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第55話 ホテル街

 その後、俺達は麗佳の提案でボウリング場に行き、どちらがよりスコアが上かで勝負。負けた方が近くにあったプリクラ機で恥ずかしいコスプレ写真を撮る羽目になった。




「……なんであそこで三連続ガーターになるかなぁ」


 と俺は自分の実力と不運を呪いながら、プリクラという形に残った黒歴史を確認するのだった。






 ……いや、マジであんなコスプレをするのは二度とゴメンだ。今までとは違うタイプの黒歴史が積み重なった事に、頭を悩ませる。




「それで。円城瓦君は、どこか行きたいところはないの?」


 麗佳のその言葉に俺は頭を悩ませる。よく考えれば今までのプランは全て麗佳の発案によるものだ。一度くらい俺からも提案しなければ、それこそバツが悪い。






「あー……それじゃあ、少しだけカラオケに行くってのはどうだ?」




 休業中とは言え、麗佳は人気の歌手だ。一方、俺はこいつと知り合うまで麗佳詩羽という歌手の実力を殆ど知らなかった。一度くらいこいつがどんな様子で歌うのか、俺は少しだけ興味を持っていた。






 それにカラオケなんてこんな機会でないと一生行く機会ないだろうし……。あそこマジで友達いないと行く機会無さそうだしなぁ。アニソン思い切り歌ってみたいって願望がなくも無いけれど。






 そんな風に気軽な考えで提案してみたのだが、麗佳はその提案に首を振る。






「あー……、そうね。ごめんなさい、ちょっと気分じゃないわ」




「そうか」


 俺は麗佳の答えを聞いて即座に引き下がる。




 何故ならそれを提案した時の麗佳の表情が曇ったから。






 ……歌手として休業中の中、歌うのは気が引けるとかだろうか。






「……、それよりちょっと行きたいところが出来ちゃったわ。ちょっと行かない?」




「ああ、構わないけれど。次はどこに行くんだ?」




「…………秘密よ。ちょっとだけ、付き合って。良いかしら」



 その時の麗佳の表情は言葉で簡単には言い表せない、何とも複雑な表情をしていた。






 どこか思いつめたかのような表情。それに不安と、そして祈りを込めているかのような。




 どういう訳か俺にはよく分からなかった。しかし、麗佳の提案を断るのはどこか気が引けた。






 だから彼女の提案に従った。






 数分後、この判断が間違っていた事を俺は悟るのだった。








 ※※※






「お、おい……一体どこに行くつもりなんだ?」




 俺は先を行く麗佳の背中に問いかける。






「ちょっとね」






「ちょっとって……」




 先を進む麗佳の声はどこか心細そうだった。






 街中を歩いていく内に風景がだんだんと変わっていく。




 多数のビルが周囲を囲むと共に、雰囲気も変化していった。






 きっと俺はこんな場所に来る事なんて無いと思っていた。






 俺みたいな糞陰キャの童貞にして、高校生には無縁とも言って良い場所。






 表にある看板には『休憩二時間で四千円』など、意味深な事が書かれてある。






 さすがに無縁とは言え健全な高校生男子であればここが何処かは察しがつく。






 いわゆるラブホ街を麗佳は進んでいった。






「麗佳。もう一度聞くが……」




「近道なのよ」


 取り付く島もなく、麗佳はそんな事を言った。






 そんな風に先を行く麗佳を放っておく訳にもいかず、俺は彼女の背中だけを追う。






 そんな中、麗佳は不意に立ち止まった。






 そして、




「……ごめんなさい」






 麗佳は一歩後ろに下がって俺と並んだかと思えば、俺の腕にしがみついてきた。






「――――――――は?」


 あまりに突然の事に、俺は思考が追いつかなくなった。






 なんだ? 麗佳は何でこんな事をしている?




 しかも、こんなところで――――






 そんな風に思考を深めていく中、俺はようやく『その事』に思い至った。




 さらに俺の考えが正解であった事を示す音が耳に届いた。




「ッ!! まさか、お前!?」




「……もう良いわ。悪い、とは思っているわよ」




 麗佳はそれだけ言うと、抱きついていた俺の腕から身体を離した。






「…………、どうせ結果は『同じ』だし、ついでに寄っていく?」


 麗佳は近くにあった建物、要するにラブホテルを指差した。




「……、説明はして貰うからな」


 そして、俺と麗佳は件の建物へと入った。






 先程、麗佳が俺に抱きついた時、不意に聞き取った音とは、遠くに聞こえるカメラのシャッター音だった。

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