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CHERRY─彼女が狩人になった理由─  作者: 彩心
第二章 二学期

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第43話 もう逃げない

 放課後、俺はまた無意識に音瀬の席を見ていた。


 誰も居ないのに。


 LIMEもこないし、やっぱり無視されてるのかな……。


 そう嫌な想像をしてしまう。


 そんな時、クラスの女子が走って教室に入って来た。


 「藤真君! 彼女が校門の所で待ってたよ!」


 いらん事を大声で……。


 それを聞いたクラスの男子達が、一気に騒ぎ出した。


 「あの例の美女か!?」


 「何で藤真に……でも、今の姿なら何も言えねぇ……」


 「俺、まだ見た事ないんだよな。見に行こうぜ!」


 何やら勝手に盛り上がっているが、俺は面倒くさいとしか思わない。


 そんな事より、頭の中はずっと音瀬の事でいっぱいだった。


 「はぁーーーー」と長い溜め息を吐いていると、仲良くもない男子が肩を組んできた。


 「なぁ、彼女美人なら友達も綺麗な子居るだろ。紹介してくれね?」


 いつも音瀬達と騒いでいて、一番うるさくて目立つ奴だ。


 俺はそいつに冷たい視線を向けた。


 「彼女じゃないし。とりあえず放せよ」


 「そんな事言って独り占めする気か?」


 俺の肩を揺すって、そいつは笑いながらそんな事を言った。


 俺とはほとんど喋った事がないのに、何でこんな馴れ馴れしいんだ?


 俺が何も答えないでいると、舌打ちをされた。


 「……なんだよ、ノリ悪いな。見た目は変わっても、中身は陰キャのままかよ」


 俺から離れるとそいつは、俺を馬鹿にしたようにジェスチャーをして、仲間の所に戻って行った。


 ……これがダメなんだよな?


 馬鹿にされたまま終わったら、今までと一緒だよな?


 面倒くさいで逃げてちゃダメだ!


 変わるために髪まで切ったんだ!


 俺は勢いよく席から立ち上がった。


 さっき俺を馬鹿にした奴は、もう仲間と笑いながら話していた。


 俺はそいつの所まで歩いて行く。


 すると、周りに居た奴らが「お?」と小さく声を上げた。


 「……何?」


 俺が目の前に立つと、そいつは面倒くさそうに眉をひそめた。


 「さっきの、何?」


 俺はそいつを真っ直ぐ見て言った。


 「あ?」


 「俺、お前に何かした?」


 一瞬、周りが静かになった。


 そいつは「は?」と鼻で笑った。

 

 「俺、なんでお前に馬鹿にされなきゃいけないの?」


 「……っ」


 そいつの顔が少しだけ引きつった。


 周りの男子達が「おいおい」と笑いながら空気をうかがっている。


 「なぁ、聞いてるんだけど?」


 「別に……」


 「それだけ? ならわざわざ絡んでくるなよ。友達でもないのに、面倒くさい」


 「お前……ちょっと見た目が良くなったからって調子乗んなよ!」


 そいつは俺の胸ぐらをつかんできた。


 あぁー、言い返せないからって暴力か。


 それが今、一番の悪手なんだけどな……。


 俺は右手で掴まれている手をおさえた。


 そして、左肩を相手の腕の下にグッと入れた。


 すると相手は、左側にバランスを崩して倒れた。


 「えっ!?」


 俺は手を放し、そいつを上から見下ろした。


 「弱いくせにいきがってんじゃねーよ」


 それだけ言うと、俺はそいつから視線を外した。


 「それと」


 俺は歩き出しながら、最後に一言だけ付け足した。


 「彼女じゃねーから!」


 俺は鞄を持つと、そのまま振り返らずに廊下に出た。


 背後で「なんだよあいつ……」という声が聞こえたが、もうどうでもよかった。


 後は日坂か……。


 校舎裏の塀を登ればワンチャンいけるか?


 俺はそう考えながら、校門ではなく校舎裏に向かった。


 校舎裏の壁を目視で確認すると、いけそうだった。


 俺は鞄を肩かけから、背中に背負い直した。


 「よしっ」


 俺は走って勢いをつけ、壁を一回蹴って壁のふちに手をかけた。


 そこから壁の上に体を引き上げ、そのまま反対側へ降りた。


 辺りを確認し、誰にも見られていない事にほっとする。


 よし、これで日坂とは会わずに帰れるな。


 何言っても諦めねぇーし、正直困る。


 俺は音瀬が心配でそれ所じゃねーし。


 いい場所発見したな。


 次からここから帰る事にしよう。


 その日の夜、突然俺のスマホが鳴った。


 LIMEの通知音だったので、また湊かな? と思ってアプリを開いた。


 知らないアイコンが一番上にあった。


 「miyabi?」


 音瀬か?


 アイコンもトイプードルだし、これ絶対モコだよな?


 音瀬からやっとメッセージが来た!


 俺は急いでタップすると、一枚の画像が送られてきていた。


 どこかの屋上から撮ったのか、それは満月の写真だった。


 俺は部屋の窓を開けて空を見た。


 「今日、満月だったんだ……」


 あんまり空なんて見ないから気付かなかった。


 「久しぶりに見ると、綺麗だな……」


 そう思っていると、また通知音が鳴った。


 「あ、やべっ! 返信してなかった」


 俺は慌ててスマホを見ると、今度はメッセージが送られてきていた。


 『月が綺麗ですね』

 

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