地縛霊を救うために転生を繰り返す女の子の話
「待ってっ」
学校の廊下に女子生徒の声が響く。
「あなたは行ってしまうの………?」
「ええ、あくまで学校の地縛霊にすぎませんので」
「…………学校からは」
「何度も言うように出られませんよ」
地縛霊と呼ばれた男は女子生徒の声を遮るように淡々と話した。しかし、その声は少し震えているような、自分がこんなことしか言えないことを悔やんでいるような、そんなことを想わせるような声色で話している。
「あなたがいくら願おうとも」
「それでもっ…………」
「…………無理ですね」
そう言った後で地縛霊は女子生徒を抱きしめようとした。いや、正確に言えば抱きしめるふりをした。なぜなのかはその様子を見ればはっきりと分かった。
“抱きしめているはずの腕は彼女の身体をすり抜けているから”
当たり前と言えば当たり前だが、この二人の関係性はそんな「常識」というモノサシでは測れないような関係だったのだろう。二人はその抱き合った“ふり”をするしかなかったからなのか、別れることの悲しさからなのか、はたまたその両方なのか。二人は泣きあっていた。わんわんとなく女子生徒とは対照的に、地縛霊は静かに涙を見せないように平静を装っているが、装いきれずに涙を流していた。
それを見て驚きからなのか、女子生徒は彼に対し微笑んだ。そして、落ち着いたからなのか抱き合うことをやめた。
「それじゃ、また」
「またはないんじゃないですか」
笑いながら地縛霊は話す。
「そうだね」
また、彼女は悲しそうな顔をしそうになったが、その顔を満面の笑みへと変え、その顔を彼に対して向けた。




