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CHERRY─彼女が狩人になった理由─  作者: 彩心
第二章 二学期

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第19話 自己満足

そんな事を考えている間に、絢斗先輩の拳は俺の顔面近くにきていた。

 反射神経だけでサッと避けると、大振りだったからか絢斗先輩は体勢を崩した。


 「おい何やってんだよ!」

 「マジダセェ!」


 外野がケラケラと笑っている中、俺は絢斗先輩を横目で見ていた。

 すると、急に目の前に足が見えた。


 危ねっ! と思い、とっさに片腕でガードしたが、思ったよりもズンッと重たさがあり、腕がしびれた。


 体勢を崩したと見せかけて、回し蹴りかよ。

 

 俺が攻撃を受け止めた事で絢斗先輩は「チッ」と舌打ちをした。


 かなりイラッとはしたが、俺は先輩に聞きたい事がある。

ご機嫌斜めな先輩に、俺は笑顔を貼り付けて喋りかけた。


 「もういいでしょ? それより聞きたい事が──」


 俺が喋っている最中だと言うのに、先輩は下から俺の腹にパンチを入れてこようとしてきた。


 それを咄嗟とっさに左腕で軌道をそらして払い、右手で先輩の左頬を思いっきり殴った。

 

 あぁー、まっずい。

 つい条件反射でやってしまった……。

 先輩の勢いも乗ってたから、相当効いたハズ。


 先輩は地面に膝をついて、プッと口の中の血を吐いていた。


 「あぁー、口の中切れちゃいました? ほんと今のは条件反射でワザとでは……大丈夫ですか?」


 俺は本当に殴るつもりはなかったので、申し訳なく思い、恐る恐る先輩に声をかけた。


 「……お前本当に舐めてんな」

 「いえ、別に舐めてませんよ。それより聞きたい事があってですね」

 「……なんだよ」


 おっ、やっと聞いてくれる気になったか。

 

 「音瀬を……その……レイプしたっていうのは本当ですか?」

 

 これはただの俺の憶測だ。

 カマをかけてみたが、絢斗先輩はなんて答える?


 俺はゴクリと唾を飲み込み、返答を待った。


 それを聞いた先輩達は目を合わせ合うと、突然笑いだした。


 「ハハハ、お前それ雅に聞いたのか?」

 「なんだよ、レイプって。そんな事する訳ないだろ」


 先輩達は笑いながらそう答える。

 

 そうだよな……さすがにそんな訳ないよな。

 良かったー、俺の勘違いで。


 ホッとしたのも束の間だった。


 「あれは雅も同意してんだよ。だからレイプじゃねー。ただの複数プレイってやつだ」

 「え?」

 「雅ちゃんもノリノリだったからね」

 「俺達は紳士だから、無理矢理なんてしねーよ」

 「は? え? でも絢斗先輩は音瀬と付き合ってたんじゃ……」

 「付き合ってたよ。でも、彼女は彼氏の言う事を聞くもんだろ?」


 そう言って絢斗先輩はニヤリと笑った。


 「でも雅は顔が良かっただけで、別れる前は人形みたいになっちまって、つまらない女だったよ」

 「あぁー確かにな。でも、顔も体も良かったから、絢斗もしい事したよな」

 「俺もそう思ってこないだ声かけたら、コイツに邪魔された」

 「あれ? 根暗君って雅ちゃんの事好きな感じ?」

 「雅に遊ばれて本気になった童貞君だろ」

 「何それ、ウケるんだけど。一回鏡見てから考え直した方がいいよ」

 

 3人がそう言いながらゲラゲラ笑っている中、俺の頭は冷静に状況を整理していた。


 どう考えても同意じゃないだろ。

 音瀬は絢斗先輩が好きだったから、同意せざるを得なかっただけだろ!

 ……何が紳士だよ。

 狂ってるだろ!

 音瀬はやっぱり傷ついているんだ。

 だからこそ、自分を汚いなんて言うんだろ!


 そこまで音瀬を追い詰めた奴らが、楽しそうにゲラゲラ笑っている姿に怒りが込み上げてきた。


 ここで俺が何をしようが、音瀬の傷ついた心はえない。

 これはただの俺の自己満だ。


 一番近くに居た絢斗先輩の友達の横っ面を目掛けて、俺は後ろ回し蹴りをした。


 相手は無防備だったため、もろに入ってしまい横に吹っ飛んだ後、ピクリとも動かなくなった。


 まず1人。


 「ちょっ、お前大丈夫か!?」

 

 絢斗先輩の友達がそう言いながら、吹っ飛んだ友達に駆け寄った。


 「お前いきなり何してんだよ!!」


 絢斗先輩が怒ってこちらに向かってくる。


 「いや、なんか腹立ってきたんで蹴っちゃいました」

 「何が蹴っちゃいましただよ! お前に関係ない話だろ!」

 「関係ないけど、ムカつくもんはムカつくんで」

 「スカしてんじゃねーよ!」


 絢斗先輩はそう言って、また殴りかかってきた。

 

 今度は下からか。


 俺はそれを半身をひねって避けると、戻る勢いで絢斗先輩の鼻を殴った。

 

 絢斗先輩は後ろにのけった後、鼻を抑えた。


 鼻からぽたりぽたりと赤い液体が地面に落ちた。


 「このクソガキがーー!!」


 それを見た絢斗先輩は更に憤慨ふんがいし、また返り討ちに合うというのに、拳を用意しながらこっちに突進してきた。


 それなのに俺の近くまで来ると、絢斗先輩は急に止まった。


 攻撃にそなえてかまえていた俺は、絢斗先輩の行動に気をとられた。


 その時「ゴンっ」という音と共に、俺の頭が揺れた。


 痛ってぇーと思いながら後ろを振り返ると、絢斗先輩の友達が棒切れを振り上げていた。


 そういえば、もう1人残ってたな。


 俺は棒が振りおろされる瞬間、手をクロスにして相手の手首を受け止めると、そのまま時計周りに下に大きく回し、相手の手をひねり上げた。

 そのまま片手で手を掴んでから、相手の顎を目掛けて渾身こんしんの一撃を当ててやった。


 脳を揺らしたからか、相手はその場に倒れた。


 そこで寝てろ、カスが!


 これで2人。


 俺はすぐに振り返って絢斗先輩を睨みつけた。

 

 

 




 


 

 


 

 

 

 



 


 

朝陽君強すぎ……

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