表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
CHERRY─彼女が狩人になった理由─  作者: 彩心
第二章 二学期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/22

第20話 冷静じゃなかった

 絢斗先輩は俺の後ろで倒れている友達を見て、戦意を失ったのか拳をおろした。


 「お、お前本当なんなんだよ!」


 俺に勝てないと悟ったのか、先輩の声は必死さと焦りがあった。


 「音瀬の事が好きな童貞君だろ」


 俺はさっき先輩達に言われた言葉をそのまま返した。


 「だからってやりすぎだろ! お前は雅の彼氏でもないし、関係ねーじゃねーか!」

 「だから言っただろ。俺がムカついたからだって。別に音瀬のためじゃない」

 「チッ」

 「後はお前だけだ。続きやろうぜ」


 俺はそう言って、絢斗先輩に近付こうとした時、左目に何かが入った。


 何だ? と思い目をこすると、こすった手が赤く染まっていた。

 それは血だった。


 さっき殴られた時に切れたのか。

 めんどくせぇーな。

 どっから棒なんて持ってきたんだよ!


 イラッとしたので、地面に寝そべっている奴の鳩尾みぞおちに一発蹴りを入れておいた。


 あぁー、この垂れてくる血どうするかな……。

 何も持ってねーな。

 もういーや、とりあえずアイツをやっとかないとな。


 片目でも何とかいけるが、やりにくい。


 ……もう一発蹴っとくか。


 俺が憂さ晴らしをしようとしていると、絢斗先輩が友達をかばうように俺の前に飛び出して来た。


 「もういいだろ!」

 「あ?」

 「こいつは気を失ってるんだ、もうやめてくれ!」

 「喧嘩に棒切れ持ち出したんだから、それぐらいの覚悟はあるだろ。どけよ」


 そう言っても、絢斗先輩は動かなかった。

 

 「まぁいいか。お前からやれば」

 「待て待て待て! お前の強さは分かった! こういうのはどうだ? 俺達の仲間になれよ! そしたら色んな女を抱けるぞ」


 こいつ何言ってんだ?

 それで俺が喜ぶと思ってるのか?


 俺が何に怒ってるか、全然理解してねーじゃねーか。


 「ほんとクソだな……」

 「は?」


 「お前は本当に何にも分かってねぇよ。なんで殴られてるのか、音瀬をどれだけ傷つけたのか」

 「は? 傷つけた?」

 「ほらな、全然分かってねー。女は物じゃねーんだよ! 意思ある人間なんだよ!」


 「そんなの馬鹿じゃねーんだから、言われなくても分かってるよ!」

 「じゃお前は馬鹿だ。物みたいに扱ってんじゃねーよ!」


 相手が目の前にいるので、もう片目が見えにくかろうが関係ない。

 俺は感情のまま絢斗先輩の左頬を殴った。


 絢斗先輩はその衝撃を受け長そうとしたが、後ろに居る友達の体が邪魔でバランスを崩した。

 友達の上に倒れないようにしながら、先輩はそのまま地面に倒れこんだ。


 俺は仰向けに倒れた先輩に馬乗りになった。


 「本当に俺が悪かった! だからもうやめてくれ!」


 そう言って懇願こんがんする先輩の顔を何も言わずに殴った。


 「さっきまでの威勢いせいはどこ行ったんだよ」


 更にもう一発。


 「本当にすみませんでした! 雅にもこれ以上関わらないようにしますから!」


 俺はもう一発殴ろうと拳を振りあげた。


 「ストップ、ストップ、ストーーップ!!」


 突然そう背後から声が聞こえたと思ったら、俺は羽交い締めにされていた。


 誰だよと思って振り返ると、生活指導の加藤先生だった。


 「お前何やってんだ! いくらなんでもやり過ぎだろうが!」

 「あぁ……でも最初に喧嘩ふっかけてきたのは向こうからですよ」


 俺は都合の良い箇所だけ説明した。

 先生は周りを見回した後、絢斗先輩を見て「はぁー」とため息を吐いた。


 「弱そうだと思って喧嘩売ったら、返り討ちにあったって所か……まぁ、話は後で聞く。藤真は俺と先に生徒指導室だ。絢斗は誰か呼んで来て、そこの2人を保健室に運んだら指導室に来い! いいな!」

 

 先生はそう言ってテキパキと指示をだすと、俺の拘束を片腕だけ外すし、そのまま俺を立ち上がらせた。

 

 「いいか! 絶対来いよ!」


 先生は絢斗先輩にそう念を押すと、俺の腕を引っ張ってズンズンと歩き出した。


 「え? ちょっ」

 「黙ってついて来い! これだけやらかしたんだ、何のおとがめもなしって訳にはいかないだろ」

 

 俺をズルズルと引きずっている先生は、こちらを見ずに淡々とそう言った。


 俺はずっと自分は冷静だと思っていたが、そうじゃなかった様だ。


 こうして少し離れた所で現場を客観視すれば、生徒2人が倒れていて、絢斗先輩の顔は血まみれだった。

 

 部外者なのにやりすぎたかなーとは一瞬思ったが、やった事に一切後悔はしていない。


 これから起きる事を考えるととても面倒くさいが、しょうがない。

 甘んじて受け入れるよ。


 俺はこの学校に入学してから、初めて生徒指導室に入った。


 


 

 


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ