あやしい友人
「サーピエリっていうの?友達ってどういうこと?僕はこの前生まれたから人違いなんじゃないかと思うんだけど、似てる人?それとも本当に僕?ジャービスとは知り合いなの?」
一気に質問するとサーピエリが笑って両手を挙げた。
「待って待って。ちゃんと話すから落ち着いてゆっくり話そうよ。そうだよ。正確には私は君の前世の友人。リチアはジャービスに何て言われてここに住んでいるの?」
「何って・・勉強や仕事があるとは言われたけど・・。」
待遇の良さは気になってたけど、ここに住んでいるのはここで生まれたからとしか説明しようがない。
「ふ~ん。それだけ?・・そうだ!窓から外に出て!面白いものを見せてあげる。」
「・・君は大丈夫だろうけど僕の身体の大きさじゃ窓から出られないよ。」
「あ~、大きさを変えられないのか。じゃあ窓から見えるようにしてあげるからちょっと待ってて。」
サーピエリは張り切って一度外へ出ると、またすぐ戻ってきた。
「ほら、見てて。今、暴れん坊の魔物を庭に放ったから誰か来るよ。」
「・・それ大丈夫なの?」
怪しみながらも好奇心には勝てず窓から外を覗き込むと、お面とフードで顔を隠した人達が次々と集まってきた。手には杖が握られている。
何か呪文を唱え始め、杖の先から透明な四角い板のような物がいくつも作られていくとそれで暴れている魔物を追い込み、最終的には四角い部屋のような箱の中に魔物を閉じ込めた。
その箱が輝きを失ったところでサーピエリが口を開いた。
「ほら、あれは結界だよ。普通に退治することもできるんだけど、この世界では悪いことをした奴らを結界に閉じ込めて結界の中で一度生まれ変わらせることが出来るのさ。魔物の大きさや強さで結界の形態も変わるんだけどね。・・ね!あれに見覚えない?」
たしかに気になっていた。
うっすらとだけど、透明な板に見覚えがあり思わず自分の手の平を見る。
あれは生まれた時に触った壁?
けど僕はタマゴから生まれたはず。
ジャービスもそう言ってたし。
サーピエリがクスクス笑いながらこちらを見ている。
「ね!おもしろいでしょ!リチアは私と一緒に悪さをした時おそらく退治されちゃったんだよ。私は逃げたから分からないんだけどね。で、心配になって様子を見に来たんだよ。」
思いがけない内容に耳を疑った。
「え・・。僕、サーピエリと悪いことして退治されたの?」
「多分そうだろうね~。羽の色が違うし。生まれた時から今の姿じゃなかった?」
「え、うん。今とそんなに変わってないと思う。」
「ほらね。それが証拠!卵から孵る時は赤ちゃん、結界から出てくる時は基本的に”退治”された時の姿なんだよ!色々分かってスッキリした?良かったね。さ、また遊ぼう!」
話が本当ならサーピエリは僕を見捨てて逃げたことになるけど、サーピエリは一切悪びれることなく説明を終えた。
「君を教育しなおして立派に育てることが多分ジャービスの役目だよ。そうだ!トリフェインって何かジャービスに訊いてみなよ。もちろん私の名前は出しちゃダメだよ。」
「トリフェイン?」
言葉を繰り返すとサーピエリは嬉しそうにこちらを見てニコリと微笑んだ。
そして空中で踊るようにクルクル回りながら何も言わずに姿を消してしまった。
-----翌朝-----
いつものようにジャービスが部屋にやってきて朝のルーティンを済ませる。
「今日は天気がいいので行動範囲を広げてみましょうか。それから・・」
今日の予定を話していたジャービスだったが、急に話すのを中断した。
「リチア様?どうされましたか?」
ジャービスはそう言うとじーっと僕の顔を見つめてきた。
なんとなくサーピエリの言う通りにはしない方が良いのは分かっているが、気になって仕方がない。ずっと心ここにあらずだったのをジャービスに見破られたようだ。
『トリフェイン』が何か訊くついでに、改めて生まれた時のことを聞いて「リチア様は卵から生まれましたよ」って言ってもらわないと勉強にも身が入らない気がする。
「ねぇ、ジャービス・・。トリフェインって知ってる?」
「・・なんでそれを?」
まずいことを訊いてしまったのはすぐ分かった。
ジャービスは顔面蒼白になったのと同時に見たことない杖をこちらに向けたからだ。