……。けど、アリシアと生きててくれて、本当に良かったぜ……!」


カイルは、ぶっきらぼうな口調ながらも、その声からは喜びと安心が伝わってきた。

ゴードンさんも、厳しい表情を崩し、深く頷いている。


「うむ。二人とも、よくぞ無事でおったの……。」


危険を乗り越えての再会に、俺たちはしばし言葉もなく、お互いの無事を喜び合った。

そして、カイルたちもまた、俺とアリシアが見ていたのと同じ、信じられないほどの美しさを誇る「星脈鋼」の光景を目の当たりにし、言葉を失った。


「こ、これが……ゴードンさんが言っていた『星脈鋼』の鉱床……なのか……?」

カイルが、呆然と呟く。


ゴードンさんは、ドワーフの本能が騒ぐのか、既にいくつかの鉱石に近づき、食い入るように観察を始めていた。


「おお……! この輝き、この魔力……! 間違いなく、言い伝えにある最上質の『星脈鋼』じゃろう! それに、こちらの赤い石は……なんと強力な『炎魔石』! そして、この黄金色の金属は……んー、何時間でもここに居れそうだわい!」


ゴードンさんの興奮した声が、洞窟に響き渡った。


俺とアリシアは顔を見合わせ、小さく微笑んだ。俺たちの間に生まれた新しい絆を、まるでこの奇跡の洞窟が祝福してくれているかのようだった。


ティアーナとゴードンさんが中心となり、鉱石のサンプルをいくつか採集することになった。今回はあくまで調査とサンプル確保に留めるべきだと、全員の意見が一致した。

そして採掘された星脈鋼やその他の希少鉱石は、それ自体が強力な魔力を放ち、手に持つだけで力がみなぎってくるかのようだった。


そしてカイルが鉱石を運びながら、


「よし、これだけあれば十分だろう。そういえばレン転移魔法で思い出したんだが、前に練習してた移動しながら転移魔法を使うのができれば、アリシアとの落下も回避できたんじゃねえか?」


「いや、まだ移動というか..落下しながら転移魔法の発動は難しいんだ。前にもカイルと検討した通り、練習中だ。静止状態からの転移であれば簡単なんだが..」


「じゃあ、しゃあねえな!次は頼むぜ!」


「いや、移動中の転移は、そもそも出来るかどうかもわからんのだが..そのうちな。」


「お兄ちゃん無理いわないの!レンが助けてくれたんだから!」


アリシアが助け船を出してくれる。


「あと、ここの座標はわかったから、次は転移でここまで来れるぞ。それじゃあエルム村に帰るか!」


その言葉に、カイル、ティアーナ、ゴードンさんは、安心した表情を浮かべた。


皆を1カ所に集め、俺は精神を集中させ、エルム村の座標を思い浮かべる。そして、アリシアの手を強く握りしめた。


「皆、しっかりと捕まってくれ! 行くぞ、【転移】!」


俺は、転移しながら俺の隣で優しく微笑むアリシアの顔を見ながら、心の中で静かに誓った。


エルム村そして大切な仲間たちを、必ず守り抜いてみせる、と。そして、アリシアが示してくれた、ティアーナへの想いという新たな課題にも、誠実に向き合っていこう、と。


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