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CHERRY─彼女が狩人になった理由─  作者: 彩心
第二章 二学期

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17/22

第17話 音瀬の目的

 「だから……だから……ごめんなさい」


 音瀬はそう言って俺に頭を下げた。


 一瞬期待してしまったけど、やっぱりそうだよな。

 分かってても結構キツいもんだな……。


 俺が胸の痛みに耐えていると、音瀬は顔を上げた。

 その瞳には涙が溜まっていた。


「こんな汚い私じゃ、朝陽君には釣り合わないから……朝陽君にはもっと素敵な人と幸せになってほしいって思ってる」


 音瀬は無理矢理笑顔を作ってそう言った。

 目を細めたからか、目からは涙がこぼれ落ちた。


 「なんだよそれ……汚いって何だよ。俺と釣り合わないって何だよ!

 音瀬が泣いてるのも、他の人と幸せになれって言うのも、全部、全部意味が分からない!

 泣きたいのは俺の方だ!

 もっと素敵な人って何だよ!

 俺は音瀬と一緒に居たかっただけで、好きな人から他の人を勧められるなんて最悪な気分だ」


 音瀬は涙を手で拭いながら「ごめんね」と繰り返す。

 

 違う、俺が聞きたいのはそんな言葉じゃない!


 「勝手に俺の幸せを決めるなよ! それなら普通に佐藤と付き合ってるから、無理って言ってくれよ!」


 あぁー本当に泣きそうだ。

 フラれただけでも、しんどいのにこの仕打ち……俺ってもしかして嫌われてたりする?

 

 「佐藤君?なんで佐藤君かは分からないけど、 佐藤君とは別に付き合ってないよ」


 「は? だって佐藤と……したんだろ?」

 「あぁー知ってた? うん、したよ」


 なんて事のないように肯定されて、分かっていたのに俺は軽くショックを受けた。


 「それなのに付き合ってないって……また遊びかよ」

 

 音瀬はフフンと笑って、いつもの余裕そうな笑みを浮かべた。

 

 「朝陽君、私が仲間内で何て呼ばれてるか知ってる?」

 「え? 『雅』とかじゃねーの?」


 音瀬は静かに首を横に振った。


 「『童貞狩りの雅』って呼ばれてるの。ハハハッ、ダッサイ呼び名だよね。でも本当の事。私、童貞以外とはエッチしないの。だから朝陽君と会った時も言ったでしょ? 『エッチしない?』って」

 「それが……遊び? いや、へきっていうのか?」


 唐突にそんな事を言われて、俺は混乱した。


 癖なら仕方ないのか?

 そんなの人それぞれだしな。


 だから湊はダメで、俺は誘われたのか。


 「でも、楽しんでるわけではないだよな? ん? どういう事?」


 「フフフッ、そう。癖じゃないし、別に楽しんでる訳でもない。私の目的のためにしないって決めてるだけ」


 音瀬は楽しそうにクスクスと笑っている。


 「目的?」

 「初体験の相手になれば記憶に残るでしょ? 私は1人でも多くの人の記憶に残りたいの……どう? 幻滅した?」


 楽しそうに弾んだ声でそう聞いてくる音瀬だが、目は死んでいた。

 そのギャップに俺の頭は益々混乱する。

 

 「いや……」


 「正直に言ってくれていいよ。『ドン引きだー』て。それにね、私エッチが大好きなんだ。エッチしてる時はね、生きてて良いよって、必要だよって言ってもらってるみたいで嬉しいから」

 「何でそんな……」


 「私ね、毎日生きてるのが辛いの 」


 「え?」

 「でもただ死ぬのは嫌。出来るだけ多くの人に私を覚えていてほしいの。

 ハハッ、これ言ったの朝陽君が初めてかも」


 そう言って音瀬は壊れた様に笑った。

 ひとしきり笑った後、フゥーと息を吐いて真顔に戻った後、こちらを向いて「だから、ごめんね」と音瀬は言った。


 何と言えば良いのか分からず、棒立ちになっている俺に音瀬は近付いて来て、俺の肩に腕を置くと耳元に顔を寄せて来た。


 「朝陽君、私とエッチしない?」

 「え?」


 驚いて音瀬の方に顔を向けると、すぐ近くに音瀬の顔があった。


 「チュッ」


 柔らかいものが唇に一瞬あたって、すぐに離れていく。

 そして音瀬も俺から離れた。


 「なーんてね。うそ。朝陽君とはもう出来ない」

 「俺が音瀬の事を好きだから?」

 「違うよ。でも理由は内緒」

 「何だよそれ」 

 「ふふふ、じゃーね藤真君」


 音瀬は泣きそうな顔でそう言うと、無理矢理笑顔を作って俺の肩をバシバシ叩いてから、俺の横を通りすぎて行った。


 だから何でフった方が泣きそうな顔してんだよ。

 

 俺は咄嗟とっさに音瀬の腕をつかんだ。


 「おいっ! ちょっと待てって……え?」


 振り返った音瀬の顔は濡れていて、やっぱり泣いていた。


 それを見られたと気付いた音瀬は「放して!」と声を上げると、俺に掴まれている腕を大きく振った。

 

 驚いて力が抜けていた俺の手は簡単に音瀬の腕から外れた。

 俺の手が離れた瞬間、音瀬は走って校舎の中に消えて行った。


 「何で泣いてんだよ……こんなのほっとけねーだろ」


 音瀬がまだ何か隠してるのは間違いない。

 俺は音瀬を追いかけるかどうか悩んだ。

 でも彼氏でもないし、ましてやフラれてるのに、そんなにしつこく聞くのも変だ。 


 俺は結局その場から動けないで居た。

 

 せっかくフラれて綺麗さっぱりするつもりだったのに、後味の悪いモヤモヤが残っただけだった。


 

 

やっとタイトルの意味を書けた

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