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CHERRY─彼女が狩人になった理由─  作者: 彩心
第二章 二学期

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第23話 面倒な事になりました

 生徒指導室に入ると、すぐ左側に長テーブルとパイプイスが置かれていて4人が座れるようになっていた。


 奥はカーテンで仕切られていて、奥に何があるのかまでは分からなかった。


 俺が物珍しげに見ていたのを先生は気づいたのか「そこに座れ」とパイプイスの一つを指さした。


 俺が座ると先生は俺の対面に座った。


 そして先生は俺の顔を見てハッとした顔をした。


 「藤真! お前、頭怪我してるのか!?」


 「えっ? あぁ、まぁ……はい」


 あぁ、そういえばそうだった。


 ジンジンとはするが、それ程痛くないので忘れていた。

 

 「ずっと返り血だと思ってたけど、血が垂れてきてるじゃないか!」


 「まぁ、棒で殴られたんで」


 俺はそう言いながら、顔に垂れてきた血を手でき取った。


 「あいつら……まぁ、話は後にしよう。とりあえず傷の手当てが先だ! 気分は悪くないか?」


 「大丈夫です……すみません、タオルか何かあります? それでとりあえず止血するんで」


 「あぁ」


 そう言って先生は慌ててカーテンの向こう側に行き、タオルを持って戻ってきた。


 「これ使え」


 「ありがとうございます」


 俺はお礼を言ってタオルを受け取ると、痛む所にタオルをあてて圧迫した。


 血が目に垂れてきて鬱陶しかったので、ちょうど良かった。


 俺がそうしている間に先生は誰かに電話をかけていた。


 「……はい、はい、ではよろしくお願いします。失礼します」


 電話を切った先生は、また俺の対面に腰をおろした。


 「絢斗達の処置が終わったら、柳楽やぎら先生が来てくれるそうだ。それまで大丈夫そうか?」


 柳楽先生は保健室の女性の先生だ。

 

 あまり関わったことはないけど、顔と名前ぐらいは知っている。


 別にこれぐらいどうって事ないけどなぁーと思いながら、俺は「はい」と返事をする。


 「で、だ。一体何があったんだ?」


 先生は真剣な表情でそう聞いてきた。


 「向こうが突然殴りかかってきたから、殴り返しただけっす」


 まぁ最初の一発目の話だけどな。

 

 ……それ以上は話したくない。


 「なんで絢斗達は突然殴りかかってきたんだ? 」


 「さぁー、知りません」


 「知りませんじゃなくて、何か理由があるだろ? あいつらが棒で人を殴るぐらいだ。理由がないわけがない」


 「返り討ちにあって、動揺しただけでしょ」


 俺は先生の質問を、そうやってのらりくらりとかわし続けた。


 「うーん、あいつらにも理由を聞かんと分からんな……」


 先生は諦めたのか、腕を前に組んで考え込んでしまった。


 そんな時、部屋のドアがノックされる音がした。


 「失礼します。柳楽来ました」


 そう言いながら柳楽先生が入ってきて、その後に続いて絢斗先輩も入ってきた。


 絢斗先輩は氷嚢ひょうのうで顔を冷やしながら、気まずそうな顔をしていた。


 「あぁー柳楽先生、いい所に絢斗を連れて来てくれて良かったです。藤真がほとんど喋らないんで困っていたんですよ」


 その先生の言葉を聞いて、絢斗先輩は驚いたように俺の方を見てきた。


 何驚いてんだよ。


 当たり前だろ。


 理由を話すなら音瀬の事を話さないといけないんだから。


 俺が言うわけがない。


 「そうだったんですね。頭がぼーっとしてたりするのかしら? 藤真君、本当に大丈夫?」


 「あっ、全然大丈夫っす」


 「本当に? 我慢してない?」


 こんな怪我ぐらいで、心配されるなんて変な気分だ。


 俺の親や中学の友達達なら「ダセー」って言って笑ってきたと思う。


 「本当に大丈夫です。これぐらいの怪我慣れてるんで……」


 あっ、やべ。


 「……慣れてるって?」


 「ぶ、部活とかで昔はよく怪我してたんで……」


 「確かに運動部なら怪我もするわね。でもね、あなたが大丈夫って言っても一応傷は確認するわね」


 「はい」


 はぁー、なんとか誤魔化せた。

 

 つい口が滑ってしまった。


 何だよ部活って。


 俺部活なんて入った事ねーよ。


 俺がそんな事を考えている間に、柳楽先生は俺の頭の傷を見ていた。


 「これは縫わなきゃダメね」


 柳楽先生は俺の頭を見ながらそう言った。

 

 えっ? マジで?


 「藤真君、今から病院行くわよ。あぁ、親御さんにも連絡しないと」


 「いや別にそこまでしなくても……」


 正直面倒なので行きたくないし、親にも連絡されたくないので、やんわりと拒否してみた。


 「ダメよ。こういうのはちゃんとしないと! 藤真君、病院着くまでちゃんと傷口圧迫しといてね。私は車を裏口に回してくるから!」


 はい、病院に行くのは決定事項なんですね。


 あぁーマジで面倒な事になった。


 俺が「はぁー」とため息を吐いていると、視線を感じた。


 顔を上げると絢斗先輩が俺をじっと見ていた。


 目が合うと絢斗先輩は視線を外して、慣れたように加藤先生の隣に座った。


 「こいつが何言ったかは知らないけど、俺が先に手を出して返り討ちにあった。それだけ」


 「藤真もそう言ってたが、それだけで棒で人の頭を殴るなんてやりすぎだろう」


 「あぁー、健人は喧嘩に慣れてないから焦ったんじゃね?」


 「それにしてもな……」


 「もぉー、本人達がそう言ってるんだから、そうなんだよ!」


 「分かった、分かった。……藤真も正当防衛にしてはやりすぎだ。すぐには決められないが、何かしらの処分はあると思ってくれ」


 「分かりました」


 そう返事をして、絢斗先輩の方をチラッと見ると、絢斗先輩は床を見つめて何かを考えているようだった。


 そんな時に加藤先生の携帯が鳴った。


 「……はい、分かりました。藤真、裏口で柳楽先生が待ってるから、すぐに行きなさい」


 俺はそう言われて、無言で部屋を出た。


 部屋を出る前にもう一度絢斗先輩を見たが、先輩はこちらをチラリとも見ずに、床を見つめ続けていた。

 

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