表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
CHERRY─彼女が狩人になった理由─  作者: 彩心
第二章 二学期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/52

第47話 雅side 満月の夜に

 私は家に帰って服を着替えてから、繁華街に出た。


 今は独りで居たくない。


 誰でもいい。


 誰でもいいから、誰かとつながっていたい。


 もう戻れないなら、何だっていい。


 ……どうせ死ぬんだから。


 そんな時、若い男が私に声をかけてきた。


 「お腹すいてない? どこかご飯食べに行こうよ」


 「いいよ。でも、ご飯はいらない」


 「え?」


 「ホテル行こうよ」


 「え、君、そういう感じ?」


 「お金はいらない。ただ、したいだけ……」


 男はニヤリと笑うと、私の肩を抱き寄せてきた。


 私達はそのまま近くのラブホテルに入った。


 部屋に入ってドアを閉めると、男はいきなりキスをしてきた。


 朝陽君とした時とは全然違う。


 気持ち悪い……。


 目を閉じて、何も考えないようにした。


 独りじゃなければ、今は……それでいい。


 私は男に身をゆだねた。


 ホテルを出るとまだ外は明るかった。


 さっきまで誰かと居たはずなのに、今はもう……何も残っていない。


 温もりも。


 言葉も。


 何も……。


 前までは、あったのに……。


 生きててもいいって思えたのに……。


 それが何もない。


 どうして……。


 偶々《たまたま》かもしれない。


 そういう時だってあるかもしれない……。


 私はそのまま歩き出した。


 行き先なんて決めていない。


 でも、足は勝手に動いた。


 フラフラと歩いていると、また声をかけられた。


 私はまた着いて行く。


 そんな事を何回か繰り返すと、疲れていたのか少し眠ってしまった。


 目が覚めると誰も居なかった。


 とりあえずお風呂に入ろうとベッドを出ると、机の上に5万円が置かれていた。


 お金の下のメモには『ホテル代』と書かれていた。


 「お金が欲しいわけじゃない……」


 私は机の上の5万円をぼんやりと見つめた。


 まだ、何も変わらない。


 まだ足りない?


 私はお風呂場に向かった。


 鏡の前で、ふと足が止まった。


 「ふっ、……ひっどい顔」


 ひどすぎて笑える。


 「ちゃんとしないとね……」


 私はそのままシャワーを浴びた。


 温かいはずなのに、何も感じない。


 ただ、水が流れているだけみたいだった。


 きっとまだ足りないだけ……。


 もっと回数重ねれば、この虚無感はきっとなくなるはず。


 そしたら……まだ続けられる。


 私はまた街に繰り出した。


 どれだけ繰り返しただろうか。


 もう覚えていない。


 まだ心は満たされないが、流石に疲れた。

 

 凄く眠い。


 私は一度家に帰る事にした。


 家に帰ると誰もいなかった。


 何も言われなくて丁度良かった。


 私は部屋に入るとベッドに寝転び、そのまま泥のように眠った。


 ふと目が覚めると、もう夜だった。


 真っ暗な部屋の中、ぼーっとする頭で起き上がると、テーブルの上にメモが置いてあるのが見えた。


 そのメモを手に取り、ベッドサイドの照明を付ける。


 一枚目にはママの文字。


 『凄いイケメンが鞄を届けてくれたよ。ちゃんとお礼言ってね』


 凄いイケメン……朝陽君?


 そんな……まさかね……。


 一枚目をめくり、二枚目を見る。


 朝陽君の名前とLIMEのIDが書かれていた。


 なんで……何でこんな事するの?


 彼女出来たんだから、私なんか放っておけばいいでしょ!


 なんで……。


 唯一の味方だと思ってたのに……。


 私の事が好きだって言ってたのに!


 可愛い子に告白されたら、すぐに付き合って……。


 だから男なんて信用できない。


 ……裏切り者。


 もう……どうでもいい。


 何もかも……全部どうでもいい。


 もう、疲れた……。


 私はスマホを握り締めて家を出た。


 エレベーターで最上階まで登り、すぐ横にある階段を登る。


 何度も下見に来ていたので、鍵が壊れているのは知っていた。


 私は扉を開けて屋上に出た。


 そこで見えたのは綺麗な満月だった。


 「……こんな日ならいいか」


 これで最後。


 やっと終わる……。


 その時「クシャ」と私の手の中から音がした。


 手を拡げると、あのメモも握り締めていた。


 私はスマホのアプリを開き、IDを検索した。


 友達追加をして「カシャ」と目の前に広がる満月の写真を撮って送った。


 最後ぐらいは本音を言ってもいいよね……。


 『月が綺麗ですね』


 そうメッセージを送った。


 朝陽君分かるかな?


 きっと、分かるよね……。


 そして私は朝陽君のLIMEをブロックした。


 返事なんていらない。


 見たくない。


 ……もう、分かってるから。


 私はその場にスマホを置くと、月に導かれるようにフェンスに向かって歩いた。


 まるで、逃げ場がそこにしかないみたいに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ