第22話 雅side 心が動いた
あの後手当たり次第に声をかけてみたものの、収穫はなし。
「そもそも人が少ないし、しょーがないか……よし、次は朝陽君に決めた!」
なんて軽く決めた選択だったのに。
こんなにも心を揺さぶられるようになるなんて────。
朝陽君に関わるたびに新鮮な反応が楽しくて、私の興味を引いた。
朝陽君の当たり前の優しさが心に響いた。
彼の正論が痛かった……。
完璧に嫌われたと思っていたのに、それでも「好き」って言ってくれるなんて思わなかった。
嬉しかった。
でも、それだけでもう充分。
タイミング良く佐藤君の話が出たから、これは軽蔑されるために丁度良いと思った。
「嫌われようとして色々ぶっちゃけ過ぎたかな?」
私が言える範囲の真実を話せば、彼はきっと離れていくと思った。
友達にも言えない私の秘密。
童貞狩りの話だって友達は「雅って馬鹿だな」くらいにしか思ってない。
エッチが好きなビッチとしか思ってない。
私がそれに救われているなんて、微塵も思う訳がない。
朝陽君はなんて思ったかな?
あの時朝陽君の顔を見るのが怖くて、ちゃんと見れなかった。
だから誤魔化した。
「エッチしない?」なんて言って……。
今の私がそんな事できる訳ないのに。
朝陽君が好きだから。
手放せなくなるから。
最後にキスしたのは、ただの自分のわがままだった。
朝陽君との出来事を綺麗な思い出として残したかったから。
だから頑張って笑っていたのに、結局朝陽君に涙を見られてしまった。
せっかく笑顔でさよなら出来たと思ったのに、引き留めるなんてずるいよ。
私の涙腺は朝陽君の前だけ、なぜか緩いんだから……。
そう感慨に耽っていると、下から楽しそうな笑い声が聞こえた。
授業はとっくに始まっているはずなのに、何だろうと思い柵に近づいた。
下から見えないようにしゃがんで柵越しに下を見ると、何を喋っているかまでは聞こえないが、絢斗達と朝陽君がそこに居た。
絢斗達が笑っているけど、朝陽君は笑っていない。
これって朝陽君がまた絢斗に絡まれてるんじゃ……。
そう思ったが、何か違和感があった。
なんか絢斗、怪我してない?
なんで?
そう考えていたら、いきなり朝陽君が一番近くにいた健人を蹴り飛ばした。
「えっ?」
それは一瞬の出来事で、何が起きたのか理解するのに少し時間がかかった。
絢斗も朝陽君に殴りかかるが、朝陽君はそれをかわして絢斗を殴り返していた。
「えっ? えっ?」
一体何が起こってるの?
初めて喧嘩を見たので、私はこの状況をどうすればいいのか分からない。
そう私が戸惑っている間に、朝陽君は頭を棒で殴られてしまった。
それを見た私の体はやっと動いた。
「助けなきゃ」
私は慌てて屋上を出ると、職員室に向かって全力で走った。




