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CHERRY─彼女が狩人になった理由─  作者: 彩心
第二章 二学期

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第39話 変化

 次の日、俺は緊張していた。


 通学路ですれ違う女子達が、チラチラとこっちを見てくる。


 何で?


 何か変とか?


 朝早くに起きて、頑張ってヘアセットをした。


 久しぶりにしたので、これで良かったのかと段々不安になってきた。


 教室のドアを開ける前に一度深呼吸をした。


 「よしっ」


 今日は舐められないぞ! と気合いを入れて、教室のドアを開けた。


 クラスは相変わらずガヤガヤしていて、俺なんか眼中にないようだった。


 「……だよな」


 ホッとしていると、ドア近くの席の女子が「誰か探してるの?」と聞いてきた。


 「え?」


 「え? 違う?」


 女子は困ったようにそう言った。


 俺が誰か分かってない?


 そこまで存在感が無かった?


 軽くショックを受けていると「キャーーーー」と女子の黄色い悲鳴が聞こえた。


 うるせっ。何だよ。


 そう思っていると、いつものうざい女子達がいつの間にか俺の周りを囲んでいた。


 「藤真君だよね? そうだよね?」


 「あ、あぁ……」


 気付いてくれたのはありがたいが、女子のテンションの高さに引いてしまう。


 「だよね、だよね。やっぱり藤真君はイケメンだったー!」


 「は?」


 「この前チラッと見えた顔がイケメンだったんだよね。それからもう一度見たいと思ってたら……思った以上にビジュが良すぎて……あ、鼻血でそう……」


 「頑張って! やっと御尊顔ごそんがんおがめたんだよ!」


 「御尊顔って……」


 コイツらは、何を言ってるんだ?


 俺を褒めてくれてるのは分かるけど……言いすぎじゃね?


 「彼女様に感謝だね」


 「は? 彼女?」


 俺に彼女なんていない。


 一体、誰の事を言ってるんだ?


 「昨日かなりの美女が藤真君に告白してるの見たよ。付き合うから髪の毛を切ったんじゃないの?」


 「私も見た。あれは勝ち目ないわー」


 日坂の事か!?


 湊が昨日、噂になってるって言ってたもんな。


 「いや、俺に彼女は───」


 俺が否定しようとすると「朝陽!?」と後ろから声が聞こえた。


 後ろを振り返ると、湊が鞄を廊下に落として驚愕きょうがくの顔で俺を見ていた。


 「おはよ」と俺は湊にとりあえず挨拶をした。


 「『おはよ』じゃ、ねーよ! おま、お前、髪!」


 「あぁ。切った」


 「昨日お前が言いかけた事はこの事か……。俺の青春は今日で終了した……」


 悲壮感ひそうかん漂う顔で湊は言った。


 「そんな大袈裟おおげさな……」


 「確かに……藤真君を見た後に早瀬君を見ると普通というか……」


 「藤真君のビジュが強すぎるというか……」


 「おい、余計な事言うなよ!」


 「……ほらね、こうなるんだ。さようなら、俺の青春……」


 湊はどこか遠くを見つめた。


 「はぁー。何が『さよなら、俺の青春』なんだよ。お前の青春はこれからも続く!」


 「いや! 続かない! 悪夢の再来だ!」


 そんな湊の後ろから、佐藤がひょっこり顔を出した。


 「なんか騒がしいと思って来てみたら、藤真髪切ってるじゃん!」


 「そうなんだ……立ってるだけでモテる男が復活してしまったんだ……。見て、服装も着崩してる。モテる気満々じゃん!」


 「いや、別にモテるつもりじゃ……」


 「あ、そうか! 藤真、彼女出来たんだろ? それでか!」


 「いや、だから違──」


 その時だった。


 女子達の声が一瞬止まった。


 後ろのドアの方に音瀬が立っていた。


 音瀬は俺と目が合うと「おはよう、藤真君」と表情なく言った。


 「おはよう」と俺も返すが、音瀬と目が合わない。


 音瀬はさっさと自分の席に着くと、授業の準備を始めた。


 一度もこっちを見ようともしない。


 もしかして、さっきの話聞かれてた?


 俺は誤解を解くために、音瀬の所に行こうとした。


 そんなタイミングでまた「藤真君いるー?」と呼ばれた。


 今度は誰だと振り返ると柏木先輩だった。


 タイミング悪いなと思いながら、俺は「はい」と返事した。


 「え……あなた誰? 藤真君は?」


 柏木先輩はそう言うと辺りを見回した。


 「俺ですけど」


 「え!? 藤真君!?」


 「はい」


 「は? え!?」


 柏木先輩は凄く混乱していた。


 髪切っただけでそんなに違うか?


 「あぁー、美琴先輩も朝陽の手に落ちていくのか……」


 また湊がなんか言ってる。


 まぁー文句は後で聞くから、今は放っておこう。


 「で、用件は何ですか?」


 「あ、昨日の委員会に来なかったから、その時のプリントを届けに……来ました……」


 そう言いながら柏木先輩はどんどん声が小さくなって、下を向いた。


 プリントを手渡されたので、俺は受け取った。


 その時、プリントと一緒に柏木先輩の指に触れてしまった。


 とっさに「すみません」と手を放すと、プリントがヒラヒラと床に落ちた。


 2人同時にしゃがみ込み、プリントを拾う。


 ふと柏木先輩の顔を見れば、赤くなっていた。


 「先輩、顔赤いですけど大丈夫ですか?」


 「へ? あぁ、大丈夫大丈夫。ちょっと驚いただけ……」


 先輩はそう言うとサッと立ち上がり、拾ったプリントを渡してきた。


 「今度はサボらないでね」


 それだけ言うと、柏木先輩は音瀬の席へ行った。


 あの2人、知り合いだったのか?


 何を喋っているかは聞こえないが、音瀬がフッと笑った。


 そして2人で教室を出て行ってしまった。


 俺は音瀬の背中を見ながら、誤解を解くのはまた後でいいかと思った。


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