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ルンバ先生

オタがいう。

〝ザイレン様は体格は小さくとも、山よりも大きな力をお持ちなんじゃ〟


最果て村の面々がいっせいに頷く。


イエトナイトはすぐにその場に膝をついた。

山頂村の人々もならう。

〝ザイレン様、どうか我らもあなた様の庇護にお加えください〟


どうやら山頂村の人々も、オタやポレポレたちと同じように人のいい種族らしい。俺のようなチビ助が貪欲様を倒したという話を疑ったりせず、素直に受け入れている。


オタがいう。

〝ザイレン様、わしらはあなたに救ってもらった身です。そのわしらが、こんなお願いをするのは憚れるのですが、どうか山頂村のものたちも、この村に住むことを許してもらえませんでしょうか。彼らは真面目で心優しい人々なのです。そして、わしらと同じようにこの厳しい世界で苦しんでおるのです〟


マニュが嬉しそうにいう。

〝ご主人様! これは「サンロール緊張帯にタキオン振動」いえ、古代地球の格言でいうなれば「渡りに船」ですよ。村人イムリを直すには膨大な資源を集めるための人手が必要です。ぜひ、受け入れてください〟


現金なやつだ。思わず、電子ノイズを出してしまった。人間なら小さなため息というところか。


〝オタがそういうなら、俺は喜んで山頂村の人たちも守るけどーーいいのか? 服飾族のことを説明しておかなくて〟


オタが〝あ〟と呟いた。


〝服飾族?〟イエトナイトが首を傾げる。


オタが、貪欲族のさらに上に君臨する服飾族のこと、そして彼らと「話し合い」を持つための計画を立てていることを説明した。


イエトナイトは腰が引けるかと思いきや、逆に〝わしらも、ぜひお前さんらに協力させてほしい〟といった。


山頂村の住人たちが一斉に頷く。


イエトナイトがガタのきた拳を握る。

〝その服飾族というものたちが、資源の徴収をやめてくれれば、この世界からは争いが消えるかもしれんのじゃろう? わしらも何としても手伝いたい。ただ、その、わしらに何ができるかはわからんのじゃが〟


オタも肩を落とす。

〝ザイレン様、わしらも同じです。話し合いたいとは思っとるのですが、そのためにどうすればいいのか。ザイレン様にだけ荷を背負わせる真似はしたくないのです〟


俺は肩をすくめたかったが、俺の身体には肩がない。

〝それじゃあ、山頂村の人たちの領域まで含めて、出来る限り腐食耐性のある素材を集めてくれ〟


〝それだけですか?〟と、オタ。


〝うーん。じゃあ、もう一つ。車輪族の生き残りに仕事を与えてくれ。少しでも素材集めを速めたいんだ〟


俺は村の角をチラリと見た。

車輪族たちは、居心地悪そうに村の端っこで小さく固まっている。


イエトナイトが驚きの念を漏らした。

〝貪欲様!?〟


〝その一部だった子供たちだ〟俺は車輪族に義肢を振った。〝いろいろ思うところはあるだろうけど、もう、悪さはしないはずだからさ。できるだけ、受け入れてやってほしいんだ〟


俺はここしばらく、毎日時間をとって彼らに〝道徳〟の授業を行なってきた。彼らが俺との会話で発する電波言語の〝感じ〟を見る限り、俺が語る古代地球の倫理感を、ちゃんと理解しているはずだ。


オタがうなずく。

〝ザイレン様がそうおっしゃるなら、わたしたちも彼らを信じます。彼らは貪欲様の一部として悪行を働きましたが、それは親であった貪欲様の責であり、子に責めを負わせようとは思いません〟


〝ありがとう。彼らへの授業はこれからも続けるよ〟


よし、話は終わった!と思いきや、ポレポレが手を上げた。


〝ザイレンさん。授業、あたしも聞いてみたいんですけど〟


他の村人たちも、次々に手を挙げ、〝自分もぜひザイレン様のお言葉を拝聴したいです!〟〝ずるい!わたしも!〟と声を上げる。


〝みな、ザイレン様のお考えをもっと知りたいのですよ〟オタがそういいながら、おずおずと手を上げた。


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