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円盤勇者

オタいわく、山頂村はこの最果て村から徒歩半日のところにある。


村人は全部で七名、円錐状の山のてっぺんに建てた三階建の集合住宅で暮らしており、この最果て村の住人とは縁戚関係もある(縁戚とはどういうものなのか?と聞いたところ、あちらの村の長の息子の身体は、かつて亡くなったオタの姉のボディパーツを流用して作られたということだった)。


その七名の村人全員が、俺が広場に作った給電器付き電柱のそばに立っていた。外見は、この村の住民とほとんど変わらない。身体は、ゴミのなかから拾い集めたパーツで出来ており、酸化防止用の有機系油がベタベタに塗りたくられている。


オタが頭のアンテナを伸び縮めすると、向こうの機械人間のなかで、いちばん背の高い一人が、その場で三回スクワットをした。わからない。これが、機械人同士の「やあ」なのか?


さきほどの背の高い人物がいう。

〝285日ぶり。最果て村のオタ〟


〝285日ぶり。山頂村のイエトナイト〟オタがまたアンテナを動かす。〝いったいどうしたんじゃ? お前さん方が、揃って降りてくるなんざ、わしが村長になったとき以来じゃないか〟


山頂村の村長イエトナイトが、ちらりと俺を見た。

身体にむず痒さが走る。


マニュがいう。

〝スキャンされました。わたしたちのそれほど高精度ではありませんが、この村の住人よりは進んだ電子装備を身につけているようですね〟


イエトナイトがオタにいう。

〝そちら、見ない顔じゃが、ご客人かの?〟


〝おお、これは失礼しました。ザイレン様、こちら山頂村のイエトナイトです〟


イエトナイトが人間のように頭を下げてから、オタに向き直る。

〝オタよ、じつは今日、皆で山から降りてきたのはお前さんに頼み事があってのことなんじゃ〟


〝どんなじゃ? わしのパーツでよければ、機能停止後、一部をそちらにやってもいいぞ。左足はまだ行き先が決まってないでな〟


〝お前さんの親切心には頭が下がるわい。だが、ちと違うじゃ。わしらは、その、お前さんの村に入れてほしいんじゃ〟


最果て村の村人たちが互いの顔ーーほとんどがカメラアイしか付いていない顔ーーを見合わせた。


イエトナイトが続ける。

〝お前さんらも知っての通り、山頂村も貪欲様に貢ぎ物を要求されとった。あの怪物には、さんざ煮湯を飲まされた。これまで食べられた村人は六人にもなるんじゃ。ところが、昨日、うちの村のものが朝の獲物の蟲を解析してみると、なんとこの村で貪欲様が破壊されたと!〟


食べるために狩った、小型機械生命の記憶を覗いたということか。


イエトナイトがいう。

〝お前さん方、ついにやったんじゃな! 「勇者」を作るのに成功したんじゃろう? 


それでなんじゃが、ぜひ、わしらも守ってもらえんかと思ってな。もちろん、ただとはいわん! 貪欲様に定期的に渡していた分の資源はちゃんと渡す。


どうかわしらも守ってくれんか〟


オタが首をキコキコ横に振る。

〝イエトナイト、わしらは何も作ってなどおらん。わしらは、ただ、このがご客人のザイレン様に助けられただけなんじゃ〟   


〝そちらの小さい方が?〟イエトナイトが驚きの感情を放ちながらいう。


山頂村の人々が、一斉に俺を見つめた。

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