嬉しいことにお風呂で女友達が2人増えました
全員終わって、魔法適正は大体皆同じくらいの数に別れた。
癒やしの聖魔術はモモンガさん一人だけだった。
これで魔導実技の授業は私は水魔術になった。
水魔術なんて使ったことがないけど、まあ、少しは出来るだろう。
一部の先生が不審そうに私を見ていたのは何でだろう?
授業が全て終わったので、私達は慌てて先に大浴場に向かった。大浴場は時間によっては混むのだ。
一番なら空いているはずだ。
平民の部屋には風呂がないのだ。
「マリアンはお貴族様なんだから貴族の部屋にすれば良かったのに」
私が言うと
「貴族って付き合いが大変で、我が家はあんまり社交をしていないのよね」
と言われてしまった。貴族は貴族なりに付き合いとかが大変みたいだった。
大浴場の脱衣所は授業が終わったばかりだったからまだガラガラだった。
この大浴場は地下から汲み上げた冷泉を温めた温泉だった。これは大浴場だけの特典だ。お貴族様にはお風呂もついているが、温泉ではない。
私はさっさと服を脱ぐと浴場に入った。
体をさっと洗うと、湯船に飛び込む。
「うーん、いい湯だ」
私は笑って手ぬぐいを頭に置いてご機嫌になる。
「いい湯だって、おっちゃんみたいなこと言うな」
「何言っているのよ。いい湯なのは事実でしょ」
マリアンに私が言い返す。
「その言い方がおっちゃんみたいよ」
「そうかな」
私にはよく判らなかった。
「あなた、お風呂でも眼鏡はずさないんだ」
ローズが驚いて聞いてきた。
「うん、私極度の近眼だから、このメガネはずしたら見えなくて、このメガネは防錆も完璧なのよ」
私は言う。と言うかメガネ外したら私の素顔がバレてしまうではないか。
そう、寮が大浴場になると聞いて、私はパニックになったが、おばあちゃんが残してくれたこのメガネは水の中でも大丈夫だったのだ。
そう言いながら、私はローズの胸が大きいのが気になった。クラリッサもそこそこだ。
マリアンは私とおんなじくらいか。私はほっとした。
「エレ、何余計なこと考えているのよ」
そう思ってニヤニヤ笑ってみていたらマリアンに怒られた。
「だって、マリアン、私とおんなじで小さいじゃない」
「あんたのより大きいわよ」
「じゃあ比べる?」
私が言うと
「あんたらどっこいどっこいじゃない」
ローズに呆れられた。
「ふんっ、じきに胸なんて大きくなるんだから」
「そうよ。あんたらみたいに大きくは・・・・ならないか」
「エレ、何諦めているのよ」
マリアンに怒られた。
「うーん、お母さんの胸の大きさは覚えていないけど、おばあちゃんは小さかったから」
「年いって垂れてただけじゃないの?」
「そうかな」
「そうよ。私はお母様も小さかったけど諦めないんだから」
マリアンは断固言い放った。
胸の大きさに何かこだわりがあるみたいだ。
「まあ、胸が小さかっても普通は問題ないじゃない」
私が慰めるように言うと
「何言っているのよ。胸の大きさは大切よ」
「そうよ、いい男捕まえるには胸が大きいほうが良いに違いないじゃない」
「そうよ。私達はこの3年間が勝負なんだから」
マリアンの言葉にローズとクラリッサが叫んだ。
この二人の言葉には実感がこもっていた。
「へえええ、二人はこの2年間で男捕まえるつもりなんだ」
マリアンは呆れて言った。
「当然じゃない。この2年間にいい男捕まえないと、どこかの貴族の爺の後妻にされるかもしれないし」
ローズの言葉には危機感がこもっていた。
「えっ、そうなの」
私は驚いて聞いた。
「うちは兄貴が継ぐから、私はどうでもいいと言うか、父としたら絶対に商売の道具なのよ。だからひひ爺の慰みものになるなんて絶対に嫌」
商人の娘は娘で大変みたい。
「ローズのところはそうよね。私のところは子供は私しかいないから能力の高い婿を迎えないといけないから、それはそれで大変なのよ」
クラリッサが言う。
「だから、あんたみたいに王太子殿下が良いなんて夢見ている娘は気楽でいいわって思ってしまうわ」
クラリッサに脳天気と言われてしまった。
「何言ってるのよ。私はあんたらと違って、親いないから手に職つけないと死ぬしかないんだから。男なんてかまっている暇はないのよ」
私の言葉に商人の娘の二人は目を見開く。
「死ぬしかないって」
「誰も親戚はいないの?」
「母は小さい時に死んだし、父は騎士だったんだけど6歳の時に王都の傍であったスタンピードで死んじゃったの。私をここまで育ててくれた祖母も去年死んじゃって・・・・」
「エレ、あなた大変だったのね」
マリアンがいきなり抱きついてきた。
「あなた行くところ無かったら私の所にいらっしゃい。男爵家で雇ってあげるわ」
「本当に!」
私は喜んだ。男爵家は貴族の爵位としては一番下だが、それでも人口の中では圧倒的に地位の高いお貴族様だ。平民の女の子一人くらい余裕で雇ってくれるだろう。
「エレ、行くところ無かったらうちの店でも雇ってあげるわよ」
「私は跡継ぎだからあんたを雇って上げてもいいわよ」
ローズとクラリッサも言ってくれた。
「うそ、みんなありがとう!」
私の両目から涙がでてきた。
「ど、どうしたのよ」
「エレ?」
残りの3人は私がいきなり泣き出したから慌てた。
「だって、おばあちゃんが亡くなってからこんなに優しい言葉をかけてもらったの初めてなんだもの」
私は涙を必死に拭いながら言った。
「何言っているのよ」
「そうよ、私達、と、と、友達じゃない」
「友達は助け合わなくちゃ」
「えっ、友達になってくれるの」
マリアンはそうかなと思っていたけど、ローズとクラリッサからその言葉が出るとは思わなかった。
「当然でしょ。私達一緒のクラスメートだし」
「あんた、ドジそうだから守ってあげないと」
なんか最後の一言は頷けなかったが、ローズとクラリッサは最初は嫌なやつだと思ったけど、こんなにいいやつだとは思わなかった。
私は3人に慰めてもらいながら、久しぶりに幸せな気分になっていた。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
今日からは1日2回更新になります。
ブックマークまだの方は出来たらして頂けるとありがたいです。