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CHERRY─彼女が狩人になった理由─  作者: 彩心
第二章 二学期

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第27話 雅side 押さえつけたもの

 朝陽君大丈夫かな?


 私はあの後廊下でたまたま会った加藤先生に、朝陽君が殴られている事を伝えた。


 加藤先生は「分かった」と言うと焦った様子で走りだした。


 これで何とかなる。


 そう思って、私は一度トイレに寄って化粧を直す事にした。


 鏡に映った自分を見て笑えた。


 「目の周り真っ黒すぎ」


 笑いながら私は、何事もなかったかのように顔を作り直して、教室に戻った。


 5限は自習になったようで、遅れて教室に入っても大丈夫だった。


 自習のプリントをやり終えた今、気になるのは朝陽君の事だった。


 もう5限目が終わろうとしているのに、朝陽君は一向いっこうに帰って来ない。


 やっぱり怪我がひどかったとか!?


 心配だけど、私は朝陽君を振る事を選んだ。


 そんな私が朝陽君の怪我の心配をして会いに行くなんておかしい。


 戻ってきた朝陽くんがもし怪我をしていたら、誰かが何があったか聞くと思って、私は様子を見に行きたい気持ちをグッと抑えた。


 でも、授業が終わって帰る時間になっても朝陽君は教室には戻って来なかった。


 私は朝陽君の席を見ながら心配がつのった。


 明日には来るよね?


 そう思って私は鞄を持って廊下に出た。


 少し歩くと背後から嫌な視線を感じた。


 後ろを振り返ると、人が多すぎて誰からの視線なのか分からなかった。


 何だろうと気になったが、今は考えるのをやめた。


 今日は何もかも気分が乗らない。


 私はまた前を向くと、今日は真っ直ぐ家に帰ろうと決めた。


 次の日登校すると一番に朝陽君の席を確認した。


 いつも自分より早く登校している朝陽君の姿がなくて、胸がザワついた。


 やっぱり怪我が酷かったんじゃ……。


 私は廊下に出て、担任が来るのを待った。


 ホームルームの時間になり、ドアの前で立っている私に気付いた担任は「どうした?」と声をかけてきた。


 「藤真君の怪我……やっぱり酷いんですか?」


 「藤真? あぁ、知ってるのか。大丈夫だと聞いているよ。ただ、少しの間休むけどな」


 その言葉を聞いて、ヒュッと喉が閉まった。


 「……休む程の怪我だったんですか?」


 「本人は大丈夫って言っているがな……藤真は出席停止なんだよ」


 「え?」


 「後は本人に直接聞いてくれ。さ、ホームルーム始めるから教室入れ」


 私はまだ聞きたい事があったのに、担任に席に座るようにうながされた。


 私は席についても、さっきの話が気になって担任の話なんて全然頭に入ってこなかった。


 出席停止って停学って事だよね?


 なんで?


 停学って、悪い事をした人がなる処分でしょ。 


 絢斗達が絶対悪いに決まってるのに、朝陽君が怪我して停学ってどういうこと?


 私は休み時間になったら、絢斗に直接話を聞きに行こうと思った。


 一限目の授業が終わり、私はすぐに3年生の教室に向かった。


 絢斗の教室に着く前、体が震えて足が止まった。


 やっぱり絢斗に会うのが怖い……嫌な記憶がフラッシュバックする。


 段々と呼吸が浅くなる。


 それでも、私は絢斗に会って昨日何があったのかを確かめたい。


 大きく息を吸って、長く息を吐いた。


 「よしっ」と自分を奮い立たせて、私は絢斗の教室に入った。


 教室を見回したが絢斗の姿がない。


 それに健人達も。


 私は近くの席の人に「絢斗いますか?」と尋ねると「あー、停学になったらしいよ」と教えてくれた。


 え? 絢斗達も停学?


 私はとりあえず教えてくれた先輩にお礼を言い、教室を後にした。


 朝陽君だけじゃなかったんだ……本当に昨日何があったの?

 

 他に知ってそうな人は……早瀬くんなら何か知ってるかも!


 私は足早に早瀬君の教室に向かった。


 その途中「ねぇ」と声をかけられて、肩をつかまれた。


 背筋がゾワッとして、すぐに振り返った。


 私の肩を掴んでいたのは知らない女子だった。


 面識が無いはずなのに、なぜか睨みつけられている。


 「何? 急いでるんだけど」


 私は苛立ちを隠さずに言った。


 「佐藤君と付き合ってるって本当?」


 「は? どの佐藤?」


 「どの佐藤って……佐藤君、何でこんな人が好きなの?」


 「どの佐藤か知らないけど、私は誰とも付き合ってない。これでいい? 本当に急いでるの」


 「なら……なんで佐藤君とやったの? 嬉しそうに言ってたよ!」


 「やりたいからやった。別に好きじゃなくても出来るでしょ」


 そう言ったら「バチーン!」と音と共に、頬に痛みが走った。


 「……いったぁー。何すんだよ!」


 「最低! このクソビッチ! 何でこんな人がいいの? 私の方が絶対良いのに!」


 私はそうわめく女の頬を思いっきり引っ叩いた。


 「痛ーい! 何すんのよ!」


 女はそう喚いているが、それが少し遠くに聞こえた。


 下ろした手が震えている。


 私は震える手を反対の手で押さえつけて、何も感じていないふりをした。


 「これでお相子あいこでしょ? 確かに私は最低でクソビッチだよ。でも、それあんたに関係ないよね? 自分の恋愛が上手くいかないからって、私に当たらないで。二度と話しかけてくんな!」


 私はそう吐き捨てて、先を急ごうとした。


 「……ただじゃ済まさないから」


 背後から負け惜しみのように声が聞こえた。


 私は溜め息を吐いて、変な女に捕まったなと思った。


 でも、今はそれより朝陽君の事だ。


 私は振り返らず、早瀬君の教室に急いだ。


 



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