王太子視点6 やっと必死に探していたミニ聖女に会えたのに、自分の不注意、いや周りに邪魔されて傍にいることもかないませんでした
アシュバートン領が魔物に襲われたという、情報はなかなか次の報告が入ってこなかった。
あそこはこれまであんまり、魔物なんか出たことはないはずだ。アシュバートン伯は、何をしているのだろう? 俺はなぜかとても焦燥に駆られていた。現地のアシュバートン伯家の屋敷が魔王によって皆殺しにされていたなんてその時は思いもしなかったのだ。
夜になっても詳細は入ってこなかったので、とりあえず俺は学園に戻った。
次の日、学園は大騒ぎになっていた。
「これはまずいな。詳しい情報は入ってこないのか」
俺は昼休みにやってきたテディに聞いた。
「何か伯爵の屋敷が魔物に襲われたらしい」
テディが小声で言ってきた。
「そうなのか!」
「詳しいことは今ガムが確認に行っている」
「ちょっとまずいな」
俺たちが話している時だ。
「殿下!」
ピンク頭のモモンガがこちらにかけてきていた。
「魔物がネイサンの領地で出たんですって。私怖いんです」
モモンガが俺にすり寄ってきた。おいおい止めてくれよ。
テディが苦笑いしている。
側近なら止めろよ。
と思った時だ。
男が一人、近づいてくるのが見えた。どこかで見たことのある男だ。
でも、何かとても禍々しい感じがする。
「ルイーズ」
男はモモンガに声をかけた。
「あんた、何故ここにいるのよ。学園を解雇されたはずよ」
振り返ったモモンガが驚いて叫んでいた。
えっ、そうだ、こいつ、無理やり、モモンガの手を握って言い寄ったとかで学園を解雇された男だ。
「お前、また他の男に言い寄っているのか」
男は怒気を発して俺を見た。
おいおい俺は被害者だ。俺はまだこいつがなにかまでは理解していなかった。
男が更に近づいてくる。これはまずいやつだ。何かすごい瘴気を感じる。
「おい、お前、それ以上殿下に近寄るな」
側近のテディが男と二人の間に入る。
しかし、次の一瞬でテディは吹っ飛ばされていた。
「キャーーー」
モモンガが悲鳴を上げる。
俺はモモンガをかばおうとして、男から魔術で攻撃されたのだ。防御魔術をかける暇もなかった。凄まじい衝撃を受けて弾き飛ばされていたのだ。おれは次の瞬間には気を失っていた。
俺は子供の頃の夢を見ていた。
魔王に吹っ飛ばされた後にあのミニ聖女にヒールをかけてもらったのだ。
体全体が温かい感じがする。この感じはあの子だ。
俺はハッとした。
その目の前で魔王と戦っている女の子が見えた。女の子はもう子供ではなかった。大人になっていた。
金髪をなびかせてあいも変わらず、ヒールで魔王を攻撃していた。
いくつになっても相変わらずだな。
おれはその姿に安心してまた気を失ってしまった。
どれくらい経っただろうか。俺は慌てて飛び起きた。
「やっと気付いたか」
そこにはウィリアムがいた。
「どうなったんだ?」
俺はウィリアムに聞いた。
「魔王はワイルダー嬢が退治してくれた」
「ワイルダー嬢が?」
俺にはその言葉の意味がよく判らなかった。
「そうだ。お前が探していたミニ聖女はワイルダー嬢だったんだよ」
「あの魔王相手にヒールしていたのはワイルダー嬢だったのか」
俺は驚愕した。
「あのメガネちゃんが・・・・ミニ聖女・・・・」
俺は頭の中が理解できていなかった。
「でも喜べ、絶対にお兄様には渡さないとマリアンが言っていたぞ」
「あああああ!」
俺は頭を抱えてしまった。どこが喜べなんだ。ウィリアムの奴、他人事だと思って。
たしかにマリアンには絶対にワイルダー嬢が好きになるなんてあり得ない的なことを言ってしまったいた。
いや、ちょっとまって。これは本当にまずい。
直ちにワイルダー嬢に面会を求めに行った。
まだ完璧ではないから寝ていろというウイリアムらは完全に無視した。
10年間探した相手なのだ。なのに、会っていたのに気付けなかった。それも、とんでもない失礼なことを言っていた。絶対にすぐに謝らないと。
でも、寮監には、ワイルダー嬢はまだ倒れているから会わせられないの一言だった。
俺も看病がしたいと言うと何をとち狂ったことを言うのかと白い目で見られて追い出されてしまった。
そんな、10年間も探し回ったのに!
俺はすぐに妹を呼び出した。
「何なの!、お兄様。私はエレの看病で忙しいのよ」
妹は冷たかった。
「いや、俺もぜひとも看病させて欲しい」
俺が言うと
「何ふざけたこと言っているのよ。お兄様は男です。女子寮は男子禁制です」
「そこをなんとか」
俺が拝みこむと、
「そんなの許せるわけないでしょう。そもそも、お兄様がそう言う理由がよくわかりませんわ。エレのこと興味ないみたいにおっしゃっていらっしゃいましたよね」
妹の目が冷たい。
「いや、それは、今回も命を救ってもらったし、前回も救って貰ったから・・・・」
「何言っているんですか。何回も会っていたにもかかわらず、本人だと判らなかったのでしょう。お兄様は!」
マリアンが白い目で言う。
「あんな眼鏡していたらわからないだろう」
「ふんっ、その程度だったんでしょう。私、お兄様には何度も、付き合ってみたら気付くかもしれないと言いましたよね」
「いや、だから、それは」
俺は必死に言い訳しようとした。
「どうでもいいですけれど、忙しいので邪魔なお兄様は出ていって下さい」
俺はマリアンに追い出されてしまった。
そんな・・・・俺は呆然とした。
それは確かに、気付かなかった俺が悪いとは思う。
でも、でも、でも・・・・俺は10年間も探し求めていたのに・・・・
後で、あの眼鏡を作ったのがレイモンド爺だと知った。
あのクソジジイ、絶対にあの眼鏡に俺が判らないようにするための、仕掛けかなんかを組み込んでいやがったのに違いない。
俺は途方に暮れていた。10年間もあの子を探し求めていたのに・・・・
ここまで読んで頂いてありがとうございます。王太子視点あげておきます。
もう一話か二話更新する予定です。




