フェリシア初めての戦い
春の終わり。
畑でママンとおんぶされたアンリ、ねーねと草抜きをしていたら、奴が現れた!
この世界では初めて見るけど、長い身体、黒く、くねっとしてニョロニョロと近づいてくる奴!間違いない、天敵だ!
ママンもアンリもねーねも私が守らないと!畑の隅に行き手頃な大きい石を両手で持つ!奴を倒さねば!
元の場所に行き、息を整えて震える身体を落ち着けるが、興奮した頭はなかなか冷静になってはくれない。
みんなの為に私がやるしかないんだ!
石を両手で構えて、奴を『蛇』を見つめる。イメージトレーニングだ。毒を持っているかもしれないから首を石で押さえつけて、頭を潰す!上手くいくか?いや!殺るしかない!
ジリジリと蛇に近づく。こちらを脅威に思って無いのか地面を悠々と這っている。
私は横に回り込んで、わっと襲いかかる!
蛇の身体が逃げた!首をもたげて、蛇も臨戦体制になってこちらを見て威嚇する!
ばれた。ここからは生きるか死ぬかだ。蛇もシャーシャーと言っている。
またジリジリと間合いを測って近づくと、首をシャッと伸ばしてきた!慌てて、手を突き出すと持っていた石が蛇の喉にはまった!
私は無我夢中で片手で蛇を押さえつけて首をもう一つの石で力の限り叩き続ける!蛇から血が出てきた!首を切断するように叩き続けると首の約8割ほどが潰れて、蛇の身体がピクッピクッと動くだけになり、私はへたり込んだ。片手が血だらけだ。身体が恐怖から解き放たれて、涙が出てきた。
「ま、ままーー!ままーー!うわ〜ん!」
「どうしたの!フェリ!」
アンリをおんぶしたママンが慌てて近づいてきてくれた。
潰れた蛇と私の身体を隅々まで見て、フェリシアが蛇に噛まれて無いことを把握したリーザは泣いているフェリシアを撫でた。
「フェリ。守ってくれてありがとうね。でも無茶はしないで。何かあったらママに言ってくれるだけでいいからね」
泣いているフェリシアは、うんうんと泣きながら頷いてママンに身体を寄せた。
「せっかくフェリが取ってくれた獲物だものね。毒も無い種類だから解体して食べましょうか。パパも喜ぶわよ!」
びっくりして涙が止まってしまった。蛇食べるの!?
ママンは蛇の尻尾を持ってパパンの解体場へ行く。ねーねも好奇心でついてきた。
水を用意して、手際良く血を抜いて、蛇を解体する。身は少ししかとれなかったけど「フェリシアの初めての獲物だものね。みんなで食べましょう」と台所に持っていった。
私は手を洗って、ママンにぎゅっと抱きついてから畑仕事を再開した。
ママン、普通に蛇を持って解体していた。農家は蛇に慣れっこなのかもしれない。ワイルドなママンも素敵。
高ぶった気持ちを落ち着けて、この世界は弱肉強食だと思ったのだった。
我が家は周囲にある家より大きくて真新しいが、森に近い。家を建てる場所が無くて開拓して建てたのだろう。隣の家は平屋だけど、うちは2階建てだ。
これからも別の害獣がやって来るかもしれない。刃物を扱う訓練をした方が良いかもしれない。
昼食を食べてから、納屋で鎌を手に入れて素振りする。
鎌は叩き切るより引き切った方がいいんだよね。
小さな身体で素振りしていたら、ママンに見つかって鎌は没収されてしまった。
「フェリには、まだ早いわ」
家まで手を引かれて、アンリの隣に寝かしつけられた。
お昼を食べて、身体を動かしたから眠気がやってきて、あくびをすると、ママンが横から抱きしめてくれたのでMPを使い切って、こてんと寝てしまった。
パパンが帰ってきて、私が蛇を退治した事をママンが報告すると、パパンが心配して抱っこしてくれた。
「フェリシア。今日は大変な体験をしたな。頑張ったな。でも、危ない事はまだしちゃいけないぞ」
「パパ、こわかったけど、がんばったの」
「頑張ったけど、まだ、パパやママに頼っていいからな」
「うん」
ママンが料理してくれた蛇肉は1人一切れずつしか無かったけど、普通のお肉のようでパパンとママンが「美味しい」と言ってくれたから頑張った甲斐があった。食べたら普通のお肉みたいだった。ちょっと固かったけどね。
本業のパパンには敵わないな。




