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CHERRY─彼女が狩人になった理由─  作者: 彩心
第二章 二学期

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第34話 雅side いつもの顔

 あれから噂はどんどん広がって、LIMEにはくだらない内容が毎日沢山届く。


 もう見るのも面倒だ。


 ヒソヒソと話す声や、嘲笑ちょうしょうの視線。


 教室に居るとどうしても気になってしまう私は、1人になれる場所にもよく逃げた。


 今日は登校はしたものの、すぐ中庭に逃げてしまった。


 私は1人ベンチに座りながら時間を潰す。


 もうすぐ誕生日が来るからって、何で私我慢してんだろ?


 死ぬなら学校なんてもうどうだっていいのに……。


 「フフッ」


 笑いがれた。


 分かってる。


 分かってるよ。


 私が朝陽君に会いたいから。


 もう学校に来る理由なんてそれ以外ない。


 何で喧嘩したの?


 怪我は大丈夫だった?


 朝陽君に聞きたい事は色々ある。


 でも、今はそれよりもただ会いたい。


 会って、何も言わなくていいから、顔だけでも見たい。


 私は地面に視線を一度落として、また前を向いた。


 そこに朝陽君が居た。


 「藤真君!」


 私は名前を呼ぶと駆け出していた。


 「おっす……」


 朝陽君はそれだけ言うと、気まずそうに視線をらした。


 まさか……。


 さっきまで温かかった胸が、ひゅっと冷たくなった。


 「藤真君……もしかして動画見た?」


 私は恐る恐るそう聞いた。


 心臓はバクバクと鳴っている。


 朝陽君だけには勘違いされたくない。


 「動画? 何の?」


 朝陽君の顔を見ると、本当に知らないようだった。


 まだ知られていない事に、私はホッと胸を撫で下ろした。


 「うううん、何でもない」


 私は、いつもの顔で笑った。


 でも今は知らなくても、いつかは知るよね……。


 朝陽君が知ったらどうなるんだろう?


 ……きっと軽蔑けいべつするよね。


 話を聞くのと、見て知るのはまた違う。


 私は嫌な想像を払うように、別の話題をだした。


 「怪我、大丈夫?」

 

 私がそう聞くと朝陽君は驚いた顔をした。


 「え? 何で知ってるんだ?」


 「早瀬君から聞いた。3針縫ったって」


 「あー湊ね。たいした傷じゃねーよ」


 朝陽君はなんともなかった様に笑っているけど、なんでそんな風に笑ってられるの!


 「たいした傷だよ! ……ほんと、心配したんだから」


 本当に、本当に心配した。


 朝陽君が死んじゃうじゃないかって……。


 「なんか心配させてごめん。でも、ほんと大丈夫だから。湊が大袈裟おおげさに言ってるだけで──」


 「大袈裟じゃない!」


 私は朝陽君の言葉をさえぎるように叫んだ。


 「……私、見てたから」


 「え?」


 「屋上から見えたの」


 なんで?


 なんで朝陽君はそんなに軽く言えるの?


 当たり所が悪ければ死んじゃうかもしれないのに……。


 『朝陽は大丈夫だよ。あいつクソ強いから』


 早瀬君もそう言って笑ってた。


 なんなの?


 男の子ってそういうものなの?


 私がそう考えていると、朝陽君が言いにくそうに「あー……なんか話、聞こえた?」と言ってきた。


 「話は聞こえなかったけど、藤真君が殴られてるのを見て私が先生を呼んだ」


 それを聞いた朝陽君はあからさまにホッとしていた。


 「そうだったんだ。ありがとうな。先生が止めてくれて正直助かったんだ」


 そう言って朝陽君はフワッと笑った。


 「藤真君、あの時何があったの?」


 「絢斗先輩が『この前の仕返しだ』って絡んできたから、やり返しただけ。ちょっとやりすぎちゃったよ」


 それを聞いて、夏休みの朝陽君と絢斗のやり取りを思い出した。


 「あ、あの時の……藤真君、ごめんね。迷惑かけちゃって……」


 私が朝陽君を巻き込んでたんだ……。


 あの時、私がもっとハッキリ絢斗を拒絶していれば、朝陽君は巻き込まれなかったのに……。


 私はギュッと拳を握った。


 「気にすんなよ。俺はムカつく絢斗先輩を殴れてスカッとしたんだから。だから、これは俺の自業自得」


 優しく笑って朝陽君はそう言うが、本当にそれだけ?


 それだけであんな喧嘩になるものなの?


 朝陽君は優しいから何か隠してるんじゃ……。


 「藤真君……本当にそれだけ?」


 「本当にそれだけ。だから音瀬は気にせず笑ってれば良いんだよ」


 何それ……。


 私のせいで喧嘩に巻き込まれて、怪我までしてるのに、どうしてそんな事が言えるの?


 本当、優しすぎるよ……。


 「……ありがとう」


 私はお礼を言って、やっぱり朝陽君が好きだと再認識したら、自然と笑えていた。


 「そろそろ教室に行かないとまずくね?」


 急に朝陽君が慌てた様に言った。


 「そうだね……」と返事をしたものの、教室には行きたくない。


 またあの視線にさらされるのかと思うと、気が重い。


 「あー……一緒に行く?」


 朝陽君のその言葉に私は二つ返事で「うん」と答えた。


 朝陽君と2人なら大丈夫かと思ったけど、やっぱり気が重い。


 私の足取りも次第に遅くなった。


 それに気付いた朝陽君が「どうしたんだ?」と聞いてきた。


 言えない。


 言えるわけない。


 「え……うん、別に……」


 私はそう言って言葉をにごした。


 それだけだったのに、朝陽君は苦笑いしながら「やっぱり俺と一緒じゃ気まずいよな……」と言ってきた。


 「え?」


 「だって振った相手と一緒って普通気まずいだろ?」


 「あ、そっか……そうだった。藤真君が普通すぎて忘れてた」


 「忘れてたって何だよ。俺の決死の告白を忘れるなよ。俺は普通なんかじゃないよ。普通をよそおってるの! 悪いけど、俺は今音瀬と一緒にいれて嬉しいから」


 ドクンと胸が高鳴った。


 何それ……照れながら言うの反則。


 「ごめん、他に気を取られてたっていうか……私も。私もね、今朝陽君と一緒にいれて嬉しいよ」


 私も朝陽君に釣られて、少しだけ本音を言った。


 「はぁーーーー、小悪魔すぎだろ……」


 そう言って照れている朝陽君が可愛くて、少し笑えた。


 「ふふ、だって本当だもん。さ、教室早く行かなきゃ遅れちゃうよ」


 私はそう言って朝陽君の腕を引っ張った。


 朝陽君は「分かったよ」と言うと、私に腕を引かれるまま廊下を歩いた。


 ごめんね。


 これが最後かもしれないから、私が朝陽君の側に居たいんだ。


 きっと、朝陽君も知る事になるから……。


 教室が目前に迫った時、やっぱり手がかすかに震えた。


 私はそれをバレないように、必死に手に力を入れて震えないようにおさえた。


 





 

 

 


 



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