第31話 崩れ始める音
俺が3日ぶりに教室に入ると、ガヤガヤとしていた教室が一瞬で静かになった。
周りを見回すと、皆が俺の方を見ている。
あー、やっぱり停学になったのバレてる?
今まで記憶にも残らない大人しい奴が、いきなり停学なんて、ヤバい奴だと思われてるんだろうな……。
まぁー元々関わりなかったし、どう思われようと今更関係ないか。
俺は前を向きなおし、自分の席へ向かった。
その時「藤真君! おはよー!」と女子が声をかけてきた。
声の方を振り向けば、この前のうざい女子達が居た。
「藤真君久しぶりだね!」
この前の態度とは打って変わって、笑顔で喋りかけてくる。
急に、何なんだ?
俺が困惑していると「藤真君風邪でもひいたの? 大丈夫?」と心配そうに言ってきた。
「は?」
「だって結構休んでたよね? 酷い風邪だったのかなって皆で話てたんだ」
風邪?
俺が休んだ理由が停学っていうのはバレてないんだ。
────なら、さっきの空気は何だったんだ?
気のせい?
いや、そんなわけない。
明らかに皆こっちを見ていた。
俺がそう考えていると、チャイムが鳴って思考が途切れた。
「あーチャイム鳴っちゃった」
「藤真君、また後でね」
そう言って女子達は自分の席に戻って行く。
「え? あ、あぁ……」
俺は適当に返事を返して、とりあえず俺も自分の席についた。
そうして授業が始まったが、ノートを取る手が止まった。
時折周りの様子を伺うが、いつも通りのように見えた。
やっぱり気のせいなのか?
そう思った瞬間、誰かが小さく笑った気がした。
何だ? 一体何が起こってる?
胸の奥がざわついて、先生の声がやけに遠く聞こえた。
授業はいつの間にか終わっていて、俺は慌てて教科書を片付け、次の授業の準備をしていると「藤真君」とまた呼ばれた。
今度は何だよと思ってそっちを向くと、ドアの所に柏木先輩が居た。
先輩は手を振って俺を呼んでいる。
先輩が教室まで来るなんて珍しいなと思いつつ、先輩の所まで急いで行った。
「どうしたんですか?」
「今日の放課後に臨時の委員会があるから、それを伝えに来たんだ」
「臨時の委員会ですか?」
「そう、忘れないでね! って、藤真君は忘れないよね」
ふふふと先輩は笑った後、教室を見回した。
「……ねぇ、最近何か変わった事ない?」
「変わった事ですか? ……特に無いと思いますけど」
「そう、ならいいの。じゃ、また放課後に」
そう言った先輩が立ち去る時「まだ甘い?」と言っているのが聞こえた。
「何が甘いんですか?」
俺がそう聞くと先輩はビクッとして振り返った。
「うううん、何でもない」と先輩は笑顔で言うと、隣のクラスに行き今度は佐藤を呼んでいた。
図書委員長って大変だな。
1つ1つクラスに言って回るなんて。
おいおい、先輩は佐藤を呼んでるのに湊まで来ちゃったよ。
あいつ本気で先輩狙ってるのかな?
俺は心の中で「頑張れ」と湊にエールを送った。
席に戻ろうと教室に視線を向けると、音瀬が驚いた顔でこっちを見ていた。
どうしたんだ?
不思議に思って俺は音瀬に近づこうとした。
それなのに、またさっきの女子達が俺の前に立ち塞がった。
「藤真君って図書委員だったんだ」
「えー、私も藤真君と一緒に図書委員すれば良かった」
「いや、図書委員はクラスで1人だけだよ」
「そうなの!? じゃー次は私と一緒に他の委員しようよ!」
女子達は何だか盛り上がっていたが、俺は音瀬の事が気になって「ちょっとごめん」と言って、その輪から抜けようとした。
それなのに、音瀬は立ち上がると教室を出て行った。
「音瀬?」
俺がそう口にすると、さっきまで騒がしかった女子達は静かになった。
「藤真君も音瀬さん?」
「え?」
「やめなよ、あんな女。ただのヤリマンじゃん」
「は?」
「藤真君は休んでたから、あの動画の事知らないんじゃない?」
「動画? 何だよ動画って」
「音瀬さんの動画が今拡散されてるの。もう皆知ってるんじゃない?」
「動画が拡散されてるって、何の動画?」
「音瀬さんのハメ撮り動画」




