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CHERRY─彼女が狩人になった理由─  作者: 彩心
第二章 二学期

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第41話 残された鞄

 俺はあれから中庭や屋上に行ってみたが、音瀬は居なかった。


 教室に戻ったのかと思って、一度教室に帰る事にした。


 だが、そこにも音瀬はいない。


 そして、またしても囲まれる俺。


 今度は男まで居る。


 「藤真君! さっきの凄かったね!」


 「2階から飛び降りるとかカッコよすぎだろ! あれ、どうやったんだ?」


 あぁー、目立ち過ぎたのか。


 うん、限界だったとはいえ俺が悪いな。


 「いや……別に大した事じゃないって」


 適当に誤魔化しながら、俺は人の隙間から廊下の奥を見た。


 もしかしたら音瀬が戻って来ているかもしれない。


 だが、どこにもそれらしい姿はなかった。


 「着地どうなってんの?」


 「あれって、パルクールってやつ?」


 質問が次々に飛んでくる。


 俺は苦笑いを浮かべながら、頭の中では別の事を考えていた。


 ──音瀬を早く見つけないと。


 さっきから胸の奥がざわざわして落ち着かない。


 音瀬を早く探しに行きたいのに、チャイムが鳴った。


 時間切れか……。


 俺は一旦諦めて、人の輪をかき分けて自分の席に戻った。


 音瀬の席をもう一度見るが、音瀬はやっぱりいない。


 ──音瀬、どこ行ったんだよ。


 遂に放課後になっても、音瀬は帰って来なかった。


 鞄はあるので、まだ帰ってはいないはずだ。


 俺は寝たふりをして人をやり過ごし、教室に残って音瀬が来るのを待った。


 でも、いくら待っても音瀬は来ない。


 その内、担任の先生が教室に来た。


 「藤真、こんな時間まで残ってどうした?」


 「いえ……別に……」


 「用事がないなら、さっさと帰れ」


 そう言いながら、先生は教室の窓を施錠していく。


 「あ、あの……音瀬は? 音瀬の鞄はあるんですけど、本人が居なくて」


 「あぁ、音瀬か。朝に体調が悪いって早退したよ」


 「え?」


 「鞄忘れてるのか……」


 「あの! 俺、音瀬の鞄、家まで届けます! ないと不便だろうし……」


 「そうだな。藤真、音瀬の家は知ってるのか?」


 「いえ、知りません……」


 「そうか。個人情報だから本当は教えられないんだが……一度連絡してみるか。藤真、少し待っててくれ」


 担任はそう言うと教室を出て行った。


 そうか……早退したのか。


 だからどこを探しても居なかったんだ。


 家になら……居るよな?


 ちゃんと話したい。


 俺には彼女はいないって。


 音瀬は気にしてないかも知れない。


 けど、俺が気にする。


 昨日まで自分の事好きって言ってた奴が、次の日には他に彼女を作ってたなんて思われたら最悪だ。


 誤解されたままなんて嫌だ。


 俺が付き合いたいのは音瀬なのに……。


 なんで俺、音瀬の連絡先知らないんだろう。


 こんな時連絡出来れば、俺は無駄に音瀬を探す事もなかったし、すぐに誤解は解けた。


 今まで聞くチャンスなんて沢山あったのに、普段LIMEなんてほとんどしないから、すっかり忘れていた。


 馬鹿だなー、俺。


 俺は机からノートを取り出し、はしを破った。


 そこに自分の名前とLIMEのIDを書いた。


 『連絡下さい』と一言も添えて。


 それを折ると、音瀬の鞄の外ポケットに入れた。


 ……これで、気付いてくれるよな。


 「藤真、住所教えても良いってさ……なんだ? どうした? そんな驚いた顔して」


 「いえ、ちょっとビックリして……」


 後ろから急に声をかけられて驚いた。


 俺はバクバクした胸を抑えた。


 「驚かして悪かったな。ほら、これ音瀬の住所だ」


 先生から住所の書いた紙を受け取ると、俺は音瀬の鞄と自分の鞄を持った。


 「鞄、よろしく頼むな」

 

 「はい。では、失礼します」


 俺は先生に頭を下げて挨拶をすると、教室を出た。


 俺は歩きながら、地図アプリに音瀬の住所を入力した。


 俺の最寄り駅の1つ先か。


 とりあえず駅まで向かうか……て、何でまた日坂がいるんだよ。


 校門の所にまた日坂が立っていて、俺に向かって手を振っていた。


 「何でいるんだよ」


 「昨日言ったじゃん。諦めないって」


 日坂は満面の笑みでそう答えた。


 俺は「はぁーー」と溜め息を吐きながら、面倒くせーと思った。


 「……諦めろよ」


 「あ、藤真君髪切ったんだね! その髪型も似合ってるよ」


 「聞けよ!」


 「聞かない」


 「お前のせいで変な誤解されて、こっちは大変だったんだ! お前がいたら、また誤解されるだろ!」


 「その誤解が本当になるかもしれないじゃん」


 「ならない」


 「なるかもしれない!」


 「はぁー、俺急いでんだよ。日坂ってこんな聞き分けないやつだったっけ? 昔はそんなんじゃなかっただろ?」


 「そう、私って聞き分けない奴なの。言ったでしょ? 昔は綺麗な自分だけを見せてたって」


 「開きなおりかよ……」


 「必死なの! ……それぐらい本気って事だよ」


 「それでも俺は答えられない。好きな奴がいるって言っただろ」


 「……その鞄の子?」


 日坂は俺の持っている鞄を指差した。


 「そうだけど……」


 「藤真君が女子の鞄持つなんて……私でも持ってもらった事ない。……本気なんだね」


 「あぁ、だから諦めてくれ」


 「諦めないけど?」


 「は?」


 「だって、振られてるんでしょ?」


 「うるせーよ……」


 「ふふっ。私、傷心の藤真君につけ込む気満々だから、毎日会いに来るよ」


 「いや、普通に迷惑……」


 「藤真君が塩対応すぎてツライ……なんてね。藤真君は何だかんだ優しいからね……分かった。今日は帰る。けど明日も来る!」


 「いや、来んな」


 「ははは。またね、藤真君。かっこいい姿見れて良かった」


 そう言って日坂は走って帰って行った。


 今の日坂と喋ると、昔付き合っていた時の日坂の雰囲気と全然違う。


 明日も来るのか……。


 明日は絶対違う所から帰ろう。


 そう決めて、俺も音瀬の家に向かった。

 


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