王太子視点7 やっと俺の聖女に会えました
俺は直ちに作戦を考えた。俺はミニ聖女を10年間探し続けたのだ。
マリアンらに邪魔されたくらいで、はい、そうですかとあっさり諦められるわけはなかった。
それに謝るべきことは即座に謝らなければいけない。
まずは邪魔なマリアンだ。まず、こいつを何とかワイルダー嬢から遠ざけないといけない。
俺宛に母から心配だから帰ってこいと手紙が来ていたので、早速宛名をマリアンに修正して出し直す。魔術でちょこちょこっとやればこれくらいお茶の子さいさいだ。
これを妹の邸宅に送れば、少なくとも多少の時間稼ぎにはなるだろう。
そして、マリアンが女子寮を出ると同時に女子寮に潜入させる犠牲者を、2人選抜した。
更に宰相にそろそろ父上も妹の婚姻について考え出しているという、ガセ情報を流した。
もう、聖女に会うためには形振り構っていられなかった。俺は本当に10年間探しまくったのだ。折角彼女がすぐ側にいたのに、それもカフェにデートまでしたのに、判らなかったとは、もう、本当に自分を許せなかった。
しかし、知っていて教えてくれなかった、マリアンもマリアンだ。
まあ、確かにデートはさせてくれたが、俺本人はミニ聖女本人と判っていなかったのだから、また違うだろう!
俺の態度は絶対に彼女に、俺の気持ちを誤解させた。
俺は別に彼女の容姿云々を見て、付き合うことをありえないと言っていたわけではない。
彼女の姿は俺の覚えているミニ聖女の姿と違いすぎていたのだ。
確かに金髪だったけど、目の色は眼鏡で見えなかったし・・・・・
マリアンも酷い! 俺がどんだけ必死に探しているか知っていたくせに、はっきりと教えてくれてもいいじゃないか。
あの眼鏡が悪い。あの眼鏡、絶対にレイモンド爺の悪意が込められたに違いない。
俺が必死に探していたのを爺も知っていたはずだ。
ヒントは色々言いましたとか、気付かない殿下が悪いとか好き勝手に言ってくれたが、俺のこの必死さを知っていたくせに。この2人には絶対に仕返ししてやる。俺の純情な気持ちを弄びやがって。俺は心の奥底で誓った。
クッソーーー、マリアンのせいで、本人の前で、君とは別に好きなやつがいるって言わされてしまっているじゃないか。絶対に彼女を傷つけたに違いない。
マリアンのやつ、俺がどれだけ必死なのか知っているはずなのに、俺のことを陰で笑ってやがったんだ。許せない。
俺はこうなったら、徹底的にやる方だ。
まあ、まず、ワイルダー嬢に土下座してでも謝ろうと決心した。
俺は学園の応接室にマリアンの執事がやってきたとの報告をウィリアムから受けた。
「本当にやるのか?」
「あたり前だ」
「いや、でも」
「やらないといけないのか?」
俺の言葉に潜入要員のテディとガムが嫌そうに言う。
「当然だ。テディ、お前の帝国語の赤点は、俺がレポートでなんとか済むように頼んでやったよな」
「その通りだ」
テディは諦めて頷いた。
「ガム、この前、お前が婚約者と喧嘩した時に、仲直りの為に王都で超人気で普通は取れない人気のオペラのチケットを取ってやったのは誰だ?」
「殿下です。分かった! やれば良いんでしょ!」
「そう、君等の困っている時に助けたんだから、俺の困った時に助けてくれてもいいだろう」
俺は二人に頼み込むと言うか強制的に言った。
俺もこの10年間必死に探してきたんだ。俺の多少の我儘くらい許してくれるはずだ。
「よし、じゃあ作戦開始だ」
女子寮の向かいの部屋から俺たちは行動開始した。
まずテディが正面玄関から潜入するというか、潜入しようとして見つかる。
ついでガムが反対側から入って階段の手前で見つかる。
俺は壁から潜入するんだ。
俺は必死に階段のあるところの壁をよじ登りだした。
2本の剣をハーケン代わりに交互に打ち込む。
下で騒ぎが起こった。まずテディが予定通り見つかったのだろう。
俺は必死に登る。
そして、なんとか、ワイルダー嬢の階層に到達する。
まずマリアンの部屋。ここは軽く伝って、そして、ワイルダー嬢の窓をノックする。
窓を開けたのはマリアンの侍女のリンだった。
「で、王太子殿下!」
驚いたリンが顔を出した。
「リン、お願いだ。部屋に入れてくれ」
俺は頼み込んだ。
「えっ、でも、マリアン様が」
リンは渋った。
「リン、君は俺が必死にミニ聖女を探していたのを知っているよな」
「いや、それは、はい」
「マリアンも知っていたよな」
「それはおそらく」
リンは仕方無しに頷く。
「なのに、俺に俺が探していた聖女がどこの誰かはっきりと教えてくれないのは酷くないか?俺はマリアンに教えてもらえなくて、ワイルダー嬢に酷いことを言ってしまったんだ。
俺にワイルダー嬢に謝る機会をくれても良いんじゃないか」
「あのう、それはそうは思いますけど、でも」
「リン。そろそろ落ちそうなんだけど」
俺は言ってみた。
「えっ、いや、そんな」
リンは慌てて窓を全開にしてくれた。言ってみるものだ。もう俺は俺の聖女に会うためなら何でもするつもりだった。
「ありがとう」
俺はやっと部屋に入れた。
そして、そこには夢にまで見たミニ聖女の成長した姿があった。
その美しさは俺の頭にあった想像以上だった。
俺はその姿に、ただただ見とれていた。
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