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CHERRY─彼女が狩人になった理由─  作者: 彩心
第二章 二学期

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第44話 遅い告白

 「え?」


 一瞬、俺の時が止まった。


 これって……あれだよな?


 有名な告白のセリフだよな?


 「えっ!?」


 ま、ま、ま、まさかな……。


 ただ本当に月が綺麗で言ってる可能性も……。


 俺はもう一度LIMEの画面を見る。


 『月が綺麗ですね』


 いや、これはもう確定だろ……。


 分かってて書いてる。


 音瀬なら『月が綺麗だよ』とか言うはずだ。


 俺の心臓がバクバクとうるさい。


 震える手で返信を打つ。


 『死んでもいいわ』────


 そこまで打って、手が止まった。


 死んでも?


 死?


 『人間いつかは死ぬよ』


 その言葉と同時に、屋上の写真がチラついた。


 ……まさか、な。


 でも、何で突然こんな事を言い出すんだ?


 今まで俺がどれだけ好きって言っても、ダメだったのに。


 これじゃ、まるで遺言のようじゃないか……。


 俺は打った文章を消して『今、どこにいる?』と送った。


 既読が中々つかない。


 しびれを切らした俺は電話をかけた。


 だが呼び出し音が鳴り続けるだけで、やがて切れた。


 俺はもう一度かける。


 結果は同じだった。


 焦りがどんどんつのっていく。


 なんで?


 なんで既読もつかないし、電話も出ないんだよ!


 告白したなら普通、返事が気になるだろ?


 今までの違和感が、一本の線に繋がった気がした。


 まさか……まさか、まさか!?


 音瀬!


 馬鹿な事考えてんじゃねーよ!


 俺はスマホを握りしめたまま、家を飛び出した。


 エレベーターを待っている間、音瀬の居場所が特定できないか写真を見返す。


 何かないか?


 焦っているからか、何も見つけられない。


 「クソッ!!」


 マンションを出ると「おい、朝陽!」と声をかけられた。


 こんな時に誰だよと思って顔を上げると、要が居た。


 「丁度良かった! 見ろ! ついにバイク買っちゃいました!」


 嬉しそうに要はバイクを俺に披露するが、今はそれどころじゃない。


 「ごめん、要。また今度話聞くよ。今急いでるんだ」


 「急いでるなら、尚更俺じゃね?」


 「は?」


 「2人乗り出来るけど?」


 そう言って、要はニヤリと笑った。


 「要……頼めるか?」


 「当たり前だろ。それに元々朝陽乗せるつもりだったし」


 要はヘルメットを俺に投げて寄越した。


 俺はキャッチすると「ありがとう」とお礼を言った。


 「で? どこに行けばいいんだ?」


 「それが、まだ特定できてなくて……」


 「は? どういう事?」


 俺は要に写真を見せた。


 「ここに行きたいんだけど、場所が分からなくて……」


 要は真剣にスマホの写真を見ると、無言でスマホを操作した。


 少しすると、要の指が止まった。


 「これ、病院じゃね?」


 「え?」


 俺はスマホを覗き込んだ。

 

 そこには『白凪しろなぎ総合病院』と書かれた建物が写っていた。


 俺はすぐにその病院を地図アプリで検索した。


 すると、音瀬の家の近くにそれはあった。


 「もしかして、マンションの屋上?」


 「朝陽、なんか分かったのかよ?」


 「あぁ、ここに向かってくれ!」


 俺は音瀬の家を目的地にして、スマホを要に渡した。


 「分かった。急いで行ってやるよ」


 要はスマホをバイクにセットすると、ヘルメットを被った。


 俺もヘルメットをしっかりとつける。


 バイクにまたがった要は、スタンドを上げると方向転換した。


 バイクからエンジンの小気味良い音が聞こえる。


 要は俺に「乗れ」と言ってきた。


 俺は後ろにまたがり、背もたれをつかんだ。


 「んじゃ、しっかり掴まってろよ!」

 

 「おう!」


 バイクは爆音を出しながら、軽快に走りだした。


 あっという間に音瀬の家のマンションに着いた。


 俺はバイクを降りると、ヘルメットを外した。


 要にヘルメットを渡すと、要も俺のスマホを渡して来た。


 「今度はちゃんと俺のバイク見ろよ」


 「分かってる。今日はありがとうな」


 「おう! また何かあったら連絡してくれ」


 「あぁ」


 俺はそう言うと、急いでマンションの入り口に向かった。


 背後では要のバイクの音が遠ざかって行く。


 デカい音だなと思いながら、音瀬の部屋番号を押した。


 呼び出し音は鳴っているが、誰も出ない。


 どうしよう……。


 これじゃ中に入れない。


 もしかしたら、間に合わないかもしれない!


 どうする、どうする、どうする!


 その時、マンションの住人が中から出て来た。


 開いた。


 今だ!


 俺は住人に軽く会釈すると、中に入った。


 エレベーターに乗り最上階を目指す。


 その間にLIMEを確認するが、まだ既読はついていなかった。


 間に合ってくれ!


 俺はそう祈りながら、エレベーターの増えていく階数をにらんでいた。


 エレベーターの扉が開いた瞬間、俺は飛び出し屋上への階段を探す。


 エレベーターの横に扉があった。


 あれだ!


 俺はすぐに扉を開けて、階段を駆け上がる。


 先の扉は開いていた。


 俺は屋上に出て辺りを見回すが、音瀬の姿はない。


 ここじゃないのか?


 そう思った時、靴にカツンと何かが当たった。


 下を見ると、スマホが落ちていた。


 俺はそれを拾い上げて、電源ボタンを押した。


 待ち受けの画像がトイプードルだった。


 俺は焦る気持ちでスマホを裏返す。


 ケースの中には、音瀬が友達と撮ったプリクラが入っていた。


 これ、音瀬のスマホじゃねーか!


 やっぱり音瀬はここに居る!


 「音瀬!」


 俺は力一杯叫んだ。


 

 


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