005 確かお前の家は商いを営んでいたな2
というわけで僕は冒険者としてクレンティン商会にやってきた。シンシアの実家でもあるが、彼女が嫌がるのでパーティーにいた時にはここを利用したことが無かった。
店の隣には大きなビニールハウスがいくつも建てられていた。透明ではないので中の様子は分からないが、この中で薬草だか雑草だかを育てているのだろう。
ポーションの棚にやってくると色とりどりのポーションが並べられていた。上級、中級、初級、解毒、耐熱、耐寒など種類は様々だ。
問題の初級ポーションは緑色をしている。薬草を煮詰めて作るのでまんま草の色だ。
「若干、色が濃すぎる気がするなぁ…」
棚には『冒険者の味方!、安くてよく効くクレンティン商会の初級ポーション。冒険の準備はこれで決まり!』とよく分からないポップとともに宣伝文句が書かれていた。
「まあいいだろう」
効果のほどは家に帰ってから試す。僕は初級ポーションを大人買いすることにした。支払いに行くとそこにはデカデカと大きな文字で、『Sランクパーティー黎明の誓い御用達』と書かれていた。
「あの店員さん、これって」
「ああ、なんとウチの店はSランクパーティーの『黎明の誓い』御用達の店なんだよ。すごいだろ?ここで買い物すれば運気も上がってご利益間違いなしさ!兄ちゃんもたくさん買っていってくれよ」
「は、はあ」
「それに、兄ちゃんだけにはこっそりと教えるが、実はなんと!ここの娘さんであるシンシアさんてのが何を隠そう黎明の誓いのメンバーの一人のシンシアさんなんだよなあ!今日はたまたまいないが、足しげく通ってくれたらいつかお目に掛かれるかもしれないぜ!」
「へ、へえ、じゃあ、明日もこようかな」
「おうよ!これからもクレンティン商会をご贔屓に~」
Sランクパーティーというのは言うてそうそうなれるものじゃない。国単位で見ても10パーティーもいなかったはずだ。Sランクは冒険者の頂点に位置するから尊敬されるし、憧れの的だ。
客寄せの宣伝にこれ以上ない効果をもたらすだろう。娘の冒険者活動には不干渉という話だったが、Sランクともなれば別なのだろう。
◇
―パシィイッ!…パシィイッ!
アグノニス家の地下室では拷問用の鞭が振るわれていた。貴族の屋敷にある地下室といえばワイン室か拷問部屋しかない。
「やぁぁぁ、シルベルト様どうかお許しください。…カノンはこれ以上耐えられませんっ」
「はぁはぁ、うるさい!お前は僕専用のメイドだろうが!僕はこの粗悪ポーションの検証をしなくちゃいけないんだ!まずは体を痛めつけないと回復したかどうかわからないだろうが!それっ続けるぞ!」
――パシィイッ!…パシィイッ!
鞭は容赦なく打ち付けられる。雪のように白い柔肌には痛々しくも赤い鞭の後が残っていた。
「ぶひぃっ!はぁんっ!いいぞもっと来い!もっと僕の雪のように白いお尻を叩くんだ―!」
「ひいぃ、大好きなシルベルト様のお尻を叩くなんて、カノンには耐えられませんっ」
「うるさい!お前の力加減が絶妙過ぎてポーションを使うほど僕にダメージが入らないぞ!ぶひぃぃ!さあ、もっと!僕にご褒美を与えろおおおおっ」
―――パシィイッ!…パシィイッ!
粗悪ポーションを検証するためだ。これは仕方のないこと、僕自身が検証しないと意味がない。あくまで検証するためであってそれ以上でもそれ以下でもない。
僕は追放されたとはいえ、Sランクパーティーの一員だった。さすがに猫耳メイドの鞭では僕をどうこうできるはずもなく、僕が気絶するまでこの遊戯は続いたのであった――。




