第15話 だから嫌いなんだ
俺は朝から胃がキリキリとしていた。
昨日音瀬に告白をすると決めたが、昨日晩から緊張してしまい今に至る。
いつ声をかけようかと考えているうちに、もう昼休みになってしまった。
昼ご飯も食べずに自分の席で机に突っ伏していると、教室に「キャーー」という黄色い悲鳴があがった。
何だ? と思って顔を上げると、教室のドアの所で湊がこっちを見て手を振っていた。
「え? 早瀬君ってアイツと仲が良いの?」
「えっと誰だっけ? 名前が思い出せない……」
なんて声が聞こえるぐらい教室が一気にざわめいた。
だから教室には来るなって言ったのに……。
そんな中透き通る様な声が聞こえた。
「藤真君だよ」
え? 音瀬?
そう思って後ろを振り返ると、ロッカーに持たれて立っていた音瀬と目が合った。
音瀬はすぐに目を逸らすと、何事もなかったように周りの友達と再び喋りはじめた。
「そうだ! 藤真だ!」
「なんであんなやつに早瀬君ニッコニコなの
?」
「はぁー、あの笑顔てぇてぇ」
なんか湊を崇め始めた女子に若干引いていると「よぉ」と湊が俺の席まで来て、声をかけてきた。
「何で来たんだよ……」
「いや、だって何度もLIMEしたのに返事がないからさー」
俺は慌ててポケットからスマホをだすと、12件の新着通知が来ていた。
「お前送りすぎじゃね?」
「いやー例の進捗具合が気になってさ。で、どうなんだ?」
「……何も」
「ん? 何も?」
「うん……まだ何もしてない……」
それを聞いた湊は目を見開き「はぁーー!?」と大きな声を出した。
俺は慌てて立ち上がって湊の口を手で塞いだ。
「おま、お前声が大きいって! 余計目立つだろ!」
周りに聞こえないように、小声で強めに言った後湊の口から手を離した。
「はぁー」とため息を吐いて、席に座り直すと周りの女子達からの冷たい視線を感じた。
周りを見渡すと、さっきまで湊にキャーキャー言っていた女子達が俺を睨みつけていた。
「早瀬君に対してあの態度は何なの?」
「早瀬君にかまってもらってる分際で、アイツ何様のつもり?」
はあー!?
俺が湊にかまってもらってるって?
何だそれ。見当違いも甚だしい。
「あーもー、お前が教室来ただけで面倒くさい」
ジト目で湊を見ると、湊は困ったように頬をポリポリとかいた。
「悪かった。まさかこんな感じになるなんて思わなかったんだ。でも騒がれるのも悪くないな。これからも他のクラスに行ってみようかな」
「は?」
「だって、いつも騒がれるのはお前の方だっただろ? 俺が騒がれるとは思ってなかったんだよ。他のクラスに1人で来たの初めてだったし」
湊はシュンとしていて、本当に分からなかったようだ。
「まぁー次からは来るなよ」
「分かったって。んで? お前はいつ実行するんだ?」
ギクッ!!
そうだった……いつしよう?
っていうか、いつ出来るんだろう?
俺が虚空を見つめていると、湊は俺の考えている事が分かったようだった。
「はぁー、しゃーねーな」
湊はそう言うと、俺の机を通りすぎ後ろに歩いて行った。
その目線は一直線に音瀬の方を向いていた。
え? え? え?
アイツ何する気だ?
「音瀬さん、ちょっといいかな?」
「早瀬君どうしたの?」
「話たい事があるんだけど、ちょっと時間もらえないかな?」
そう言った後、湊はチラッと俺の方を見てきた。
最初は怪訝そうにしていた音瀬だったが、その視線に気付くと「分かった」とすんなり了承した。
「ありがとう」と湊は言った後、音瀬と一緒に教室を出て行った。
教室を出る前に湊はアイコンタクトで俺に「ついて来い」と合図を送ってきた。
俺はゴクリと唾を飲み込んだ。
ドクドクと心臓の音がうるさく聞こえる。
ついに……言うのか?
まだ心の準備も何も……。
いや、腹を括れ俺!
せっかく湊が作ってくれたチャンスなんだ。今言えなきゃ一生言えない!
俺は気合いを入れて席から立ち上がって、教室を出て行こうとした。
すると、ドアの前で俺は両腕を掴まれた。
何だ? と思って横を見ると、さっき睨んできていた女子達だった。
「あんたどこ行く気?」
「は?」
「早瀬君の邪魔する気じゃないでしょうね?」
「は?」
「推しの幸せを壊す事は許しません!」
何なんだよコイツら。
マジめんどくせぇー。
「放せよ! 俺がどこ行こうと勝手だろ!」
女子相手に力では何も出来ないので、とりあえず言葉で言ってみた。
「早瀬君の後を追うつもりじゃないなら全然良いけど」
「あれは絶対告白の雰囲気だった」
「いや、違う」
「何であんたにそんな事が分かんのよ!」
「早瀬君と友達でもないのに、分かった風に言わないでよ」
「そーよ、そーよ」
好き勝手いいやがって……だから女は嫌いなんだ。
表面上しか見ていなくて、自分の都合を押し付けてくる。
俺の事なんて何にも考えてくれない。
今も湊の優しさを踏みにじろうとしてくる。
せっかく入れた気合いも台無しだ。
「うるせーな。好き勝手言いやがってよ!」
俺の中で何かがプッツンと切れて、女子達から無理やり腕を引き抜くと女子達はバランスを崩した。
その女子達を開いていない方のドアに押し当て、倒れないようにした後「バンッ」と右手でドアを叩いた。
その体勢のまま俺は女子達を見下ろす形で「湊は俺の友達だし、湊の邪魔してんのはテメェーらだよ」と言った。
また何か言われる事を覚悟していたのに、彼女達は意外にも何も言い返してこなかった。
それどころかこっちを見て固まっていた。
「いつまでも来ないから来てみれば……あぁーやっちゃいましたねー」
横を見れば呆れ顔の湊が居た。
「何だよ、やっちゃったって」
「いや、別に。それよりお前も早く来いよ」
「分かってるよ。コイツらが邪魔して来たんだよ!」
「え?」
湊は女子達の方を見るが、なぜか女子達は目を見開いて俺の方ばかり見てきた。
「何だよ。まだ何か文句でもあんの?」
俺がそう言うと女子達はフルフルと首を横に振った。
何だよ。さっきまでうるさかったのに、湊が来た瞬間大人しくなりやがって。
「はぁー、よし! じゃあ行くか」
俺は気合いを入れ直し教室を後にした。
湊は「あ、あぁ……」と返事をした後、なぜか教室の中を気にしながら俺の横を歩いた。
「音瀬さんには先に行ってもらってるから」
「おぉ、ありがとな」
「次はヘタれるなよ」
「分かってるよ」
そんな会話を湊としながら目的地に向かって歩いていると、さっきまで居た教室から「キャーー」とまたもや黄色い悲鳴があがって、ワイワイと盛り上がっていた。
なんだ?
また誰か人気者でも来たのか?
まぁ、どーでもいいけど。
それよりも、マジで緊張してきた。
あぁ、胃が痛い……。
俺は告白する事に頭がいっぱいで、湊の哀れんだような視線に気づかなかった。
壁ドン朝陽が書きたすぎて執筆が捗りましたw
ブックマーク、評価していただきありがとうございます!
仕事が忙しいので次回の更新は3日までにはしたいと思います!




