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CHERRY─彼女が狩人になった理由─  作者: 彩心
第二章 二学期

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第26話 笑いにきた奴

 俺が電話を終えて部屋に戻ると、漫画を読みながら要が「で? 何だったんだ?」と聞いてきた。


 「停学3日だってさ」


 俺はなんて事がないように答えた。


 それなのに「は? 何でだよ! 先に絡んできたの向こうだろ!」と湊が珍しく怒っていた。


 「さすがにやりすぎたらしい……」


 俺は電話の内容を思い出して、歯切れ悪くそう答えた。

 

 「やりすぎって……そんなの先に手を出してきた方が悪いだろ!」


 さっきまで「愛のために戦った」とか言って茶化してたのに、湊がここまで怒るのは珍しいな。


 「いや、いつもなら加減出来るんだけど……今回は自分でもやりすぎたって思うよ」


 そう言いながら、あの時止まれなかった自分を思い出した。


 「朝陽が加減出来ねーってヤバイな。そんなになるくらい何があったんだよ。詳しく話せ」


 要は漫画を読むのをやめて、真剣な顔をして俺の方を見てきた。


 「そうだよ。何か相当そうとうな理由があったんだろ?」


 2人が心配してくれているのは分かる。


 でも理由を言えば音瀬の事を話さないといけない。


 音瀬が隠している事を話すのもな……。


 俺は少し考えて、音瀬の事は伏せて話す事にした。


 「さっきも言っただろ。絢斗先輩達が来て、この前の仕返しだとか言って殴りかかってきたから、殴り返したってだけ」


 「だからそれだけな訳ないだろって」


 要がするどくそう言うと、湊もうんうんと頷いた。


 「……その後先輩達がクソみたいな話してて、そこからカッとなったというか……止まれなかったというか……」


「そのクソみたいな話が音瀬さん関連って事か」


 やっぱり湊は気付かれたくない事に気付くよな。


 「絢斗先輩、やっぱり音瀬さんを『ファヴ』に入れるつもりだったとか?」


 「何だよ、その『ファヴ』って」


 「先輩のハーレム要員って感じかな。俺も噂でしか聞いた事ないけど、絢斗先輩の家で乱行らんこうパーティーしてるらしい」


 「ヤベー奴だな」


 要の度直球の反応に湊は引きった顔をしながら「まぁ……」と答えた。


 「その話が本当だったら、確かにクソみたいな話だな」


 「でも、そのファヴに音瀬さんを入れるって話だけで朝陽がそんな怒るかな?」


 「音瀬って子がその『ファヴ』に関わってたんだろ。そりゃ朝陽がキレる訳だ」


 要は1人納得いったように、スッキリした顔をしていた。


 「朝陽、そうなのか?」


 湊は驚いたように俺にそう聞いてきた。


 どうしてそこまで気づいちゃうかな……。


 「まぁーな……」


 「マジかよ……でも、それなら尚更なおさら朝陽が停学なんておかしいだろ!」


 「本当の事なんて言えるかよ! 音瀬が必死に隠してるんだ、俺が言えるわけないだろ……普通に喧嘩したって言ったよ」


 「だな。そりゃ言えねーわ」


 「俺も音瀬から全部聞いた訳じゃない。でも、音瀬が自分の事を汚いって言うんだ。毎日生きてるのが辛いって……それなのに、あいつらは笑ってたんだよ! 俺はそれが許せなかった……」


 でも、それ以外何も出来ない自分にも苛立って視線を床に落とした。


 握り拳に力が入り、爪が皮膚に食い込む。


 「挙句あげくに 『俺達の仲間になったら色んな女を抱ける』とか言ってきたんだ。ふざけてるよな」


 「ふざけてんな……朝陽が何で怒ってるのか分かってないだろ」


 「ヤベー奴はやっぱヤベーな。俺会った事ねーけど、そいつ馬鹿だろ?」

 

 「あぁ、馬鹿だった。俺が言ってる事一ミリも伝わらなかった」


 「そんな奴は殴って正解だよ。やりすぎぐらいで丁度良いだろ」


 要はそう吐き捨てるように言った。


 「でもな、それで何にも解決してないんだよ……ただの俺の自己満ってだけで、何も守れてない」


 「殴ったからといって、音瀬さんの過去が消えるわけじゃないもんな……」


 「ただ、もう二度と音瀬に関わらないとは言ってた」


 「それは朝陽っていう恐い奴がでてくるからだろ」


 「確かに。俺達の中じゃ朝陽が1番強いからな」


 湊の言葉に要はニヤッと笑って「今なら俺も負けないかもよ」と言った。


 「やるにしても、怪我が治ったらな。せっかく痛い思いして縫ったのに、また傷口開くとか嫌すぎる」


 「そうだな。今は無理か」


 「もぉー要は本当に喧嘩好きだな」


 「俺は強い奴と喧嘩するのが好きなだけ! 弱い奴とはしねーから。そんなのただのいじめだろ?」


 「要のくせにまともな事言ってるよ」


 「俺はいつもまともだよ! 強い奴に勝ってこそおもろいんだよ喧嘩って!」


 「ほんとブレねーな要は」


 俺は呆れながら要を見た。


 「お前もな。大事な奴が傷つけられた時だけ熱い男になるの変わってねーよ」


 「あー、そういえば昔あったな。要の喧嘩に巻き込まれた時にさ、俺がボッコボコにされて『俺の友達ダチになにしてんだー!』って、朝陽が相手を逆に血祭りにしたっていう」


 「おー、あったあった。気付いたら朝陽がほとんど倒してたな。懐かしいー」


 「うるせー。昔の事はいいだろ」


 「こいつ照れてるよ」


 「面倒くさがり屋の朝陽君が実は熱い男って、どれだけモテ要素を盛るつもりだよ!」


 「湊、落ち着け。こいつ今日ふられてるから」


 「そうだった」


 2人はまた笑いだした。


 「お前ら……俺をなぐさめに来たんじゃなかったのかよ」


 俺がそう愚痴をこぼすと、2人は目を見合わせた。


 「俺はお前の鞄を届けに来た」


 「俺はお前を笑いに来た」


 「湊はまぁいい。要! 何だよその理由!」


 「え? 慰めてほしいの?」


 要は首をかしげながら言った。


 「じゃー、朝陽の良さが分からない女なんてやめとけよ」


 「は?」


 さっきまで湊と一緒に笑っていたのに、急に要が真剣な顔で言うから驚いた。


 「パッと見はまぁーダセェけど、朝陽は中身も外見も最高な俺の自慢のダチだ。それが分かんねー女の事なんてさっさと忘れろ」


 「要が普通に慰めてる。明日は雨か?」

 

 「湊、うるせー」


 「はい」


 「ははっ……それが出来ないから困ってるんだよな」


 「だろ? 慰めた所でそうなんだから、笑い飛ばされた方が良いだろ」


 俺は小さく息を吐いて、肩の力を抜くように笑った。

 

 「……ありがとな」


 やっぱり、こいつらには敵わない。


 


今月は仕事忙しすぎるし、休み少ないしであまり更新できなくてすみません(;ω;)

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