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第54話 いつもの調子で

「……いや、すごかったわね」


 麗佳は映画館を出た瞬間、そんな事を呟いた。






「まさかホラー映画なのに、幽霊とアクションシーンを繰り広げる様を見る事になるとは思わなかったな」


 ぶっちゃけクソ映画としてはかなり当たりな部類だった。




 あまりに設定が破綻していて、ツッコミどころ満載にも関わらず、最後のクライマックスでは笑い有り涙有りの展開になっていたのは凄かった。




 正直、映画としてはどうかと思うがエンタメとしてはかなり良い作りをしていた。映画がレンタル出来るようになったら、すぐにでも借りてきて乃雪と一緒に朝まで語り尽くしたい。




 そんな風に興奮を隠しきれなかった俺は、麗佳に対してツッコミどころを交えながら映画について熱く語ってしまう。




 そして、思い出す――――しまった。こんな風に喋りまくってしまう男はデートではNGとかなんとか。もしかして思い切り地雷を踏み抜いてしまったのだろうか。




 すると、俺の話を聞いていた麗佳は一頻り笑った後に一言、




「円城瓦君。さっきまでちょっと様子がおかしかったけれど、ようやくいつもの調子に戻ったわね」


 と口にした。






 いつもの調子、それは良い意味で言っているのだろうか。それとも……。






 などと考えている内に、麗佳は「少しお腹が空いたから、お昼食べましょうか」と言った。






「それじゃあ……」


 俺はその辺りの店を見渡した。




 参考ページによると、静かで雰囲気の良い大人なカフェなどが良いとの事だった。




 いや、そんな事言われても、俺はお洒落なカフェなんて一つも知らない。






 こうなったら食べ○グ辺りで検索して――――






 などと考えている中、麗佳は「あれなんて良いんじゃない?」と指を指す。






 彼女の指し示した方向には、雰囲気の良い大人なカフェとはとても言えない、部活帰りの男子高校生が行きそうなステーキハウスだった。






「え、あれで良いのか?」




「ええ。なんだかお腹が空いちゃったからガッツリ食べたいのよ」




「なんか静かでお洒落なカフェとかじゃなくても?」






「えぇ……、円城瓦君、お腹空いてないの?」




「いや、空いているが」




「じゃあ肉嫌い?」




「んな訳ないだろう」




「じゃあ、良いでしょ。行きましょう」


 麗佳はご機嫌な様子でステーキハウスへと足を運ばせる。




 その後、麗佳はお洒落とは程遠い豪快なステーキを美味しそうに口へと頬張っていた。




 そこで俺はようやく悟る。






 ……これ参考ページ役に立たないな、と。






 万人に当てはまるデートプランとやらが麗佳に当てはまる訳ではないのだ。




 と言うより麗佳という人間の事を俺は見ていなかった。




 麗佳詩羽と言う人間は元気で少し強引なところもある一方で、俺みたいな奴にも分け隔てなく優しくできるくらい変な奴だった。






 だからこそ、俺とあいつは一緒にここまで戦って来れたのだった。






 それに、そもそものところに気づいた。俺のような社会不適合者がモテ男子とやらになれる訳がない。そんな事、すぐにでも気づきそうなものだ。




 そこに気づいた俺は参考ページのブックマークを外し、麗佳にこう言った。






「つうかお前、こんなところで二人きりで会っていてたまたま学校の奴に目撃されたら、お前のフォロワーが少なくなる可能性があるだろうが」




 なんだよ、デートって。そもそも俺はバトルロイヤルでの決戦を控えている身だ。




 目的度外視で一体何をやっているんだ。




 そんな俺に対して麗佳は微笑む。




 


「円城瓦君がいつそれを言うのかと思っていたわ」




 でも大丈夫、そんな対策も含めた今日だからと麗佳は言う。






 いや、本当かよ。普通に映画見て、ステーキハウスで肉を貪り食っているだけだぞ、マジで。






「まあ、良いから。今日はもう少し楽しみましょうよ。対策は任せてもらって構わないわ」




「…………それで良いのか」




「良いのよ」




 そう言って麗佳は最後の肉切れを口に運んだ。






 そんな麗佳の様子に俺は観念し、後で思い切り対策を立ててやろうと誓うのだった。

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