天才との差を埋めたい
世の中は「天才」と「それ以外」で構成されている。
努力の天才と称される人間でも天才まで上り詰めることのできる努力ができることが「天才」と呼ばれる所以なのだろう。
それでも…………。
「諦めることはしたくないんだ」
そんなことを言ってから幾星霜、僕はくすぶっていた。
「ちわ~調子どうよ?」
「別に、普通」
「いつも通りで良かったですよっと」
そういって、僕のもとに来た男は荷物を下ろす。その荷物をふっと見た後にすぐに僕は作業を再開する。彼はその様子をいつも通りだと察したようで、
「お代は」
「いつも通りで」
といつものやり取りなので食い気味に僕が答えると、
「了解」
と言い、帰ろうとした。だが帰り際に彼は、
「頑張れよ」
と言い残した。その言葉に僕は「ありがとう」の一言も返すこともできなかったが、その気持ちを受け取ることでより一層頑張れる気がした。
彼には詳しい事は話してはいない。だが彼はただただ頑張ってほしいという気持ちだけで僕の活動を応援してくれている。そんな存在がいたら、頑張らないわけにはいかないのだ。なんてことを考えていると手が止まってしまっていた自分を諫めつつ、作業を再開した。