王太子視点9 俺の聖女は絶対に離さないと女神に誓いました
翌朝、俺はテディからとんでもないことを聞いた。
何でもワイルダー嬢の素顔を見て、男性陣の多くがワイルダー嬢にアプローチしようとしているというのだ。
「そうか、そいつらのリストを上げろ。早急に親の貴族に抗議を入れろ」
「えっ、しかし、パーシ、それは横暴では」
テディが驚いて言う。
「俺が機嫌を損じたでもなんでも良い。すぐにやれ」
「そこまでやるのか」
「俺がミニ聖女を探していたというのはある程度の噂になっているだろう。それがエレイン嬢だったと大大的に流せ。こうはしていられない。俺は直ちに女子寮の入口に向かう」
俺はそう言うと呆れる側近たちを置いて、前日手配していて、今まさに届いた花束を持って女子寮に向かう。
しかし、時すでに遅く、エレイン嬢は多くの男達に囲まれていた。
「ちょっと待ったーーーーー」
俺は大声を上げていた。
皆がこちらを見る。もう他の奴はどうでも良かった。俺は眼鏡を掛けたエレイン嬢のみを見ていた。
もう他の男はどうでも良い。俺は10年前からずうーっと彼女を探していたのだ。
「エレイン嬢、どうか私の愛をお受取りください」
俺は眼鏡を掛けたエレイン嬢の前に跪いて花束を差し出した。
下から見上げたエレイン嬢はメガネを掛けていても多少はミニ聖女の面影がある。
「ありがとうございます!」
なんと嬉しいことにエレイン嬢は俺の花束を受け取ってくれたのだ。
他の男達が騒然としている。
「君たち。私は昔命を助けてもらったエレイン嬢をこの10年間ずうーっと探していたのだよ。それがやっと見つかったのだ。私は彼女を君たちに渡すつもりはない」
俺ははっきりと他の男達に言い切った。何か侯爵とか伯爵の令息がいる。こいつらは俺に喧嘩を売っているのか。俺が少しにらみつけると、慌てて目をそらした。
エレイン嬢は真っ赤になっていた。メガネ姿でも、彼女が俺の聖女だと判ってからは愛しく感じた。俺は彼女が7歳の頃からずうーっと想っていたのだ。浄化とヒールの違いも判らない、おっちょこちょいのところもある彼女を探していたのだ。
「ちょっとお兄様、何言っているのよ。お兄様は、エレとくっつくことなんて絶対にないって豪語していたじゃない。それを何いけしゃあしゃあと」
マリアンが俺に言ってきたが、マリアンは言葉を間違えた。俺に対してお兄様と言ってしまったのだ。
「えっ、皆どうしたの?」
マリアンが周りの反応に気付いて慌てたした。
「マリアン、あなた王太子殿下の妹様だったの」
マリアンの友達の証人の娘の確か、ローズだと思う令嬢が驚いて言った。
「えっ、うそ、いや、そんな事言った?」
マリアンは慌てだした。
ふんっ、俺に教えてくれなかったからだ。俺はこれで妹をエレイン嬢から遠ざける手段を見つけてほくそ笑んだ。
「そうだ、諸君に紹介しよう」
ここぞとばかりに俺は声を上げる。
「ちょ、ちょっとお兄様」
そう言ってマリアンは慌てて口をつぐんだがもう遅かった。また兄と言った。
「うそ、マリアンは王女様だったんだ」
「ええええ!」
皆一斉にマリアンを見る。
「いや、今のは冗談で」
「そう彼女はマリアン・フィールド。私の腹違いの妹だ」
俺は言い切った。
「お、お兄様!」
マリアンは必死だが、もう遅い。文句は自分の口に言うことだ。
「彼女には今までエレイン嬢を探すのに協力してもらうために、身分を隠して学園生活をおくってくれていたのだ」
マリアンは俺の言葉に絶句していた。
「ついでにいうとエレイン嬢は私と相思相愛だが、マリアンはまだそれと決まった男はいないぞ」
俺はエレイン嬢を自分のものだと一方的に宣言すると同時に、マリアンがフリーだと一同に宣言した。だって、マリアンが好きな男がいるという話は聞いたことがないし、今まで、エレイン嬢のことを教えてくれなかったことに対する嫌がらせだ。
それに、マリアンは俺が俺の聖女としか付き合わないと言っていたのに、親から相手を次々に紹介されるのを笑ってみていた。その大変さを身も持って知れば良いのだ。
俺の言葉に俺とエレイン嬢を見て諦めていた男たちが、色めき立った。
何しろ相手はこの国の唯一人の王女殿下なのだ。父の隠し子がもういない限り。
「王女殿下!」
「殿下良しければ私のプレゼントをお受取りください」
「マリアン様」
「いや、抜け駆けするな。殿下。よろしければ我が侯爵令息である私と」
「いや、一緒のクラスメートの縁で私と」
「外務大臣令息のこの私と」
皆一斉にマリアンを取り囲んだ。
「ちょっと、お兄様、覚えていなさいよ」
「ふんっ、もともとばらしたのはお前のほうじゃないか」
俺は笑って言った。俺に酷いことをした報いだ。
「ちょっといい加減にしてよ」
マリアンはそう言うと男どもから逃げ出した。
「ちょっとまってください!」
「殿下!」
男たちが追いかけて行った。
やっと邪魔者が消えた。
俺はエレイン嬢とやっと晴れて二人きりになれた。
俺はこれほど嬉しいことはなかった。何しろ、今まで探し求めていた俺の聖女とやっと一緒に歩けるのだ。
「さあ、邪魔者達がいなくなったから、行こうか」
「えっ、でも」
エレイン嬢は赤くなっている。その姿もとても可愛かった。
でも、ここからが勝負だ。強いては事を仕損じるだ。
「エレイン嬢。私はずうーっと君を探していたんだ。レイモンド爺の眼鏡に騙されたが、君を思っていたんだ。徐々に一歩ずつでいいから、まず友達からでもいいから関係を始めてくれないか」
俺はエレイン嬢の前に再度跪いた。
エレイン嬢は、真っ赤になって頷いてくれた。
嘘ーーー。頷いてくれた。俺の聖女が俺の言葉に頷いてくれたんだ。
俺は思わず彼女を抱きしめそうになったが、ここはまだだ。まだ全然彼女と仲良くなっていない。俺は必死に自制した。
残っていた女どもからキャーキャー悲鳴が上がるのを聞きながら、
「じゃあ行こうか」
俺は腕を差し出したが、エレイン嬢は恥ずかしいのか固まったままだ。
「さあ」
俺は少し強引に出ることにした。さっとダンスの時にリードするようにエレイン嬢の腰に手を回したのだ。
やった!
俺はゆっくりとエレイン嬢の腰に手を添えて、歩かせ始めた。
俺はとても幸せだった。邪魔なマリアンをもっと邪魔だった男どもと一緒に追い出して、エレイン嬢とこうして二人で歩き出せたのだ。
必死に10年間探し続けた聖女様をやっと見つけられて、今その腰に手を添えて一緒に歩けている。もう死んでも良かった。
俺は本当に幸せだった。
そして、もう絶対に俺の聖女は離さない!
そう、俺は女神エリーゼに誓ったのだった。
ここまで読んで頂きありがとうございますした。
この話の続編書いていこうと思います。次は王宮に呼ばれる編です。
できるだけ早めに書いていきます。ブックマークまだの方はぜひとも!
一方、新作
「王太子に婚約破棄されたので、ぶった斬りました!何を?!出来損ない令嬢の波乱万丈恋愛物語」
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まだお読みでない方はぜひとも読んで下さい。




