表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】伝説の「龍覚者」に覚醒した俺、大切な居場所を守るためなら手段を選ばない 〜始原の森から始まる、現代知識チートによる最強建国記〜  作者: シェルフィールド
4章:帝国大侵攻と龍覚者の反撃 〜裁かれる罪、王女の決断〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

131/186

第131話:アグリ・ヴィータ防衛戦(前編) - 死の行軍と忍び寄る影

生産都市『アグリ・ヴィータ』。


白く濃い霧が、見渡す限りの農地と水路を包み込んでいた。


普段なら、農作業の準備をする人々の活気で満ちる時間だ。


だが今、都市は異常な静寂に支配されている。


防衛指揮所。


司令官席についたアリシアと、補佐のオリヴィア、そして護衛のバルトロメオは、息を潜めて外の様子を窺っていた。


「……変だよ」


アリシアが、不安げに眉を寄せる。


「モニターの反応は、もう目と鼻の先なのに。 行軍の音が、全く聞こえないなんて」


彼女の目の前にある魔導地図には、おびただしい数の赤い光点――敵軍の反応が表示されている。


その数、推定一万以上。


(不気味です……)


オリヴィアもまた、扇子を握る手に汗を滲ませていた。


これだけの大軍なら、地響きや土煙があってしかるべきだ。


なのに、霧の向こうからは、鳥の声一つ聞こえてこない。


まるで、幽霊の軍勢が迫っているかのような静けさだった。


その時。


ブォン、とアリシアの耳元のイヤーカフ――『遠話の魔石』が激しく明滅した。


『――アリシア! オリヴィア! 聞こえるか!』


飛び込んできたのは、首都にいるレンの切迫した声だった。


「レン!?」


『警戒レベルを最大に引き上げろ! 今しがた解析班がデータを特定した!』


レンの声には、珍しく焦燥が含まれていた。


広域監視結界杭ボーダー・センサーが、君たちの方面へ向かう大軍を捉えた。 だが、その反応がおかしい!』


「おかしいって、どういうこと?」


『……「生体反応」がないんだ』


「え……?」


アリシアとオリヴィアが顔を見合わせる。


『マッピングには無数の魔力反応がある。質量もある。 だが……心臓の鼓動も、体温も感知できない。 それは、「生き物」じゃない!』


背筋に、冷たいものが走る。


生き物ではない軍勢。


それが、一万も。


(まさか……)


オリヴィアの脳裏に、古い文献で読んだ禁忌の魔術がよぎる。


その直後だった。


「ひぃぃぃぃぃっ!?」


都市の外縁部、霧の向こうから、見張り兵の悲鳴が上がった。


「敵襲ッ!! て、敵の姿が……いや、こいつらは人間じゃねえ!!」


銅鑼の音が乱打される。


霧が、ゆらりと揺れた。


そこから姿を現したのは、ヴェルガント帝国の兵士たち。


だが、その姿は異様だった。


土気色に変色した肌。


虚ろに濁った瞳。


傷口から血を流すこともなく、ただ命令に従って前進するだけの肉人形。


「……死人兵ゾンビソルジャー


オリヴィアが、戦慄と共にその名を呟いた。


帝国が秘密裏に研究していたとされる、薬物と呪術によって死体を兵器として再利用する禁忌の軍団。


「死者を冒涜し、兵器として使うなど……! これが帝国のやり方ですか!」


オリヴィアの憤怒の声が響く。


「撃てぇっ!! 近寄らせるな!!」


前線の防衛隊長――ドラグニア出身の騎士が号令をかける。


ヒュンッ! ドシュシュシュッ!!


防壁の上から、ドラグニア兵たちがクロスボウと魔法を一斉射撃する。


矢は正確に死人兵たちの体を捉えた。


だが。


「止まらねえ……!」


矢が刺さっても、魔法で腕が吹き飛んでも、死人兵たちは表情一つ変えない。


痛みを感じない彼らは、そのまま防壁に取り付き、蟻のように群がってよじ登り始めた。


「ひるむな! 頭を潰せ! 物理的に動けなくなるまで破壊するんだ!」


エルム公国側の兵士が前線へ飛び出し、剣を振るう。


その剣技が、死人兵の首を跳ね飛ばす。


だが、敵の数はあまりにも多すぎる。


倒しても倒しても、霧の奥から次々と湧き出てくるのだ。


さらに。


「……おやおや。元気なことですね」


霧の奥から、冷ややかな声が響いた。


シュゥゥゥゥ……。


死人兵たちの足元から、紫色の煙が噴き出し始めた。


「毒霧……!?」


アリシアが叫ぶ。


それは、"影蛇"ケイロン直属の「毒使い」たちが放ったものだった。


風に乗った毒霧が、防衛線を包み込む。


「ぐあっ……! 目が……!」


「息が……できない……!」


生身のドラグニア兵たちは、呼吸を阻害され、視界を奪われ、次々と咳き込んで膝をつく。


対して、呼吸をしない死人兵たちは、毒の影響を全く受けない。


一方的な蹂躙。


「くそっ……! 負けてたまるかぁっ!」


一人のドラグニア兵が、毒に蝕まれながらも立ち上がる。


彼は、オリヴィアたちがいる指揮所の方を振り返り、叫んだ。


「ここを通すな! 姫様とアリシア様を守れぇぇ!!」


「おぉぉぉぉッ!!」


兵士たちが、死力を振り絞って死人兵に組み付く。


剣が使えなければ盾で、盾が砕ければ素手で。


泥沼の肉弾戦となっていた。



◇◇◇



混乱の極みにある戦場。


モニターに映る惨状に、アリシアは胸を痛めていた。


(ひどい……。みんな、苦しんでる……!)


だが、彼女の瞳は涙で曇ってはいなかった。彼女は、レンからこの都市を任された最高責任者だ。感情に流されず、状況を分析し、打開策を見つけなければならない。


(あの兵士たち……死んでいるのに動いている。どうして?)


アリシアは、薬草学と回復魔法の知識を総動員して、敵の正体を見極めようとしていた。


通常のアンデッドとは違う。動きが滑らかで、統率が取れている。


そして何より、彼らの体から立ち上る「気配」が、ただの死臭とは異なっていた。


(……薬の匂い。それも、すごく嫌な……命を無理やり縛り付けるような、呪いの薬の匂い)


回復魔法の使い手である彼女は、生命力マナの流れに敏感だ。


彼女には見えていた。死人兵たちの体内を巡る、ドス黒い紫色の血管のような魔力のラインが。


それは、彼らの肉体を強化し、無理やり動かしている「呪術的なドーピング」だ。


(あれは、自然の摂理に反する力。だから……)


彼女の視線が、手元の制御パネル――都市全域のスプリンクラーに繋がれたスイッチへと落ちる。


そこに装填されているのは、錬金術師エラーラと共同開発した『高濃度聖水』。


本来は、汚染された土地を浄化し、作物の病気を治すために研究していたものだ。


だが、その「浄化」の力は、不自然な魔力で構成された存在にとっては、存在そのものを否定する猛毒となる。


(死人兵たちには効く可能性が高い。それは間違いないわ。でも……)


アリシアの脳裏に、もう一つの懸念がよぎる。


敵の指揮官。四将軍の一人、“影蛇”のケイロン。


彼は人間だ。聖水は、吸血鬼やアンデッドには効くが、普通の人間にはただの水でしかないはず。


だが、そんなことを躊躇している場合ではない。


目の前で、仲間たちが倒れていく。毒に蝕まれ、死人兵に蹂躙されている。


(考えている暇なんてない……! 今すぐ、みんなを助けなきゃ!)


アリシアは、迷いを断ち切った。


敵の指揮官がどうであろうと関係ない。まずは目の前の脅威を排除し、一人でも多くの味方を救う。それが最優先だ。


アリシアの手が、制御パネルのスイッチに伸びる。


その時、アリシアの鋭敏な感覚が、指揮所のすぐ近くまで迫っている、異質で強大な気配を捉えた。


「……っ!?」


背筋が凍るような、粘り気のある冷たい気配。


喧騒と絶叫の隙間を縫って。


一つの「影」が、音もなく指揮所内部へと滑り込んでいた。


護衛の兵士たちですら、その存在に気づかない。


気づいた時には、もう遅かった。


「……美しい献身ですね」


耳元で、死神が囁いた。


「っ!?」


アリシアの手が止まる。


背筋を駆け上がる、凍りつくような悪寒。


振り返ると、そこには、いつの間にか背後の影から姿を現した、黒衣の男が立っていた。

帝国四将軍、“影蛇”のケイロン。


その手には、紫色の毒液が滴る短剣が握られている。


「ですが、無駄だ」


ケイロンは、感情のない瞳で二人を見下ろし、短剣を振り上げた。


「ここで終わらせましょう」


死の一撃が、アリシアを捉えようとしていた。

「面白かった」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後はどうなるの?」


と思ったら、


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をよろしくお願いいたします。


面白かったら☆5つ、つまらなかったら☆1つ、正直に感じた気持ちで勿論、大丈夫です!

皆さんの応援が、本当に作品を書く、モチベーションに繋がります。


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ