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第58話 学園での話題



 その日の夜、麗佳詩羽は間違いなく日本で一番有名な女子高生になっていたと思う。



 SNS、ネットニュース、テレビ、ラジオ等など、あらゆるメディアで彼女のスキャンダルが取り上げられた。次の日には新聞などの紙媒体でも取り上げられるだろう。



 無論、皆の反応はそれはもう酷いものだった。


 皆が口々に彼女を罵倒していた。フォローする奴がいなかったと言えば嘘になるが、そんなもの批判の波ですぐに流されていった。


 やがて批判されるのが当たり前、非難されても仕方がない。そんな流れが出来ていく。



 麗佳詩羽は公式サイトで騒動に対する謝罪を行ったものの、そんなものは新たな炎上の火種にしかならなかった。


 そして、休みが明けた月曜日。学校に行くと、どこから嗅ぎつけたのか記者達が何人も居て、麗佳のファンらしき者も押しかけていた。騒ぎにならないよう警察官も動員されていて、今回の炎上がどれだけの規模だったのか、それを思い知らされていた。


 麗佳はその日学校を休んだ。その判断は正解だっただろう。彼女が学校に来れば騒ぎはより大きくなっていた事だろう。学校に押しかけた変な連中が持っている横断幕には『ビッチが! 使った俺の金を返せ』と書かれていた。さすがにそいつは即座に警察官に連れて行かれたけど。



 無論、生徒の間でも彼女の話題で持ち切りだった。そりゃあそうだろう。芸能活動をしている人気の同級生と言うだけでも注目を集めるのに、そんな奴に女子高生らしからぬスキャンダルが浮上したのだ。そんなの話題にしない方が不可能だ。



 麗佳からは『明日は学校に来るわ。必ずね』とだけ連絡を受け取っていた。騒動に対する対応を事務所としているそうだから大変には違いないが、目的がある以上は彼女の言葉を信用しても良いだろう。


 ここまでが麗佳による天城麗に対しての対策。


 学内に限定すれば最強であろう天城のフォロワーに追い付く、あるいはそれ以上の炎上規模。


 皮肉にも俺と協力していた麗佳は、俺の戦法を用いて自らの力を極限まで高めた。


 現在の地位を犠牲に、自らの注目度を一時的にでも上昇させる。


 このまま行けばきっと麗佳は、依然として学園での知名度に限定すれば最強格のフォロワーを持つ天城と共に今までとは比にならないくらいの戦いを繰り広げる事だろう。


 俺は――――まあ、このまま行けば彼女達の足元にも及ばないだろう。


 学園の廊下を歩いていれば聞こえてくるのは麗佳か、あるいは天城についての噂話。


「麗佳って美人で清楚系だと思ってたのに……人は見かけによらないなぁ」「早く球技大会始まんないかなー、生徒会長のお陰でくっそ上がるし、マジで」「麗佳さんって今日休んでるって話だけど、球技大会は来るの?」「俺だったら来るけど、今来たら凄い勢いで麗佳に向かってボール投げる奴いそう(笑)」「えー、良いじゃん。ちょっとビッチなくらい。美人だし。まぁ、見損なったとは思ったけど」「今麗様と麗佳さんが球技大会で勝負したらギャラリー凄そうじゃない?」「そりゃ凄そう。私、どっち応援しよっかなー」


 なんて声があちこちから聞こえてくる。フォロワーについては両者頭打ちになっている事だろう。


 ただ……麗佳と天城でその話題の質は正反対だ。


 麗佳についての噂話は基本的に彼女への批判や人格否定、失望などと言った……とどのつまりネットでの騒がれ方とほぼ同じだった。


 そうじゃない、そうじゃないんだ、麗佳には事情があって――――なんて叫びたい気持ちでいっぱいだったが、そんな事を言ったところで妄言を吐く異端者扱いされて終わりだ。そもそも俺自身が異端者だし、嫌われ者。耳を貸す奴など一人もいないだろう。


 結局のところ……怒りを押し殺すより他にできる事はなかった。


 だが、俺は――――このままでは終われない。


 仮に麗佳と協力して天城を倒す事が出来たとしても、麗佳とは最終的には戦う事になってしまう。そうなれば現状、俺は間違いなく負ける。


 そもそも、このままでは麗佳が……。彼女が救われないではないか。


 ちょっと前まで皆から愛された人気者のあいつが、今や異端者扱いだ。


 そんな彼女の姿、あまり直視してはいられない。



 何か……何かできる事を探すしかない。俺が勝つために、そして麗佳を助けるために。



 そう思いつつ、俺は麗佳と天城による噂話の中を掻き分けていった。



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