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終わりから始まる英雄譚
こういう話から物語を始めてみたかった、という動機から進めてみました。
戦いは決した。
その戦いに介入していない人間にはわかりようのない事実。
その二者にしか理解できない決着。
どれほど熾烈な争いをしたかは理解できない。
その二者にしか理解できない衝撃。
それを過ぎてこそ、今
戦いは決した。
「構わんのか」
「構わんさ」
「この感覚は俺のみ味わった感覚として誇りにしよう」
そんなことを話したかもしれない。話していなくともそう感じた。それだけで私はよかったのだろう。
一方が倒れる。
もう一方はその様子を確認した後、振り返り歩き出した。
一度も振り返ることなく。ただひたすらに歩いて行った。
両者の距離はどんどん離れていく。
この様子を私はただ見ることしかできなかった。
二人に近づくことも、声をかけることもできなかった。
この空間はこの二人しかいてはいけない、いてはならない。そう感じ取った。
今一度私は感じる。 “二人の戦いは完全に決したのだと”。