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あの星に煌めきを  作者: そーら
終章
64/64

Epilogue

 



 その世界はこの世界とは違う別の星


 その世界はとても美しかった


 銀河のように広がる輝き 白の幻想的な空間


 そんな世界に二人の美しい少女がおりました


 一人は女神のように美しく 一人はその瞳に無限の煌めきを宿していました


 二人の少女は楽しく唄を歌っていました


 胸に手を当て 澄んだ声で 誰のかも分からない幸せを 心の底から 願っていました




 そんな時 世界は突然揺れを始めました

 怖くなった二人の少女は身を寄せ合い 世界の行く末をただ見ているしかありませんでした


 美しかった真っ白な煌めきの世界は 真っ黒な海に飲み込まれてしまいました




 ・・・




 とある日 一人の少女がそんな夢を見ました

 するとなんと 一人 また一人と 同じ夢を見た少女が現れました


 夢を見ていた少女たちは 何事も無かったかのように 日常を過ごします


 一人は 現実に一縷の望みをかけて


 一人は 先の見えない光を願い求めて


 一人は 純粋な心と誇りを夢現に描いて


 一人は 燃え上がる心を奥底に閉じ込めて


 少女たちはまた眠りに着く


 しかし眠りに着いたはずなのに 少女たちは夢で見た世界のステージで 不思議な声に導かれました


 "煌めきの世界を 取り戻す為に"


 "あなたたちの煌めきをこの世界に届けて"


 頭の中に響く 女神のように美しい声と 煌めきを感じる幼い声は 確かにそう言いました


 少女たちの歌は 声の望み通りに 世界に響き渡りました

 キラキラと煌めく少女たちのおかげで 闇に塗れてしまった世界も 段々と煌めきを取り戻していきました


 "ありがとう お礼に私たちの歌を捧げましょう…"


 女神のように美しい少女は 人が夢見る幻想的な美しい唄を


 瞳に無限の煌めきを宿した少女は 誰もが持つ光と闇を現した唄を




 ・・・




 少女たちは 歌った


 世界中に煌めきが 溢れるように


 少女たちの 想いが 煌めきとなり 世界中に満ちる


 共鳴し合って 広がっていく




 二人の少女は やがて姿を現し この世界に 舞い降りました

 彼女たちは 元々この世界の住人 だったのです


 少女たちを失った 煌めきに溢れた世界は 今もどこかに存在していることでしょう


 それは どこか遠い場所か はたまた すぐ近くに あるかもしれない


 それは誰にも分かりません


 けれど ひとつ 分かるのは

 その世界には たくさんの煌めきで溢れているということ

 この世界が 煌めきで溢れている限り


 それが 永遠に続きますように




 あの星に煌めきを




 ・・・




 星空学園、学園長室。

 夜の帳が下りる頃、煌々と電気が点く室内にて、麗生はその白い手に持っていたペンを置いた。


「………。」


 目の前のまだ製本されていない冊子を閉じる。

 表紙には『あの星に煌めきを』と美しい字で描かれており、その下には寄り添う二人の少女が描かれている。


 その少女は愛する娘、有葵と命によく似ている。


「…ふぅ、そろそろ家に帰らないといけませんね。」


 麗生は椅子から立ち上がり、冊子を本棚に仕舞う。その隣にはアルバムがあった。

 一ページずつめくり、懐かしさに目を細める。そして、ある日を境に途切れてしまったページを見て、麗生はゆっくりと瞼を閉じた。


「…どれだけのものを創造しても、どれだけ皇の能力を使っても、失われた時間は取り戻せない。それが何故なのか、分かりませんでした。」


 そのページを埋めようと必死になった時もあった。

 けれど、終ぞそれが叶うことは無かった。


 しかしそれは、とても当たり前のこと。


「我が皇の源、煌星神(こうせいしん)オウよ。あなたにとって人として過ごした日々は、とてもかけがえのないものだったのですね。

 時を戻すという行為は、それらを否定するのと同じこと。」


 麗生はオウの形を象った小さな像を丁寧に磨き、それに語りかけるように話す。


「私は、何度も過去を憎みました。後悔が後を絶たず、未来は真っ暗で…あなたの愛を幾度と無く否定した。

 けれど、たくさんの少女たちがこれをきっかけに光溢れる未来へと進みました。そしてそれは、私の未来にも光を差すこととなった。

 愛娘がいる世界を歩いて行ける。それ以上の幸せはありません。あなたから授かった能力に時を戻す力は、最初から必要無かったと気付きました。」


 像を磨き終えると、元にあった位置へ戻し微笑んだ。


「スメラギの王よ………、ヒトは悩み、苦しみ、進んで行く。その感情を永遠に忘るること勿れ。」


「!」


 麗生以外誰もいない室内に、幼い声が響く。驚いて振り返るも、やはりそこには誰もいない。驚いた麗生は再び像へと目線を向けた。


「…まさか。」




 少年とも少女とも言えるその声は、それから二度と聞くことは無かった。


 その声の主はもうこの世にはいないのだから。




 たった一人で、煌めき溢れる世界から


 彼女たちを見守っている。


「…我が()たちに、煌めきを。」

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