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シャトルテゴライン見本市

ミンゴロンゴが、彼の外部装甲の各所に取り付けられたカメラの映像を、ポレポレに送ってくる。


ミンゴロンゴの巨体が地響きを立てて、ゆっくりと服飾族の都市シャトルテゴラインに接近している。


シャトルテゴラインは、かつて俺が貪欲様の記憶で見たのと同様に、暗黒の空の下、不気味に聳えている。こうして見ると、高さ八十メートルはありそうだ。時折、紫の稲光が空を横切り、その表面の火焔式紋様を浮かび上がらせる。


ミンゴロンゴの船体の先端に取り付けられたネオン広告がちかちか瞬いて、酸性雨の霧雨をピンク色に染める。


同じく先端にあるスピーカーが震え、実音声の声が「たいへんお待たせいたしました。交易船ミンゴロンゴにございます。この世のすべてが揃うミンゴロンゴ、ミンゴロンゴにございます」と響き渡る。


納税に来たと思しき百眼族や車輪族の個体が、ミンゴロンゴの巨体に踏み潰されまいと必死に道を開ける。


シャトルテゴラインの下部壁面に亀裂が入り、ヒトデが獲物を食らうかのように出入り口が開いた。入口は高さ三十メートルはある。


ミンゴロンゴは自らの巨体をそのまま前進させ、シャトルテゴラインの中にすっぽりと入った。


ミンゴロンゴの背後で出入り口がゆっくりと閉じる。


シャトルテゴラインの内部は、おおむね貪欲様の記憶通りだった。中心部に大きな吹き抜け構造があり、各階層の断面がみえている。ただ、以前は、一部階層に蜂の巣のように〝個室〟が並んでいたのだが、個室は消え、チューブやパイプ、歯車のようなものが絡み合った大型機械が代わりに収まっていた。


各フロアの、吹き抜けに面した通路には、大勢の服飾族が並んでいた。彼らの身体は一様に真っ黒な金属でできている。スーパーモデルのようにほっそりした体型で、かかとには高いヒール。黒い体のなか、顔だけは能面の様に白い素材で作られており、切長の目の奥には赤いレンズが輝いていた。最果て村の村人たちのカメラより、数十倍も性能が良さそうだ。


何百人という服飾族は無言でミンゴロンゴを見下ろしている。その顔には強烈な侮蔑が浮かんでいた。見つめることすら穢らわしいといわんばかりだ。


ミンゴロンゴの主人である商人たちは、服飾族の高慢な態度については、何も気にしていないようだった。甲板の上に立ち、ぺこぺことお辞儀している。


商人たちは透明化を解いており、俺はようやく彼らを視認することができた。


商人も人型の機械生命だった。その身体は針金の様に細い。胴体も、手足も、頭部も、すべてが直径二十センチほどの筒のような形状をしている。顔には縦に二つの穴が並んでいる。上はカメラ、下はスピーカーらしい。


一部の商人はゴツいパワードスーツのようなものを着込んで、商品の人型機械たちに、甲板に整列するようせきたてている。俺たちを襲撃し、ポレポレを攫ったのは、このパワードスーツ組だろうか。


商人たちのリーダーと思しき男が、商品の人型機械たちの前に立った。リーダーは針金の様な身体を、アルミホイルに似た金属的な布地のローブで包んでいた。袖から出た細い腕を、優雅とは言い難い動きでふる。

「高貴なるシャトルテゴラインの皆様。毎度のご用命まことにありがとうございます。今年も皆様のお眼鏡に叶いますよう、選りすぐりの商品を集めさせていただきました」


シャトルテゴラインの最上階層で、頭に髪のような飾りを付けた服飾族が首を横に振った。

「選りすぐり? そこに並んでいるゴミたちがですか?」


「これは手厳しい。今年は基準が厳しいのですね。しかしご安心ください。在庫は他にもたくさんございます」

商人頭の指示で、第一陣の商品たちが船内に下げられた。


それと同じくして、ポレポレのいる倉庫の扉が開いた。

パワードスーツを着た商人が入ってきて、手を叩く。

「さあさあ! お前たち、出番だぞ! しっかり売られてこい!」

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― 新着の感想 ―
[一言] ゴミ食べてるのにゴミをバカにする服飾族さんたち…
[一言] 今回も面白い。 次も楽しみ。
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