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【完結済】伝説の「龍覚者」に覚醒した俺、大切な居場所を守るためなら手段を選ばない 〜始原の森から始まる、現代知識チートによる最強建国記〜  作者: シェルフィールド
4章:帝国大侵攻と龍覚者の反撃 〜裁かれる罪、王女の決断〜

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第123話:死んだはずの親友と大斧の噂

首都エルムヘイム、公王執務室。


深夜の静寂が、部屋を包み込んでいた。


窓の外では、夜警の兵士たちが交わす微かな足音と、風の音が聞こえるだけだ。


俺は、机に広げられた大陸地図と睨み合っていた。

帝国の動向、各都市の防衛体制、そして未だ帰還しない斥候隊の安否。

考えるべきことは山積みだ。


傍らでは、ティアーナが魔導通信機のモニターを監視している。

彼女もまた、不眠不休で情報収集に当たってくれている。


「……静かね」


ティアーナが、ふと呟いた。

その青い瞳には、隠しきれない疲労の色が滲んでいる。


「ああ。だが、嵐の前の静けさかもしれない」


俺が答えようとした、その時だった。


ビビッ……!


通信台に置かれていた一つの『遠話の魔石』が、突如として不規則に明滅し始めた。

耳障りなノイズが、静寂を引き裂く。


「ッ!?」


ティアーナが顔色を変えて飛びつく。

彼女は素早い手つきで魔力を同調させ、ノイズの中から信号を拾い上げようとする。


「緊急通信です! この魔力波長は……東部偵察隊のリディン隊長からです!」


リディン隊長。

ゼフィラス聖王国方面の調査に向かった、ベテランの騎士だ。


「繋がるか!?」


「いえ、信号が極めて微弱です……! 音声は届きません。ただ、断続的な魔力パルスだけが……!」


ティアーナの声が震える。


「これは……救難信号(SOS)です! それも、魔力が尽きかける寸前の……!」


俺は即座に立ち上がった。

椅子の倒れる音が響く。


「座標は特定できるか?」


「はい! 微弱ですが、方角と距離は掴めます! 場所は……ゼフィラス国境付近の山岳地帯!」


「分かった」


俺はティアーナの肩に手を置いた。


「座標を俺に送ってくれ。直接行って回収する」


「レン……! でも、罠の可能性も……」


「だとしても、仲間を見捨てるわけにはいかない。それに、この信号の弱さ……一刻を争うはずだ」


俺の迷いのない言葉に、ティアーナは強く頷いた。


「……分かりました! 座標データ、転送します!」


「フィーナ!」


俺が呼ぶと、隣室で待機していたフィーナが飛び出してきた。

彼女は状況を察し、すでに覚悟を決めた目をしている。


「うん、いつでも行けるよ!」


「頼む。……急ぐぞ!」


俺たちは夜の闇へと飛び出した。



◇◇◇



飛んだ先は、猛吹雪の世界だった。


「うっ……!」


肌を切り裂くような極寒の風。

視界は真っ白に染まり、一寸先も見えない。


ゼフィラス聖王国国境の山岳地帯。

ここは、始原の森とは比べ物にならないほどの過酷な環境だ。


「レン、あっち! あっちから微かな魔力を感じる!」


竜の姿になったフィーナが、吹雪を切り裂きながら叫ぶ。

俺は彼女の背にしがみつき、魔力感知を全開にする。


(……いた!)


雪に埋もれかけた、小さな熱源。

今にも消え入りそうな、灯火のような命の輝き。


「降りるぞ、フィーナ!」


俺たちは雪原に着地した。

俺は雪をかき分け、その下に倒れている人物を抱き起こした。


「リディン隊長! しっかりしろ!」


そこには、血と泥、そして氷にまみれたリディンの姿があった。

防寒着はボロボロに裂け、腹部には深い傷を負っている。


体温は危険なほど低下していた。


「……う……ぁ……」


彼はうっすらと目を開けたが、焦点が合っていない。


だが、俺の顔を認めると、凍りついた唇をわずかに震わせた。


「……へい……か……」


「喋らなくていい! すぐに連れ帰る!」


俺はリディンを抱き上げ、フィーナに合図を送った。


ここで治療をする時間はない。


一秒でも早く、設備の整ったエルムヘイムへ戻らなければ。


俺たちは転移魔法で、死の雪山から離脱した。



◇◇◇



エルムヘイム、王城内の医務室。


「……峠は、越えました」


治療を終えたアリシアが、額の汗を拭いながら告げた。

その言葉に、部屋に詰めていた俺、セレスティーナ、そしてイリスから、安堵の息が漏れた。


ベッドに横たわるリディンは、顔色こそ悪いものの、呼吸は安定している。

エラーラが調合した特効薬と、アリシアの治癒魔法のおかげで、なんとか一命を取り留めたようだ。


「……申し訳……ありません……」


リディンが、掠れた声で呟いた。

その瞳から、悔恨の涙が流れ落ちる。


「リディン隊長、まだ無理に話さなくても……」


セレスティーナが声をかけるが、彼は首を横に振った。


「報告させて……ください……。私の……任務として……」


彼は、途切れ途切れに語り始めた。


ゼフィラス聖王国への潜入は、困難を極めたこと。

国境警備隊に見つかり、追撃を受けたこと。


そして。


「……部下たちは……私を逃がすために……囮となって……」


リディンは顔を歪め、拳をシーツに押し付けた。


「全員……戦死しました……。私一人が……おめおめと……」


重苦しい沈黙が部屋を支配する。

セレスティーナが、痛ましげに目を伏せた。


彼女にとって、彼らは長年苦楽を共にした部下たちだ。その心中は察するに余りある。


「……ですが、ただでは帰りませんでした」


リディンは、震える手で懐から一枚の羊皮紙を取り出した。

血に染まったメモだ。


「逃走中に通過した、レヴァーリア連合王国の自由都市で……ある情報を掴みました」


「情報?」


「はい。……最近、自由都市の裏社会で名を上げている、凄腕の女傭兵の噂です」


リディンは、息を整え、その名を口にした。


「戦災孤児たちを守りながら、身の丈ほどもある『大斧』を軽々と振るう女傑……。その名は……リゼット・ブラン」


その瞬間。

俺の隣に立っていたイリスが、息を呑んだ。


「……!」


その瞳が、信じられないものを見るように見開かれる。


「……リゼット……!?」


彼女の唇が震えた。


「まさか……。そんなはずは……」


「イリス、心当たりがあるのか?」


俺が尋ねると、彼女は呆然としたまま頷いた。


「……はい。彼女は……私の、騎士学校時代の同期であり……親友でした」


イリスの声が、過去の記憶を辿るように揺れる。


「王都陥落の際……私たちがオリヴィア様をお守りして脱出する時間を稼ぐために、彼女は……自ら志願して、殿しんがりを務めたのです」


燃え盛る王都。


迫りくる帝国軍の大軍。


その前に立ちはだかった、一人の騎士の背中。


「私は……彼女は死んだものと……」


「リゼット殿は、生きておられるようです」


リディンが言った。


「噂によれば、彼女は奴隷商人やマフィアから子供たちを守るために、たった一人で戦っているとか……」


死んだと思っていた親友が、生きていた。


しかも、孤児たちを守りながら、孤独に戦い続けている。


「……っ」


「イリス」


俺は彼女に声をかけた。


「会いに行こう」


「……え?」


イリスが顔を上げる。


「で、ですが……公王陛下。今は開戦直前の非常時です。私情で動くことなど……」


彼女は必死に、騎士としての理性を保とうとしていた。


公国の危機に、一人の友人を救うために戦力を割くわけにはいかない。

そう自分に言い聞かせているのが痛いほど分かった。


だが、俺は首を横に振った。


「私情じゃない。これは公王としての判断だ」


俺は、リディン、セレスティーナ、そしてイリスを見渡して言った。


「彼女……リゼット・ブランは、単独で帝国軍の追撃を生き延び、無法地帯で子供たちを守り抜くほどの実力者だ。その武勇と、『守るために戦う』という精神は、今のエルム公国にとって何よりも必要な力になってくれる可能性がある」


俺はイリスの目を真っ直ぐに見据えた。


「彼女を迎えに行くことは、公国の戦力増強に繋がる。……そうだろう?」


これは、半分は建前だ。

だが、もう半分は本心だった。


イリスの親友であり、ドラグニアの騎士。

そんな人物を、みすみす野垂れ死にさせるわけにはいかない。


何より、仲間を想っているイリスを、放っておけるはずがなかった。


「……レン様……」


イリスの瞳が揺れる。

理性と感情の狭間で、彼女は揺れ動いていた。


だが、俺の言葉が、彼女の背中を押したようだ。

彼女は騎士の顔に戻って、俺の前に跪いた。


「……ありがとうございます。そのご判断に、感謝いたします」


彼女は顔を上げ、力強い瞳で俺を見た。


「必ずや、彼女を……リゼットを連れて帰りましょう。彼女の『大斧』は、必ずや公国のお役に立てるはずです」


「ああ。期待している」


俺は頷き、セレスティーナに向き直った。


「総長。至急、救出作戦の立案を頼む。……時間はかけられない。電撃戦だ」


「御意」


セレスティーナもまた、力強く頷いた。

彼女の瞳にも、かつての部下の生存を喜ぶ光が宿っていた。


新たな仲間、そしてイリスの過去を取り戻すための戦いが、始まろうとしていた。


「面白かった」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後はどうなるの?」


と思ったら、


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をよろしくお願いいたします。


面白かったら☆5つ、つまらなかったら☆1つ、正直に感じた気持ちで勿論、大丈夫です!

皆さんの応援が、本当に作品を書く、モチベーションに繋がります。


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いいたします!

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