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CHERRY─彼女が狩人になった理由─  作者: 彩心
第二章 二学期

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第42話 胸騒ぎ

 「ここか?」


 俺はマンションの前に着いた。


 アプリの目的地はここになっている。


 オートロックなので、部屋番号を入れて呼び出しボタンを押した。


 少しすると「はい」と返事があった。


 「音瀬さんと同じクラスの藤真です。鞄を届けに来ました」


 『あぁー、聞いてます。わざわざありがとうございます。今開けますね』


 音瀬のお母さんかな?


 そう思っていると、オートロックの鍵が開いた。


 俺はマンションの中に入って、エレベーターに乗り部屋を探す。


 部屋はすぐに見つかり、インターホンを鳴らした。


 中から犬の鳴き声が聞こえた。


 犬を飼っているのかな?


 扉が開くと、俺に向かってめちゃくちゃ吠えてきた。


 か、可愛いー。トイプードルだ。


 「ごめんなさいね。慣れてない人には吠えるのよ」


 困った風に家から出てきた女性はそう言った。


 その女性は音瀬を清楚にした感じで、お母さんだなと納得した。


 「いえ、可愛いので大丈夫です」


 俺がそう言うと、お母さんは嬉しそうに笑った。


 「あら、あなた犬好き?」


 「はい、好きです」


 「触ってみる?」


 「え、良いんですか?」


 お母さんはトイプーを抱き上げると「どうぞ」と言った。


 警戒されているので、トイプーに俺の匂いを先に嗅いでもらった。


 少し落ち着いてきたので、顎の辺りを撫でさせてもらう。


 フワフワで可愛いー。


 「名前は何ですか?」


 「もこもこだから『モコ』って雅がつけたのよ」


 「そうなんですか。モコは可愛いなぁー」


 俺がそう言って頭を撫でると、モコは首を傾げた。


 あー可愛い。癒される。


 俺がモコに癒されていると、お母さんは溜め息をついた。


 「先生から電話があってね、雅は早退したって言うんだけど、今家にいないのよね……鞄も放ったらかしで、どこ行ったんだか……」


 「え? 帰って来てないんですか?」


 「一度帰ってきてはいるみたい。制服はあったから。着替えて遊びに行ったんじゃないかしら……いつもの事よ」


 そう言ってお母さんは困ったように笑った。


 音瀬、家にも居ないのか……。


 あの時、後で誤解を解けばいいかと軽く考えていた事を後悔した。


 後は音瀬がメモに気づいて、連絡をくれるのを待つしかないか……。


 俺はモコから手を放し、音瀬の鞄をお母さんに渡した。


 「これ、音瀬の鞄です。モコに夢中で渡すの遅くなってすみません」


 「わざわざ持って来てくれて、ありがとう。雅にもちゃんと言っておくわね」


 「いえ……」


 俺は曖昧あいまいに笑った。


 「……ところで、藤真君って雅の彼氏?」


 「は? え? ち、違います!」


 「あら、違うの? こんなにイケメンなのに残念ねー」


 お母さんはそう言うとシュンとして、モコもそれに合わせて「クゥーン」と鳴いた。


 普通に褒められて照れた俺は、モコを見て心を落ち着かせる。


 「藤真君。また雅が居る時に遊びに来てちょうだいね」


 「はい。では、今日はこれで帰りますね」


 「今日はわざわざありがとう」


 俺がエレベーターに乗るまで、お母さんはモコの手を振ってお見送りしてくれた。


 いいなぁー、俺も犬飼いたい……。


 でも、母さんが嫌がるんだよな。


 『死んだ時に悲しくなるから、2度と動物は飼わない』と言っている。


 きっと昔に何かあったんだろう。


 飼いたかったら、自立してから自分で飼えと昔から言われている。


 あぁー、早く自立したい……。


 そんな事を考えながら、その日はそのまま家に帰った。


 音瀬から何も連絡がないまま、次の日学校へ行くと、担任が音瀬は休みだと言った。


 休み?


 昨日家に行った時、音瀬は居なかった。


 それから体調が悪くなったのか?


 なぜか俺の中で不安が募る。


 授業が始まっても、俺はほとんど話を聞いていなかった。


 黒板に書かれていく文字を見ているのに、頭には全く入ってこない。


 俺は何度も教室のドアの方を見た。


 もしかしたら、遅れて来るかもしれない。


 ……そんな事を思ってしまう。


 やっと昼休みになり、俺は人の少ない廊下に出ると大きく息を吐いた。


 スマホを確認するが、音瀬からのLIMEはない。


 気付いてないのか、無視されてるのか……。


 いや、きっと気付いてないだけだ!


 あんな外ポケットに俺が入れるから……。


 音瀬のお母さんに直接渡せば良かった。


 なんか俺、最近後悔してばっかりだな……。


 そう物思いにふけって、外を見ていると────


 「ワッ!」


 突然背中を叩かれた。


 「……なんだよ」


 俺は振り返って、驚かしてきた本人を睨みつける。


 「元気なさそうだったから、驚かしてみた!」


 そう湊は笑って答えた。


 「こんな事するのお前ぐらいだよ」


 呆れた俺は、湊を無視してまた窓の外を見た。


 窓の外を見ながら、まだ音瀬が来るんじゃないかと姿を探した。


 「なんだよ、ノリ悪いな……」


 湊は不貞腐れながら、俺の隣に来て窓の外を見た。


 「何見てんの?」


 「んー、別に……」


 「誰か探してんの?」


 「まぁ……」


 「分かった! 音瀬さんだろ」


 「……」


 「何だよ、無視かよ! って事は音瀬さんだな。どれどれ……って、連絡すれば早くね?」


 「連絡先知らない」


 「え? まだ聞いてなかったの?」


 「昨日メモは渡したけど……連絡がない」


 「あーね。だから落ち込んでるのか」


 「違う!」


 「別に教室で普通に聞けばいいじゃん」


 「今日は休み」


 「え? 休みって分かってて音瀬さん探してんの? どういう事?」


 「……どうだっていいだろ」


 「分かる分かる。好きな人の事つい探しちゃうよね。恋しちゃってんな」


 「うるさい」


 「おー怖っ。今日の朝陽君は音瀬さんが居なくてご機嫌ななめだな」


 わざと茶化して言ってくる湊に、段々イラついていく。


 元気付けようとしてるのは分かるけど、今はそれがキツい。


 「……動画について、なんか分かったのかよ」


 「まだ、なーんにも」


 「じゃあ、帰れ」


 「はいはい、分かったよ。また、なんか分かったら連絡する」


 「おぉー」


 湊は「じゃあな」と言って教室に戻って行った。


 音瀬に恋してるのは否定しない。


 でも、こんなに探してるのはそれだけじゃない。


 なんだかずっと胸騒ぎがするんだ。


 だから音瀬に会って、大丈夫だって確信がほしい。


 俺はもう一度スマホを確認する。


 何の通知もない事にまたガッカリする。


 明日は音瀬来るよな?


 そう考えていたのに、次の日も音瀬は学校に来なかった。


 

 

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