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CHERRY─彼女が狩人になった理由─  作者: 彩心
第二章 二学期

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第51話 誕生日

 「朝陽君、私の誕生日って知ってる?」


 音瀬が唐突にそう聞いてきた。


 「ごめん……知らない」


 俺がすまなさそうにそう言うと、音瀬は「だと思った」と笑った。


 「9月28日」


 「えっ、もうすぐじゃん!」


 「……その日、一緒に居てほしい」


 音瀬は真剣な目で俺を見つめてきた。


 「当たり前だろ。一緒に祝おう」


 俺がそう言うと、音瀬は一度視線を逸らした。


 「あの……朝まで一緒に居てほしい」


 「え?」


 それは……あれだよな……。


 あれのお誘い……だよな?


 俺の心臓がバクバクと鳴りだす。


 音瀬はほんの少しだけ、不安そうに笑った。


 「……やっぱ、ダメだよね……」


 俺が中々返事しないから、音瀬がシュンとしてしまった。

 

 あぁー、俺の馬鹿野郎!


 何、チキってるんだよ!


 「いや、ダメじゃない、ダメじゃない! 全然、大丈夫!」


 少し声がひっくり返ってしまった。


 俺、マジだせぇー。


 「本当! 嬉しい! その日一日は私が独占するから」


 ま、音瀬が喜んでるからいいか。


 それにしても、こんな事で喜んでる音瀬が可愛い。


 俺の彼女、可愛すぎやしませんか?


 そんな浮かれポンチ状態の俺は、当日までに色々準備を整えた。


 そして迎えた当日。


 繁華街の駅前で俺は音瀬を待った。


 待っている間、俺は緊張してソワソワした。


 少し待つと、改札口から音瀬が小走りでやって来た。


 「ごめん、待たせちゃった」


 「いや、全然待ってない……」


 俺はそう言いながら、いつもと雰囲気が違う音瀬にドキドキしていた。


 「今日の朝陽君、かっこいいね」


 そんな時、急に音瀬から褒められて、俺は焦った。


 俺が先に言いたかったのに。


 「音瀬だって可愛いよ」


 「雅」


 「あっ」


 「まだ慣れない? 今日は『雅』って呼ばないと返事しないから」


 ナニソレ。


 可愛い。


 あぁーダメだ。


 俺、浮かれ過ぎて馬鹿になってるかも……。


 そんな馬鹿な俺を、雅はあちこち連れ回した。


 「ここのカフェ来てみたかったんだ!」


 「映画面白かったね!」


 「ここのお店ちょっと見てもいい?」


 「朝陽君はケーキどれがいいと思う?」


 ある程度デートプランを考えていたけど、まったく意味がなかった。


 でも、ずっと雅が楽しそうなので良かった。


 雅が楽しいなら、俺も楽しい。


 俺はケーキを受け取ると、雅を探した。


 先に店の外に出ていたみたいだ。


 雅は空を見上げていた。


 「雅?」


 「あ、朝陽君」


 「……何、見てた?」


 「夕日が綺麗だなって」


 「それだけ?」


 「……今日楽しかったなって」


 「まだ今日は終わってねーよ」


 俺は雅にケーキの箱を見せる。


 「これからだろ」


 「確かにね」


 雅は笑って、俺の手を取った。


 俺はその手を握り返した。


 その後、今日は仕事で両親が居ないと言われ、2人で雅の家に行った。


 晩御飯を雅が作ってくれるというので、凄く楽しみだ。


 雅はハンバーグを作ってくれた。


 「すっごくおいしい!」


 「そう? 良かった」


 雅は俺の食べる姿を見ながら、ニコニコしている。


 その顔を見て、何だか罪悪感が湧いた。


 「雅が誕生日なのに……俺、何も出来なくて悪いな……」


 「そんな事ないよ。今日、ずっと朝陽君が居てくれるだけで、私嬉しかった」


 「俺、ほんと何もしてないんだけど……いいの?」


 「いいの」


 「そっか……」


 「……ねぇ、早くケーキ食べよ! 私、ロウソク吹き消したい!」


 「雅、ほとんど食べてないじゃん」


 「……なんだか胸がいっぱいで、今日は食べられそうにない」


 少し涙ぐんだ雅は、自分の皿を片付けるために席を立った。


 俺はその間に、ご飯を全て平らげた。


 食器を台所に運ぶと、雅は驚いていた。


 「もう食べたの?」


 「うん、だって早くケーキ食べたいんだろ?」


 「……うん」


 雅は俺から皿を受け取り、水につけると、冷蔵庫からケーキを取り出した。


 「俺がロウソクつけるから、雅はあっちで座ってて」

 

 「分かった」


 雅はそう返事をすると、元いた席に戻った。


 俺はロウソクに火をつけて、電気を消した。


 「ハッピーバースデー、トゥーユー♪」


 俺は歌いながら、雅の前まで慎重にケーキを運ぶ。


 「ハッピーバースデー、ディアミヤビー」


 ケーキを机の上に置くと、雅の顔が見えた。


 「ハッピーバースデー、トゥーユー」


 俺が歌い終わると、雅はふーっと息をかけて火を消した。


 部屋が真っ暗になり、静かになった。


 さっきまでの笑い声が嘘みたいに、音が消える。


 俺は部屋の明かりをつけた。


 そしてポケットから、用意していたプレゼントを取り出した。


 「誕生日おめでとう、雅」


 そう言って小さな箱を渡した。


 「ありがとう」


 雅は箱を受け取ると、ゆっくりと開けた。


 中に入っていたのは、小さな三日月のピアスだった。


 「……綺麗」


 小さく呟く。


 「……あの、それ……俺とお揃いなんだけど……」


 俺は勝手にお揃いにした事が、急に恥ずかしくなってきた。


 「あ、本当だ。……嬉しい」


 雅は笑って、俺を見た。


 良かった。喜んでくれて。


 俺がホッと胸を撫で下ろしていると「つけてくれる?」と雅が言った。


 「……分かった」と言うと、雅は髪を耳にかけた。


 そこには、小さなピアスの穴がいくつも並んでいた。


 「どこにつければいい?」


 「……どこでもいいよ」


 指が、雅の耳に触れた。


 ゆっくりとピアスを通す。


 カチッと、小さな音がした。


 「……こんな理由でつけたの、初めてかも」


 気付けば、顔が近かった。


 雅の呼吸が、すぐそばで揺れている。


 「……雅」


 雅は、ゆっくりと目を閉じた。


 俺はそっと、その距離を埋めた。


 触れた瞬間、雅の手が強く俺を掴んだ。


 


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